あなたの夫は、自分自身は大丈夫? モラ夫、恐怖の行動パターン<モラ夫バスターな日々5>

あなたの夫は、自分自身は大丈夫? モラ夫、恐怖の行動パターン<モラ夫バスターな日々5>

CORA / PIXTA(ピクスタ)

◆300年以上前に形成された「モラ夫」文化

 宝永7年(1710年)、著名な儒学者貝原益軒が和俗童子訓を著わした。その第5巻「教女子法」は、「嫁入り前の娘」に対して、教えるべき人生訓を示した。以下のような内容である。

義父母を敬え

夫を主君として仕えよ

夫に逆らうな

言葉を慎め

家事に専念しろ

倹約しろ

貞操を守れ

・・・

 明治政府は、武家の家族制度を取り入れ、夫を家長、妻をそれに従う無能力者とする明治民法を制定した。教育においては、教女子法の精神を取り入れて良妻賢母主義を推進した。これらの法的、社会的、文化的規範が、男尊女卑、性別役割分担、夫を家長とする家族観を形成し、今日まで受け継がれてきた。私は、これら社会的文化的規範(群)を総称して、モラ文化と呼んでいる。

 モラ文化を行動規範として内在化している多くの日本男性は、自らを家長/支配者、妻を従属者として捉える。そして、支配確立の手法として、怒る(切れる)、長時間説教などが行われるのは、前回ご説明したとおりである。

◆支配を確立できないと凶暴化

 モラ夫は、自分が満足する程度の支配従属関係を確立できないと暴れ出す。DVに対する社会的非難が確立しつつあるため、例えば、50年前と比べると、実際に物理的暴力を直接振るう男性は減ったと思う。

 ただし、警察庁の統計によると、DV保護法が施行された2001年以来、警察でのDV等の相談件数(直接的暴力だけでなく、間接的暴力、モラハラも含まれている)は増え続けている。(参照:警察庁)

 これは、直接的暴力の実際の件数が増えたのではなく、DV等を警察に相談することへの敷居が低くなったためと考えられる。

 さて、直接的暴力が減った反面、間接的暴力の事案は飛躍的に増えた。

 間接的暴力とは、例えば、つぎのようなものである。

 テーブルを叩く、妻を睨みつける。ドアを思い切りバタンと閉める。妻のいる方向に物を投げる。物を壊す。壁にパンチするなどである。

 自室にこもって暴れるモラ夫もいる。これらの場面が、隠し撮り、隠し録音されることがある。担当案件の録画、録音を点検すると、ヒステリー状態で怒鳴り散らし、暴れ、理性を失っているとしか思えない。

 隠し玉(証拠)の存在を知らず、家裁で、自ら怒鳴り散らしたり、暴れたりしたことを否定するモラ夫に何回も遭遇しているが、家裁での紳士然とした振舞いと、録画、録音との落差に声も出ない。

 間接的暴力が始まると、直接的暴力の危険が飛躍的に高まる。暴れるモラ夫に強く言い返したりすると、危険である。直接的暴力を抑え込んでいた、理性の最後のネジがぶっ飛ぶ可能性がある。

◆モラハラの種類はこんなにある!

 そして支配が確立すると、さまざまなモラハラに発展していく。

? ガン無視 

 怒ったり、説教した後、モラ夫が全く口をきかなくなることがある。数日、数週間続くこともある。これにより、多くの妻のメンタルがやられる。

? 自己批判 

 怒鳴られ、説教されたのち、「本当に反省しているのか、自分のどこが悪いのか言ってみろ」と自己批判を強要される。もともと正解はないことが多い。つまり、妻が、どんな答えを言っても、「は? 全然わかってないな」とさらに説教が続く。これが繰り返されて、妻は、自尊心を削り取られていき、萎縮していく。

? 容姿モラ/体重モラ 

 容姿をけなし、太ったことを執拗に指摘する。そして、「女を捨てたのか」「お前を女としてみれない」などと責め立てる。妊娠、出産で、妻の心が子どもに向く頃から始まることが多い。妻の自尊心がズタズタになるまで行われることがある。

? 経済モラ 

 1日当たり、1月当たりの生活費を厳しく設定し、家計簿を提出させて管理するモラ夫もいる。さらに、提出させたレシートを細かく点検し、「なんだこれは、贅沢だな」なとど、無駄遣いを指摘するモラ夫もいる。生活費はレシートと引換えに渡すという事例もある。

? 囲い込み 

 実家や友人との連絡等を制限し、孤立化を図るモラ夫も少なくない。孤立化させることにより、支配従属関係が確立しやすくなり、支配従属関係からの脱出が困難になっていく。

? ワンオペ 

 家事、育児は女の義務、仕事であるとモラ夫は信じている。その結果、家事、育児は、妻のワンオペとなる。

 2016年の夫の育児関与率は、妻が専業主婦の場合、29.6%である。すなわち、7割の夫は育児に関与していない。日本男性は、平均育児時間が少ないだけでなく、そもそも関与していないのである。では、共働きの場合はどうか、夫の育児関与率は、31.0%である。妻が働いていても、関与率に大きな変動はない。(参照:内閣府男女共同参画局の調査)

◆育児に関与しない夫はモラ夫予備軍

 30年間の弁護士実務を通じて、つくづく思う。日本男性は、モラ夫の割合が極めて高い。私の実感では、日本男性の8割はモラ夫だと思う。

 育児に関与しない夫は、モラ夫である可能性が高いと言ってよいだろう。日本男性の7割は、性別役割分担意識を盾に育児から逃げているのであって、モラ夫/モラ夫予備軍に違いないと思う。

 私は、危機感を抱いている。モラ文化を変えないと、さらに、生涯未婚率が高まり、少子高齢化が進むだろう。そして、日本は沈んでいく。

【大貫憲介】

弁護士、東京第二弁護士会所属。92年、さつき法律事務所を設立。離婚、相続、ハーグ条約、入管/ビザ、外国人案件等などを主に扱う。著書に『入管実務マニュアル』(現代人文社)、『国際結婚マニュアルQ&A』(海風書房)、『アフガニスタンから来たモハメッド君のおはなし〜モハメッド君を助けよう〜』(つげ書房)。ツイッター(@SatsukiLaw)にてモラ夫の実態を公開中

関連記事(外部サイト)