「お前が悪い」。モラ夫の支配・従属の強要で妻は「夫源病」に追い込まれる<モラ夫バスターな日々4>

「お前が悪い」。モラ夫の支配・従属の強要で妻は「夫源病」に追い込まれる<モラ夫バスターな日々4>

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 モラハラとは何か。モラ夫とはどんな夫だろうか。以下、数回にわけて説明する。

 モラハラがなぜ生じるかは、後日、再度論じるが、ここでは弁護士である私、大貫憲介が実務上の経験から得た結論を述べる。

◆日本人男性に埋め込まれた社会的文化的規範

 日本には、夫を家長とする社会的文化的規範(群)が存在している。(文化的規範として生き残った)明治民法下のイエ制度、男尊女卑、性別役割分担、良妻賢母主義などがその中核である。これらの規範は、日本の男性の心理に深く内在化している。

 多くの日本男性は、意識的/無意識的に、これらの規範により行動している。そして、家庭にあっては、彼らは、それが社会的に許されていると考え、支配者(家長)として振る舞うのである。それらの多くは、率直に言って、横暴な振る舞いであり、妻に対するモラハラと評価するべきものである。

 男性から見ると、社会的に許容されているはずであり、「そんなの普通だろ」「当たり前だろ」「最近の女はわがまま」「我慢を知らない」という反応が多くもたらされ、モラ夫たちが反省することは稀である。

 また、社会的文化的規範を背景にしているため、モラ夫たちの言動は驚くほど類似しており、どこかにモラ夫の学校があると妄想させるほどである。否、モラ夫の学校は存在する。それは、日本社会そのものである。

◆モラ夫の定義と分類

 以上の理解を前提に、私は、「モラ夫」を「男尊女卑を背景として、妻に対する支配を確立しようとする夫」と定義している。そして、モラ夫による「モラハラ」とは、「妻に対する支配確立、維持、拡大のためにする、モラ夫の一連の言動、ないし、一連の言動の一部」と定義する。

 モラハラには、「ハードモラ」と「ソフトモラ」がある。

 ハードモラとは、暴言の内容や態様が酷く、被害妻や周囲が容易にモラハラと認識できる態様のモラハラである。怒鳴り散らす、日常的にけなすなどが典型例である。

 ソフトモラとは、表面的な言葉遣い、内容や態様自体は、ハラスメントといえるかどうか微妙であるものの、支配確立の意図を伴うことにより、毒性を帯びるモラハラである。

 内容、態様が表面的には穏やかなだけに、被害妻や周囲には、モラハラとして認識されにくい。しかし、妻に害を及ぼす「毒性」においては、ハードモラを上回ることすらある。

 ソフトモラの例としては、「うちで働いて稼いでいるのは誰かな?」「なぜ、そこの隅に埃があるのかな?」などと質問して、妻を追い詰める、質問モラなどがある。

◆支配従属の強調/確立

 モラハラは、モラ夫が家長/支配者の地位に就いたと確信したときに始まる。その確信は、結婚、第1子・第2子出産、マイホーム購入など「引き返せない」節目や夫の昇進など地位の向上時に生じる。私はこれをモラスイッチと呼んでいる。

 さて、モラハラは、モラ夫=家長/支配者である根拠の強調から始まることが多い。「俺が稼いでる」「誰のおかげで食えるんだ」「俺は苦労している」「俺がこの家の主(あるじ)だ」「俺に逆らうのか」などがこれに該当する。

 妻に対して、妻=能力の劣る従属者であることの確認的な表現が繰り返されることも多い。「お前はバカ(アホ)だ」「何もわかっていない」「俺がいないと生きていけない」「俺が指導してやる」「俺と同じだけ稼いでから(意見を)言え」などがこれに該当する。

◆「味噌汁がぬるい」と怒った次の日に「こんなに熱い味噌汁が飲めるか」

 モラ夫は、モラハラにより、妻の思考能力を奪っていく。

 よくある手法は、怒る、怒鳴るなどである。しかも、突然怒る、すなわち、キレるのが効果的である。成人男性が、突然切れて怒り出せば、間違いなく迫力があり、気丈な女性であっても、怖いと思うはずだ。そして、怒ることの是非をおいて、妻は、夫を怒らせないように気遣うようになる。

 同じ理由で怒るときは、「何度言ったらわかるんだ」と責めて妻に罪悪感を植え付ける。

 他方、怒る理由がその都度矛盾するのも効果的だ。例えば、ある日、「味噌汁がぬるい」と怒り、別の日は「こんなに熱い味噌汁が飲めるか」と矛盾した理由で怒る。

 突然キレられ、都度怒る理由が違うと、妻は混乱し、いつ怒られるか怯えるようになる。怖さと責め立てられて生じた自責の念から、モラ夫のご機嫌をうかがい、怒られないように先回りして、モラ夫の要求に応えようとする。

 これが繰り返されると、モラ夫の要求・思考が妻の心理に内在化し、妻の行動、思考をコントロールするようになる。私は、これを「脳内モラ夫」と呼んでいる。脳内モラ夫が確立すると、例えば、スーパーで買い物しようとすると、「それ本当に必要か」「そんなに高いものを買うのか」という「夫の声」が聞こえたりするという。

 こうして、妻は、「夫の怒り」を心底怖れ、「夫が怒るかどうか」を基準として行動するようになり、支配従属関係が確立する。

 多くのモラ夫は、怒り過ぎであることを認識しているのだろう、自ら理不尽に怒っておきながら、「怒らすお前が悪い」と責任転嫁することも忘れない。

◆深夜に始まる、長時間の説教

 次によくあるモラハラは、長時間の説教である。夜遅くから始まることが多い。週末の、長時間の説教というパターンもある。モラ夫は、これらをハラスメントではなく、妻に対する指導であると主張する。「お前は、バカで分かっていない」「お前は苦労していない」。そして、「俺はお前を指導している」「導いている」などとモラハラを正当化する。

 説教は、上位者が下位者に対して行うものであり、それ自体、支配従属関係の確認である。同時に、妻から抵抗力を奪って、支配従属関係を強化することにもつながっていく。

 こうして、妻は、我慢を強いられ、思考力とともに幸福感も奪われていく。怒られ、説教された際に泣くと、多くのモラ夫は、「泣くな、俺がイジメたみたいじゃないか」と泣くことも禁止するので、妻は、感情の起伏がなくなり、平たん、無表情になっていく。

 夫が原因の心身症、いわゆる夫源病になる妻も少なくない。夫源病は、様々な疾病を引き起していく。やがて妻から輝きが失われ、所帯やつれしていく。そして、それがさらなるモラハラを誘発するのである。

漫画/榎本まみ

【大貫憲介】

弁護士、東京第二弁護士会所属。92年、さつき法律事務所を設立。離婚、相続、ハーグ条約、入管/ビザ、外国人案件等などを主に扱う。著書に『入管実務マニュアル』(現代人文社)、『国際結婚マニュアルQ&A』(海風書房)、『アフガニスタンから来たモハメッド君のおはなし〜モハメッド君を助けよう〜』(つげ書房)。ツイッター(@SatsukiLaw)にてモラ夫の実態を公開中

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