流ちょう過ぎる話術はなぜ心に残らないのか?

流ちょう過ぎる話術はなぜ心に残らないのか?

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 コミュニケーションスキルを高める演習の参加者に、演習でどのようになりたいかを聞くと、相当程度の人が「流暢に話せるようになりたい」という意味のことを言う。スラスラとよどみなく、話しができたり、プレゼンテーションができたりするようになりたいというわけだ。

◆流ちょうに話すと聞き手の関心度は低下する

 しかし、実は流ちょうに話せば話すほど、スラスラと話せば話すほど、聞き手は集中度、関心度を低下させてしまう。このように申し上げると、「逆ではないか」「話に詰まったり、言葉が出なかったりするから、聞いてくれなくなるのではないか」という反応が返ってくる。

 実際に話し手と聞き手の状況を観察してみると、話し手が流ちょうにスラスラと話すということは、間(ま)をおかずに話しているという状態だ。間をおかないので、聞き手の理解速度に差があったとしても、多かれ少なかれ、聞き手はそのうち話についていけなくなる。

 話についていけなくなるということは、理解ができなくなる。それが続くと、諦めの感覚が生じて、関心度が低下してしまうのだ。

◆大切なのは聞き手が「反芻」する時間

 逆に、話し手が話に詰まったり、言葉が出なかったりするという状態は、話していない時間帯が生じて、そこに間ができる。間ができている間に、聞き手は、「これまで、こういう話だったな」「次は何を話そうとしているのだろう」というように、話し手の内容を反芻できる時間を持つことができる。

 話し手の内容を理解したり、次の話を想起したりしている間に、自然と話し手の話に関心を高めたり、集中度が高まるのだ。

 もちろん、すべての聞き手が、間ができるたびに、関心度、集中度を高めているわけではない。しかし、演習や企業でのサポートでの実例をふまえると、間ができたときには、関心度、集中度を低下させる人よりも、逆に高める人が圧倒的に多い。

 

 それは、流ちょうなよどみない話と、詰まったり言葉が出なくなったりすることのある話とでは、流ちょうな話のほうが眠くなる確率が高いということからも言える。

◆間をつくって、聞き手の理解を促す

 前回の記事では、句点で話を止めて間をつくるスキルを紹介した。このスキル演習をしていて、よくある質問が間をつくることが不安だというものだ。間をつくっている間に、聞き手が聞かなくなってしまうのではないかということだ。

 たしかに、その間が10秒も、20秒も続くようだったら、話し手はどうしたのか、何かアクシデントがあったのかとざわついて、話の内容についての関心度、集中度を低下させてしまうだろう。

 ひと呼吸、ゆっくり目に間を置くということは、関心度、集中度を低下させることよりも、その間に聞き手に「こういう話をしているのだな」「話し手が言いたいことは、こういうことだな」「なるほど、そういう意味か」というように、理解を促す効果が高いのだ。

 つまり、流ちょうに話すことは、聞き手に話の内容を反芻する時間的な余裕を与えないから、ついていけない聞き手を増やしてしまうのだ。結局、話が上滑りしてしまい、話し手が話したという事実と、聞き手がその会場にいたという事実が残るだけになる。

◆「コミュニケーションのアリバイ」を回避せよ

 私はこの状態を、「コミュニケーションのアリバイづくり」と称している。「話をしたというアリバイをつくりました。聞き手が関心度、集中度を示したかは知りません!」「聞き手として、その場にいたことは間違いありません!」という意味しかない。

 話し手には、単に話したというアリバイをつくることではなく、聞き手が関心度、集中度を維持するような話をする役目がある。聞き手には、単にその場にいたというアリバイをつくることではなく、その内容を理解して役立てるという目的があるはずだ。

 聞き手が関心度、集中度を高めてくれないのは、聞き手が悪いからだと決めつける人が少なくないが、実は、話し手に問題があることが多い。そして、句点で間をつくるという、たったそれだけのことで、かなりの程度、聞き手の関心度、集中度を高めることができるのだ。 

 質問:話を続けていないと不安だ

 句点で話を止めて、間をつくるとよいということですが、話を停止することが不安です。話を停止しているあいだに、相手は集中度や関心度を低下させてしまうのではないでしょうか?

 回答:間をつくることで理解を高める

 実は、話し続ければ続けるほど、時間の経過とともに、相手の集中度や関心度は低下する一方になるものです。句点で間をつくって、話を停止することで、その間によって「これまでの話の内容はこういうことだったな」「話し手はこういうことを言いたいのだな」というように考える時間を相手に与えることができるのです。

 つまり、句点で間をつくることは、相手の理解を促し、そのたびに相手の集中度や関心度を高めることにも役立つのです。

【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第128回】

【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)、『クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい、2017年8月)がある

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