賛否を呼ぶ「高輪ゲートウェイ駅」。「新駅名撤回」を求めるそれぞれの理由

賛否を呼ぶ「高輪ゲートウェイ駅」。「新駅名撤回」を求めるそれぞれの理由

建設が進む「高輪ゲートウェイ駅」(2018年撮影)

 山手線の新駅名「高輪ゲートウェイ」が賛否両論を呼ぶなか、「山手線新駅の名称を考える会」は3月27日にJR東日本に対して新駅名の撤回を求める署名と「山手線新駅の名称に関する緊急提言」を提出するとともに、都内で記者会見を開いた。

 賛否両論を呼ぶ新駅名。会見におけるエッセイスト、日本語学者、地図研究者ら各人の「反対理由」を見ていきたい。

◆新駅名は「130位」――開業まで1年を切った「高輪ゲートウェイ駅」

 まずは「高輪ゲートウェイ駅」の概要について簡単に再確認しておこう。

 高輪ゲートウェイ駅は山手線・京浜東北線の田町から品川間(東京都港区)に開設される新駅だ。

 新駅は田町駅から約1.3キロメートル、品川駅から約0.9キロメートル付近に建設されており、東京オリンピックを前にした2020年春に暫定開業する予定。開業後は山手線、京浜東北線が停車することになる。山手線の新駅開業は1971年に開業した西日暮里駅以来、約50年ぶり。国鉄民営化後は初のこととなる。

 新駅の建築デザインは建築家の隈研吾氏で、折り紙をモチーフにした大屋根が特徴。また、照明デザインは、照明デザイナーの面出薫氏で、コンセプトに「街のランドマークとなる暖かな光の駅舎」を掲げ、照明により柔らかな光に包まれたコンコースをつくるという。

 新駅周辺では、国家戦略特別区域の特定事業としてJR東日本主導による国際ビジネス交流拠点の整備を目的とした再開発プロジェクト「グローバルゲートウェイ品川」が進められており、新たな「玄関口」としての役割が期待されている。新駅の全面開業は、この「グローバルゲートウェイ品川」の街びらきが行われる2024年の予定となっている。

◆波紋を呼んだ新駅名。撤回運動まで発展

 さて、今回の新駅開設に際してJR東日本が2018年6月5日から約1ヶ月間実施した駅名公募では、全国から64,052件、13,228種類の「新駅名候補」が寄せられた。新駅名として「高輪ゲートウェイ」が発表されたのは2018年12月4日のこと。公募の1位は「高輪」(8398票)で、以下「芝浦」「芝浜」で、「高輪ゲートウェイ」は130位(36票)だったという。新駅の建設計画が明るみになって以降、高輪・白金周辺の商店街では「高輪駅」を推す声が強く、「新駅はたかなわ」というポスターも掲出されていた。新駅名は高輪に決まると思っていた人が大半だっただけに、発表直後から賛否を呼ぶこととなり、12月中に「高輪ゲートウェイ駅撤回運動」まで起きる事態に発展した。

「山手線新駅の名称を考える会」がインターネットの署名サイト上で実施した新駅名に対する反対署名は、12月から1月までの約1か月間で4万7930件にも達したという。

◆同床異夢の反対運動!? それぞれが掲げる「反対理由」とは

 それでは、新駅名について反対する理由は一体どういったものなのか。記者会見における各人の主張をまとめてみたい。

 まず、反対署名の創始者でもあるエッセイスト・イラストレーターの能町みね子氏は、新駅名を聞いた際に「愕然とした」と述べたうえで、「選定の経緯が不透明であること」「歴史を踏まえておらず、語感も悪いこと」を理由に反対運動を開始したと語った。

 そして、日本語学者の飯間浩明氏は「高輪は古くからの歴史が蓄積されている街であるのに『高輪といえばゲートウェイ』になってしまう」ことへの危惧を述べたうえで「江戸時代の歴史ある街として集客できる可能性があるのに、その可能性を潰されてしまう」と指摘した。

 また、地図研究家の今尾恵介氏は、今は消えてしまった地名が駅名として残り続けている例を挙げた上で、「(『高輪』のような)歴史的な地名をそのまま駅名につけることは古いようで新しい」と述べ、「(ゲートウェイという)『商品名』が『地名』として認識されてしまう」「100年200年と続くかも知れない駅名を(カタカナが混じるような)不自然な『キラキラ駅名』にすることがかえってダサい」と主張した。

 一方、今尾氏はこれに合わせて「これから新しい駅名が付けられる時に変な駅名が付けられないような空気にしていきたい」という趣旨の発言も行っており、この運動による「高輪ゲートウェイ撤回」よりも、今後の「キラキラ駅名増殖」に対する危惧感からこの運動に参加したことも匂わせていた。

 記者会見で意見を述べた各人の意見を簡単にまとめると、能町氏は「『JRのエゴで決めたしっくり来ない駅名を使わなければならない』ことに対するモヤモヤ感」が、飯間氏は「歴史ある『高輪』のイメージが『ゲートウェイ』になってしまうことへの危惧」が、今尾氏は「キラキラ駅名増殖による『地名軽視』に対する警鐘」が反対運動参加への大きな動機となっていることが伺え、いわば各人の立場からによる「同床異夢」の反対運動であるとも感じさせられる会見であった。

 なお、「山手線新駅の名称を考える会」全体では、「『浅草』や『銀座』のように、駅周辺が地名ブランド化するためには、伝統的地名を選ぶべき」としており、新駅名を「高輪」にすることを求めていくとしている。

◆完成後、あなたはどう呼ぶ?

 高輪ゲートウェイ駅が建設されるのは、1930年から2013年まで田町車両センター(旧・田町電車区)という車両基地があった場所になり、新駅の開設は先述したとおりJR東日本主導の再開発「グローバルゲートウェイ品川」事業の一環として行われるものだ。一企業の立場としては、自社主導の大型再開発をアピールしたいのは当然であり、その再開発名を冠したシンボリックな駅名を付けたいのは当然であろう。

 一方で「駅名」というのは公共性が非常に高いものであり、特にこれまで伝統的地名に由来する駅名が多い東京の大動脈・山手線ともなれば尚更のことだ。

 JR東日本は新駅の名称を変える考えはないとしている一方、「山手線新駅の名称を考える会」は、新駅の名称変更とはいかないまでも、今後も新駅を愛称として「高輪」と呼ぶ活動を続けていく予定だという。

 早くも開業まで約1年を切った「高輪ゲートウェイ駅」。果たしてあなたは何と呼ぶ……?

<取材・文・撮影/若杉優貴(都市商業研究所)>

【都市商業研究所】

若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」

関連記事(外部サイト)