外面は「良い旦那」。知らぬ間に妻の心身を蝕むソフト・モラ夫の手口<モラ夫バスターな日々6>

外面は「良い旦那」。知らぬ間に妻の心身を蝕むソフト・モラ夫の手口<モラ夫バスターな日々6>

ソフトモラハラ 認識されず?

外面は「良い旦那」。知らぬ間に妻の心身を蝕むソフト・モラ夫の手口<モラ夫バスターな日々6>

まんが/榎本まみ

◆「結婚」は我慢するためのものじゃない

 私、大貫憲介は30年間、弁護士として離婚事件を扱い、妻たちの涙を見てきた。夫たちは、横暴に振舞い、妻たちは虐げられていた。

 支配服従は妻を追い込み不幸せにする。夫たちは、妻子から疎まれ、家庭での居場所をなくす。或いは、妻が我慢の限界を超え逃げ出す。

 夫の横暴は、家庭を壊し、皆を不幸にするのである(プライバシーへの配慮から、この連載で紹介する事例は、適宜、加工し、特定できないように工夫している)。

 モラ夫には、精神疾患や一定の人格障害があると考える精神科医等もいる。確かに、精神疾患や人格障害のあるモラ夫もいるだろう。また、モラ夫の言動は、しばしば精神疾患や人格障害を疑わせる。

 しかしモラ夫は、もっと広く一般的に存在している。これは、離婚実務上、明らかである。この点については、後日改めて述べる。

 さて、夫の横暴な振舞いに悩まされ、妻が周りに相談すると、「男なんてそんなもん」「長男と思えばいい」「我慢が足りない」などと言われることが多い。離婚に抵抗のない弁護士ですら、「その程度のことでは、離婚は難しいですねぇ。皆さん、それくらい我慢してますよ」などと言い出すこともある。

 はっきり言おう。結婚は、我慢するためのものではない。そもそも、幸せになるために結婚したのである。一方の当事者に我慢を強いるのは間違っている。

 ところで、モラハラと言うと、日常的に怒鳴ったり、イジメたりするのが典型例である。しかし、誰が見ても激しいイジメでわかり易い「ハードモラ」だけでなく、夫婦間には「ソフトモラ」が存在する。

 一見すると、軽い態様で、イジメとは思えない。そのため、当事者も、周囲もモラハラであると認識しない。妻が周囲に訴えても、「優しい旦那さんじゃない」などと言われてしまう。

 しかし、妻を支配する意図をもって日々繰り返されることにより、妻の心身に毒が回っていく、そんなモラハラがある。

◆「誰が稼いでいるのかな?」

 30代前半の共働きの夫婦の話をしよう。

 待望の第1子を妊娠し、妻は、出産育児休暇を取った。妻が休みに入ると、それまで多少は家事を手伝っていた夫が豹変した。モラスイッチが入ったのである。

 夫は、家事を全くしなくなった。そして、家事チェックが始まった。帰宅すると、まず、部屋の中を点検する。隅の埃を見つけ、「なんで、ここに埃があるのかな?」、冷蔵庫を開けて、「この萎びたナスは何かな?」、ソファの上の取り込んだままの洗濯物を見つけ、「なんでしまってないのかな?」などと質問モラを連発する。

 妻が、育児の大変さを訴えると、「誰が稼いでるのかな?」と妻をけん制する。

 妻は、実母の応援を頼み、掃除、洗濯、食事の準備と家事を完ぺきにこなそうと努力した。しかし、努力しても、夫は評価しない。

◆妻にも、モラハラを受けている自覚がない

 却って夫の要求水準が上がり、「サラダにアスパラ入れて欲しいのは言ったよね?」(聞いた覚えはないが、反論しても埒が明かない)、「洗濯は、残り湯でしてるかな?」(入浴は夜なので、残り湯を使うと洗濯は夜になる)、「食費は、一日500円って言ったよね?」(倹約して、貧しいおかずにすると明らかに不満顔になる)、「(子が夜泣きすると)僕は明日も仕事って、知ってるよね?」(子はしばしば夜泣きした)などと質問モラは尽きることがない。

 妻は、それでも、夫の意向に沿うように頑張っていたが、夫の帰宅時刻が近づくと気が滅入るようになってきた。玄関の鍵のガチャ音がすると、心臓が飛び跳ねる。

 子どもを母に任せて、家事の合間に椅子に座ると、ふいに熱い涙が頬を流れた。しかし、自分の泣いている理由は全くわからない。悲しさも悔しさも、何も感じないのである。その半年後、全てが嫌になった。子を連れて実家に帰った。後日、「適応障害」と診断された。

 ところが、本人も、私が指摘するまで、モラハラを受けていた自覚がなかった。「私はダメな妻」と自責の念が強かった。おそらく、夫本人も、モラ夫の自覚はないだろう。

◆子守りすると死んじゃう病

 別の妻は、土曜日に歯医者に行くと夫に告げた。

 夫は、「俺に子守りしろと言うのか」と反発する。妻が、「虫歯が痛むの、お願い」と頼むと、夫は、「俺は、平日働いて、疲れているんだ。俺を殺す気か」と言う。子守りすると、この夫は「死んじゃう」らしい。

 歯医者から急ぎ足で帰ると、夫はソファでいびきをかき、子ども(2歳)は、ソファの近くで泣いていた。妻は、「私、何のために結婚したんだろう」と根本的な疑問を抱く。その後も、家事、育児はワンオペだったが、妻は、夫に何も頼まなくなった。

 それから、10数年が経過し、この夫婦は、現在は、家庭内別居である。妻は、いつ、家を出ようか思案中である。

 以上、ソフトモラの事例を説明した。日常的に、繰り返しソフトモラを受け続ければ、妻の心身は蝕まれていく。見た目が軽く、周囲の理解が得られにくくても、ソフトモラが猛毒であることに変わりはない。

 問題点は、明白だ。意識的にせよ、無意識にせよ、妻を支配し、従属させようとするモラ夫の意図にそもそもの原因がある。

 夫婦は、手を携えて幸福な家庭を一緒に築いていくイコールパートナーのはずである。日本男性は、そろそろ目覚めなければならない。

【大貫憲介】

弁護士、東京第二弁護士会所属。92年、さつき法律事務所を設立。離婚、相続、ハーグ条約、入管/ビザ、外国人案件等などを主に扱う。著書に『入管実務マニュアル』(現代人文社)、『国際結婚マニュアルQ&A』(海風書房)、『アフガニスタンから来たモハメッド君のおはなし〜モハメッド君を助けよう〜』(つげ書房)。ツイッター(@SatsukiLaw)にてモラ夫の実態を公開中

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