パチンコ業界を悩ませる「6号機の憂鬱」。その裏事情を解説する

パチンコ業界を悩ませる「6号機の憂鬱」。その裏事情を解説する

てぃらいみ / PIXTA(ピクスタ)

 今、パチンコ業界が一番頭を悩ましているのは、2018年2月に施行された新しい遊技機規則にそった「新規則機」が市場に出回らない事である。

◆「新規則機」への入れ替え、全然進まず

 既報の通り、ギャンブル等依存症対策の一環として新たな遊技機規則が設けられた事により、全国のパチンコ店に設置されている旧規則機は、遅くとも2021年1月までに全台撤去されなくてはならない。

 しかし、全撤去の期日まで2年を切っている現状で、旧規則機に入れ替わるはずの新規則機の市場投入が大きく滞っているのだ。

 このままでは、計画的な遊技機の入れ替えが進まず、全撤去期限が迫るタイミングで、ホールは大量の新規則機を購入せねばならず、ただでさえ業況が冷え切っているなか、一気の設備投資(遊技機購入)が困難なホール企業は淘汰の憂き目を免れない。

 特に深刻なのは、パチンコ機よりもパチスロ機であり、「新規則機=6号機」は規則が施行されて1年以上経った今でも、市場に十分に供給されているとは言い難い。

 なぜ、6号機の市場投入が滞っているのか? パチンコ業界の6号機の憂鬱を解説する。

◆6号機はなぜこんなに出回らないのか?

 まず、パチンコ業界の事情に詳しくない人のために簡単に説明する。

 パチンコ、パチスロのすべての遊技機は、法律でその仕様が厳しく規制されており、昨年2月の遊技機規則の改正は、IR関連法案との絡みのなかで、ギャンブル等依存症対策の一環として、その射幸性(≒ギャンブル性)を大きく制限された。

 全国のパチンコホールの現状は、新しい規則のもとで造られた新規則機と、旧規則にそって造られた旧規則機が混在している状況にある。

 規則が変わったのだから、新しい遊技機に全部取り換えるべきだと思う方もいるかも知れないが、日本全国にパチンコ、パチスロ遊技機は450万台程度設置されており、それを一気に入れ替えるのは、メーカーの製造能力も然り、ホール側の購入能力も然り、現実的な話ではない。

 そこで行政(警察)は、所謂「激変緩和措置」として、遊技機の検定期間もしくは認定期間が切れた遊技機から順次撤去していくよう指導している。

 この検定期間、認定期間とは、遊技機はパチンコホールに設置されるにあたり、都道府県の公安委員会の許可を受ける仕組みになっており、その設置許可の年数期限が3年間なのである。

 これを業界では「検定期間」と呼んでいる。3年間設置された遊技機を更に延長して設置した場合は、再び公安委員会の許可を受けねばならず、ここで許可を再取得すれば、3年間の「認定期間」を得る事が出来る。

 この旧規則機の、検定期間、認定期間が終了した順に、新規則機に入れ替えていくのが、今のパチンコ業界のやり方である。ちなみに、規則改正以降に検定期間が終了した遊技機は、認定許可を取得する事は出来ない。

◆1000万人のファンがいる業界。こんな現状で良いのか

 ここまで説明したところで、本論に入る。

 ホールに設置されている旧規則機は、どんどんその設置寿命を終えているのに、その遊技機と入れ替える新規則機が市場に供給されない理由はなんなのか。

 それは、メーカーが造ったパチスロ6号機が中々、遊技機の試験期間である保安通信協会(以下、保通協)の検査をパスしないからだと言う。パチスロメーカーの組合による日本電動式遊技機工業協同組合(以下、日電協)によれば、500型式以上のパチスロ機を保通協の検査に入れているが、その試験をパスした遊技機は20%にも満たないという。

 遊技機メーカーは、1つの機種をホールに販売するにあたっても、多少仕様の異なる(時にはほとんど性能に差異がない)複数の「型式」を保通協に持ち込んでいる。世のパチンコホールに設置される遊技機が1機種であっても、その裏には何種類もの「失格機」が存在しているのだ。また保通協の試験にパスしたとしても、遊技機性能が市場に受け入れられないと想定される場合は、十分に「お蔵入り」もあり得る。

 メーカーはこの保通協試験の「厳しさ」を強く訴えている。

◆出玉基準の厳しすぎる規制

 その一番の「厳しさ」は、新たな規則改正によって設けられた出玉基準。そもそも新規則においては、出玉の最大値が旧規則機に比べ大きく制限されているにも関わらず、1時間毎、4時間毎の差玉(遊技球やメダルの出たり入ったりする数)まで強く制限されているのだ。

 パチスロ機の、遊技としての「出玉の波」も許容しないこの試験の「厳しさ」は、行き過ぎた規制ではないのか。パチンコ業界の訴えは深刻だ。

「それが規則であるのだから仕様がない。それが嫌ならパチンコ業界なんか潰れればいい」

 そんな声も十分に承知の上で、それでも敢えて言えば、いまだ1000万人程度のファンを抱える業界であり、多くの企業があり、多くの人たちが働いている業界である。

 パチンコ関連企業が多く集まる台東区東上野に事務所を構える、或る遊技機販社の社長に話を聞いた。従業員は5名の小さな会社だ。20年以上、取引先のパチンコホールに中古の遊技機を販売したり、逆にホールから中古機を買い取って他のホールや販社に転売したりしながら今まで何とか経営してきた。

「売る機械(遊技機)が無い。ホールが入れ替えなければ中古機を買い取る事も出来ない。ウチだけじゃない。知り合いのとこも、みんなモノが動かないと言っている。今までも厳しい時期はあったけど、それでもどうにかなった。でも今回は違う。このままなら来年の正月を迎えるのは厳しい」

 これもまたパチンコ業界人のリアルな声だ。

 国がIR(カジノ)の施策を推進するにあたり、セーフティネットである依存対策を講じる事に異論はない。しかし一方で筆者は、そもそも世間の風当たりが強いパチンコ業界が、国の依存対策のスケープゴートになってしまうのではないかと憂慮している。

<文・安達 夕 @yuu_adachi>

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