ギャンブル依存症対策の基本計画が明らかに。ほぼ対応済みのパチンコ業界だが唯一の難所は「店内ATM撤去」か

ギャンブル依存症対策の基本計画が明らかに。ほぼ対応済みのパチンコ業界だが唯一の難所は「店内ATM撤去」か

HAKU / PIXTA(ピクスタ)

◆パブリックコメント募集が始まったギャンブル依存症対策

 3月6日に開催された、第2回ギャンブル等依存症対策推進関係者会議において、「ギャンブル等依存症対策基本計画(案)」が示され、パブリックコメントの募集が始まっている。

 これは昨年10月5日に施行された「ギャンブル等依存症対策基本法」の指針にそって、より明確な基本計画を策定するもので、要は、基本法における骨組みをどう具体的な行動に落とし込んでいくのかという詳細な内容を示したものになる。

 特に注目されていたのが、パチンコ業界に対する「基本計画=具体的な対策」がどうなるのかという事であったが、果たしてその内容とはどのようなものであったのか。

◆パチンコ業界が実施すべき依存症対策

 今回の基本計画の公表により明らかになった、パチンコ業界の対策は以下の通りである。

(平成31年度中にすべきこと)

@広告宣伝に関する全国的な指針を策定、公表。

A年間を通じた依存問題に関する普及啓発の推進

B啓発週間に啓発資料を配布し、シンポジウム・講演会を開催

C自己申告・家族申告プログラムの周知を強化

D本人の同意のない家族申告による入店制限を導入

E18歳未満の入店時の身分証明書確認の原則化

F依存問題に取り組む民間団体等に対する支援を開始

G依存症専門医療機関等の情報を「安心パチンコ・パチスロリーフレット」に記載

H(平成31年度以降)営業所内に設置されているATM及びデビットカードシステムの撤去を推進

他、数点。

(平成33年度までにすべきこと)

@自己・家族申告プログラム、複数店舗への申告に関する負担軽減策を実施

A顔認証システムの活用に係るモデル事業等の取組を検討

B全ての遊技機を新基準に適合するものに入れ替える

CRSNの相談体制・機能を充実強化

※RSNとは、特定NPO法人リカバリー・ネットワークの略。パチンコ依存問題に特化した電話相談機関

D安心パチンコ・パチスロアドバイザーの活動の手引きの内容を充実させ、同制度の運用を改善

 ざっとこんな感じだ。業界関係者でなければ、ピンとこない文言もあるだろうが、依存問題対策としては、中々のボリュームである。そのすべての対策には期限も切られており、具体的な行動を伴う事が強く要求されている。

◆先手を打ち続けたパチンコ業界の努力

 しかしながら、今回示された基本計画の、そのほとんどの内容について、実はパチンコ業界では既に実施済みであるか、もしくは実施を想定した準備をとうの前に始めている。

 こう書けば、「な〜んだ、対策と言っても出来レースじゃん」と思う方もいるかも知れないが、筆者は、この対策群をパチンコ業界が既に実施または実施を予定していることには、敬意を表すべき点も多々あると思う。

 具体的に、平成31年度内に推進すべき事項は、現時点ですべて「クリア済み」であり、平成33年度までに実施すべき内容においても、現時点で、まったくの手付かずということも無い。

 社会的な逆風に晒され続けたパチンコ業界である。

 国会で、本格的にIR法案が議論され始めた頃から、その批判や攻撃の矛先は、世の中の人たちの一番身近にある「パチンコ」であった。その批判や攻撃に対し、パチンコ業界は真摯に向き合い、行政(主に警察庁)との二人三脚のもと、依存問題対策に対しては出来得る限りの先手を打ち続けた。

◆「踏み絵」を踏み続けたパチンコ業界

 業界内部からの反発も根強くあった。「そもそもパチンコはギャンブルではなく娯楽」という建前論を振りかざす業界関係者もいれば、民間産業の商行為に行政が強く介入してくることに不信感を強めた人たちもいた。

 しかし、パチンコ業界は、自らの取り巻く商環境が悪化していく中においても、身を削り、時代を生き抜くための踏み絵を踏み続けた。

 全国のほとんどのパチンコホールが加盟する、全日本遊技事業協同組合連合会(全日遊連)の阿部恭久理事長も記者会見を開き、パブコメで示された基本計画案にパチンコ業界に求められる項目が多岐に渡っていることについては、

「そうした問題以外は、実施済み、もしくは進行中の案件がほとんど。盛り込まれるであろうことは事前に対応してきたので、特に新たに取り組まなければならないものは、あまりないと思う」(遊技通信webより抜粋)

 とコメントしている。

 もしもパチンコ業界が、なんら依存問題対策を推進もせず、今回の基本計画を急遽実施せねばならぬ状況になったならば、その対策の多さと、そこに費やされる時間や資金等により一気に空中分解していただろう。

◆業界のアキレス腱はATMの撤去か

 しかし一点。

 基本計画の中に示されている「ホール内のATMの撤去」については、パチンコ業界側も歯切れが悪い。

 そもそも、ホール内のATMの設置は、ホール企業と設置企業の個社間の契約により設置されているものであり、その契約が合法であるならば、業界団体としても強制的な撤去を「決定」する訳にはいかない。

 全日遊連幹部も、ホール内に設置されているATMは、引き出し金額の上限が決められており一定の依存対策が施されていると同時に、ATMの集金機能により強盗犯罪等の防止の役割も果たしている事を強調、従業員のリスクを伴う「指導」は組合としても難しいと話している。

 全日遊連と同じく、パチンコ業界の主要団体でもある日本遊技関連事業協会(日遊協)でも「まずは行政側との話し合いが必要」であるとし、また「現時点ではこれ以上、(ATMの設置が)広がらないようにしないといけない」と、こちらも言葉を濁している。

 パチンコホールにおけるATMの設置についての問題点は、過去のHBO記事でも紹介したが、このホール内ATM設置問題は、ユーザーのギャンブル依存症対策の実効性よりも、社会からの風当たりの標的となるかも知れない。

 多くの依存対策に尽力してきたパチンコ業界であるが、このATM問題が業界が信を失うアキレス腱になりかねない。

<文・安達 夕 @yuu_adachi>

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