ミートボールの石井食品で「大人の社会科見学」。元は電気ドリルの会社で現在はIT化に注力していた

ミートボールの石井食品で「大人の社会科見学」。元は電気ドリルの会社で現在はIT化に注力していた

千葉県八千代市の石井食品八千代工場

◆大人の社会科見学をやってみよう!

 私事ではあるが、筆者は「大人の社会科見学」を10年以上続けている。年に数回実施しているのだが、きっかけはビール工場の見学だった。行きつけの居酒屋でマスターが「工場のビールは、作り立てで美味い」と話したのだ。お酒好きの人間としては気になる。そこで、友人を誘って見学に行くことにした。

 目的地はアサヒビールの神奈川工場。神奈川県南足柄市怒田にある。都心から非常に離れた場所である。そこで飲んだビールが、とてもクリーミーで美味しかった。そのときの友人と関東中のビール工場を制覇しようと決めた。そうして私は大人の社会科見学を始めた。

 その後、ビール工場に限らず、様々な場所に行った。警視庁や防衛省といった官公庁。首都圏外郭放水路や日本銀行、造幣局といった施設。全日空の機体工場や、スバルの工場なども訪れた。

 今回は、そうした訪問の中から、最近のものについて記事を書こうと思う。

◆創業時は電気ドリルを作っていたミートボールの石井食品

 2018年2月7日に、石井食品株式会社の八千代工場に友人と行った。千葉県の八千代市にあり、筆者が住む横浜からだと片道2時間弱の電車移動である。徒歩も含めると片道2時間、往復4時間の遠征だ。

 石井食品は「おべんとクン ミートボール」で有名な会社だ。全国区でテレビCMを打っていたので、CMのフレーズを覚えている人もいるだろう。食品会社であるのだが、1945年の創業時は電気ドリルの会社だった。翌年から佃煮を作り始めて、そこから食品会社として成長を始める。

 創業17年の1962年12月に東京証券取引所第二部に上場。先述のチルドタイプのミートボールの販売を開始したのが1974年。最初は中華風の味付けで人気が出なかった。しかし、子供向けの弁当需要があることに気付き、1979年にサイズを小さくして甘い味付けのトマト味にすることでヒット商品になる。工場の見学は、そのミートボールの生産ラインを見るものだった。

◆いざ、工場見学へ!

 工場見学には、ある種のフォーマットがある。最初に映像で会社や主力商品の説明をおこない、その後工場見学に臨む。食品会社なら最後に試食が入る。試食があるので食品会社の工場見学の倍率は高く、なかなか予約が取れない。

 今回は、石井食品の成り立ちと、ミートボールの説明があったあとに工場見学になった。見学に行くまで、石井食品について知識はほとんどなかった。しかし紹介を見ることで感心した。

 石井食品のミートボールは製造過程で食品添加物を使っていない。こうした取り組みは1997年から始まった。そして、卵や乳も使っていない。同社では食物アレルギー対策に注力しており、こちらの取り組みは2006年からのスタートだそうだ。

 アレルギーを持っている子供がいる家庭にはありがたいだろう。また、非常食も作っているので、そうしたものを探している人にも有用だと思う。

◆工場見学をしてわかった「トレーサビリティ」

 工場見学にも驚きが隠されていた。製造工程自体は、ある程度予想したものだった。しかし、トレーサビリティの話を聞いて大いに興味を持った。石井食品の製品のパッケージには、品質保証番号が印字してある。この番号と賞味期限をWebサイトで入力すると、商品の原材料の情報が表示されるというのだ。

 実際に帰宅後に検索してみた。商品の原材料ごとに「原料、原産地、検査内容、加工地、加工日」が表示された。また、アレルギー対象原料の一覧も表示された。こうした情報を公開していることに驚いた。

◆食品製造の現場で進むIT化の取り組み

 どうやらITに強いらしい。そうした印象は、工場見学のアンケートがQRコードになっていることからも分かった。スマートフォンでスキャンすると、Googleフォームのページに飛ばされる。このようにしておけば、入力から集計まで手間を掛けずに行うことができる。

 また、試食の際に机に敷く紙のシートには、Twitterやインスタグラム向けと思われるハッシュタグが印字されていた。これは、相当ITに慣れた人がいるなと気付いた。

 見学を案内してくれた女性に「ITの部署があるのですか?」と尋ねると「はい」と返答が。帰宅後調べると、ITに力を入れていることが分かった。

 ホームページ開設が1999年、トレーサビリティを始めたのが2000年、Webで情報開示を開始したのが2001年。かなり早い時期に取り組んでいる。

 採用に関するページを開くと、2枚目の画像では社員が全員ノートパソコンに向かっている(石井食品株式会社採用情報)。また、IT化についてのページもあった(IT化)。以下、少し引用する。

>IT部門として、今後はクラウドをベースに社内のシステムを変えていきたいと考えています。ITチームとして現在取り組んでいるのは、会計システムをクラウドベースにしていくプロジェクトを現場部門と一緒に始めています。

 食品工場ということで、単純に生産ラインを見て、試食して終わりだと思っていたが、意外なところで会社のことを深く知ることができた。こうした出会いがあるので、大人の社会科見学は面白い。

◆「分野が違う複数の人間」で行くといい

 社会科見学に行く際は、分野が違う複数の人間で行った方がよい。それぞれの視点で発見があるからだ。そうした発見を共有しつつ、案内の人に質問していくのが楽しい。

 とはいえ社会科見学先は、平日の昼間しか募集していないことが多い。平日の昼間に、複数の社会人が集まるのは容易ではない。しかし2人程度なら何とかなるのではないか。そのため私は、友人と2人で見学に行くことが多い。

 このように筆者は、大人の社会科見学を楽しんでいる。子供の社会科見学とは違い、大人だからこその視点で楽しめるのが、大人の社会科見学だ。そして、行った時の感想や驚きを原稿にまとめている。

 普段書いている「いってみた! 大人の社会科見学」は、非常にライトなノリで、本稿の2倍ぐらいの文章を書いている。今回は、メディアに合わせて、少し違うタッチでまとめてみた。今後も訪問した場所を紹介していければと思う。

 なお、石井食品工業の工場見学については、こちらを参照してほしい。

●石井食品工業

●八千代工場見学について

<文/柳井政和 Image by MIH83 on Pixabay>

やない まさかず。クロノス・クラウン合同会社の代表社員。ゲームやアプリの開発、プログラミング系技術書や記事、マンガの執筆をおこなう。2001年オンラインソフト大賞に入賞した『めもりーくりーなー』は、累計500万ダウンロード以上。2016年、第23回松本清張賞応募作『バックドア』が最終候補となり、改題した『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』にて文藝春秋から小説家デビュー。近著は新潮社『レトロゲームファクトリー』。ちなみに、今回のような見学記を、現在までに4冊ほど電子書籍としてまとめている(いってみた! 大人の社会科見学)

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