ジョブズ型はもう古い?  相手の心理を誘導し、自分で決断させる説得術

ジョブズ型はもう古い?  相手の心理を誘導し、自分で決断させる説得術

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 クライアントに対する商品の提案や、ソリューションの提案における説得には2種類ある。「外発的説得」と「内発的説得」だ。

◆ジョブズ型のプレゼンよりも効果的

 1.外発的説得

 2.内発的説得

 上記の2つは一般的な用語ではないが、外発的説得とは、相手から一方的にプレゼンや説得を聞かされる形式の説得方法だ。

 交渉相手を目の前にして、魅力的なフレーズやグラフを提示しながら練習を重ねたプレゼンを完璧にこなす。交渉される側は、舞台や映画を観ているような感覚だ。一方的に情報が伝えられ、その商品やソリューションに魅力を感じて、欲しいと思う。

 このようなプレゼンには、淡々と情報を伝えるだけのプレゼンテーションに始まり、スティーブ・ジョブズのように、舞台上で一流の一人芝居を見ているように購買者を魅了するプレゼンなどがある。

 スティーブ・ジョブズのプレゼンが注目を集めてから、淡々と正確な情報を伝えるだけのプレゼンよりも、言葉に質量と熱量のこもったプレゼンをする人が増えた。筆者が出会った、ほとんどの人の営業スタイルがこの「外発的説得」タイプだ。

 しかし、筆者が出会う優秀な営業マンやプレゼンターは、外発的説得を行う人は少なく、むしろ「内発的説得」を行う人が多い。外発的説得では交渉する側が答えを提示する。一方で、内発的説得は交渉される側に答えを言わせる説得術だ。

 これは、『コミットメントと一貫性』という心理作用を使っている。コミットメントと一貫性とは、自分が一度言ってしまったことに関して、その発言に責任を持ってしまい、発言に基づいた行動をしてしまうことだ。

◆相手の中に「気づき」を与えて決断させる

 たとえば、社内で意見が割れて決断に時間がかかっている問題があり、外部のコンサルタントを雇おうとしているクライアントがいるとしよう。外発的説得として、今すぐコンサル契約すべき理由をプレゼンするよりも、以下のように、相手にコンサル契約すべき理由を言ってもらうほうがよい。

 相手「このままコンサル契約してもいいか少し不安なんです」

 あなた「なるほど、少し不安なんですね。どういった点が不安なんですか?」

 ※バックトラッキングをしながら、内発的説得を始める

 相手「お願いしても、ちゃんと問題が解決するかわからないので……」

 あなた「なるほど。不安になられている点は理解しました。ちなみに、我々と契約しない場合、今の問題はどうなります?」

 相手「このまま、問題が解決できずにズルズル行って、期限を過ぎるか、中途半端な案を作ってしまうかもしれません。」

 あなた「その内容で、決定権を持っている人を説得できますか?」

 相手「いえ、できない可能性が高いです……」

 あなた「だとすると、経験がある我々と一緒に解決策を考えたほうが、効果的ではないですか?」

 相手「たしかに、そうかもしれません。」

 イメージを持ってもらうためにスムーズにいった例を出したが、このように、相手のなかに気づきを与えたり、不安を生み出すことで、説得の成功率を高める手法を内発的説得という。

◆誘い方ひとつで断られる確率も変化

 プロパガンダの天才と言われる、ヒトラーのナチス党に所属していた、パウル・ヨーゼフ・ゲッベルスの言葉に、こういうものがある。

『宣伝したい内容を直接キャッチフレーズ化して強調・連呼せず、心のなかで思っているであろう不満・疑問・欲望を遠まわしに刺激し暴発させる』

 内発的説得は相手に気づきを与えると同時に、その気づきが不満・疑問・欲望・不安であれば、なお説得の効果は高まる。

 プライベートの例で言うと、友達に「今日暇?」と言われて、「暇だよ」と返してしまうと、誘われたイベント内容がつまらなくても、一度暇だと言ってしまった以上、断りづらくなってしまうのと同じだ。先に「◯◯というイベントがあるんだけど、来ない?」と言われていれば、「俺は興味ないかな」と、断りやすいはずだ。

◆「意思に反して」使われるときは要注意

 この内発的説得は、ネットワークビジネスの勧誘や保険の営業で使われるのをよく聞く。もし、「自分の意思に反して」説得されそうならば、注意していただきたい。

 ロバート・チャルディーニ氏の著書『影響力の武器』にマーケティングや戦争時において、この法則がどのように使われていたか載っているので、興味がある方はそちらを参照していただきたい。私もセミナーのときには、必ず参加者にオススメする一冊だ。

 この内発的説得は、説得のシナリオや、相手の心理状態、相手の環境などを十分に考慮して組み立てる必要があるので準備に時間がかかるが、大事なプレゼンのときにはぜひ活用していただき、案件の受注につなげていただきたい。

【参考資料】

『影響力の武器』ロバート・B・チャルディーニ

『“説得”コミュニケーションの研究』

【山本マサヤ】

心理戦略コンサルタント。MENSA会員。心理学を使って「人・企業の可能性を広げる」ためのコンサルティングやセミナーを各所で開催。これまで数百人に対して仕事やプライベートで使える心理学のテクニックについてレクチャーしてきた。また、メンタリズムという心理学とマジックを融合した心理誘導や読心術のエンターテインメントショーも行う。クラウドワークスの「トップランナー100人」、Amebaが認定する芸能人・著名インフルエンサー100人に選出。●公式ホームページ ●Twitter:@3m_masaya ●Instagram:@masaya_mentalist

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