生理について話しづらい日本社会、変えるのは「半径3mから」。映画「パッドマン」イベントレポート

生理について話しづらい日本社会、変えるのは「半径3mから」。映画「パッドマン」イベントレポート

telling,編集長の中釜由起子さん(左)とハヤカワ五味さん(右)

 小学校高学年に入るころ、ある日突然、クラスの女子だけが保健室に呼ばれ、保健の授業が行われた。内容は「生理」のこと。女性が生理になる身体の仕組みが子宮のイメージ図を用いて説明され、サンプルとして生理用品が2つほど配布された。生理用品を開封し、保健の先生が使い方を教えてくれた。小学生ならではの無邪気な好奇心と、少し恥ずかしい気持ちを持ったことを覚えている。授業後、男子には「何の話してたんだよー」と聞かれ、「なんでもなーい!」と答えた。このときから「生理」は、女子だけが知っている、ある種の「秘密のこと」となった。

 4月21日、ミレニアル女性向けWebメディア「telling,」(テリング)が主催するイベント「telling, あなただけに言うね、生理のこと。」が開催された。昨年公開され大きな反響を呼んだ映画『パッドマン 5億人の女性を救った男』の試写会のあと、ランジェリーブランドの経営者であるハヤカワ五味さんをゲストに迎えたトークが行われた。

◆生理用ナプキン使用率12%のインド社会を変えた男

 映画「パッドマン」は、生理用ナプキンの使用率が12%と言われているインド社会で、愛する妻を救うために立ち上がった一人の男性の実話を描いたもの。貧しくて生理用品が買えないため不衛生な布を使い、生理中の女性は部屋に入ることさえ許されないほど、生理がタブー視されているインド社会。

 その状況に疑問を抱いた主人公のラクシュミは、苦しむ女性たちを救うべく、安価な生理用ナプキンを大量生産できる機械を発明する。不衛生な布を使用することによる感染症のリスクを抑え、生産・販売における女性の雇用創出まで実現した。

 主人公のモデルとなった男性は、2014年に米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれたほか、2016年にはインド政府から褒章も授与された、まさに「インド社会を変えた人物」だ。

 日本ではインドのように差別的扱いを受けることはないまでも、「生理」についてオープンに話せる空気はまだないと感じる。生理による体調不良は、職場の男性はもちろんのこと、父親・男兄弟にすら話しづらい。企業の福利厚生で「生理休暇」が設けられている場合でも、「生理休暇を使いたい」と言うには、それなりの勇気がいるというのが現状であろう。

◆「仕事と生理」との付き合い方

 これまでの日本の性教育によるものからか、生理について理解が乏しい男性がいることも、生理について男性に話すことに抵抗がある女性が多いことも事実である。「仕事と生理」について、“どう折り合いをつけていくべきか”という質問に対して、ハヤカワさんは「まずは、自分の身体に起きている生理に関するトラブルを解決する努力をした方がいい」と話す。

「生理が重い人には、何らかの婦人科系の病気が隠れていることもある。婦人科に抵抗を持つ女性もいると思うが、諦めずに自分に合った婦人科を探すこと。生理用品等についても、自分に合うもの・自分の求めるものを探すことが大事。気軽に話せるような社会になるまでは、そうした努力が必要」

◆月経カップが「一番使いやすい」

 ハヤカワさんは現在、生理用品の大手企業とのタイアップや、新しい生理用品の開発に取り組んでいる。「生理用品業界は、大手企業の寡占状態が続いている。法律上の規制が厳しいこと、大量生産のための機械製造に莫大な費用がかかること、外国製品の輸入が難しいことなど、新規参入や新商品開発には様々な壁がある」とハヤカワさん。

 既存の一般的な商品には、ナプキンとタンポンがあるが、ハヤカワさんが「一番使いやすい」と注目するのは「月経カップ」。通販等で買い求めることはできるが、ドラッグストア等の店頭で手に取る機会も少なく、抵抗がある女性も多い。見慣れないものに対する漠然とした不安感や抵抗感。映画「パッドマン」で主人公ラクシュミがナプキンを開発していることに対して、周囲の人間が激しい抵抗感を示したことにも頷ける。

◆生理中は「憂鬱ならば、それでいい」

 現在の生理に関する商品広告に関しても、違和感を覚える女性は多い。それは「生理中でも、ポジティブな自分でいよう」といった趣旨のもの。生理中で心身の不調を抱えていても、いつも通りの笑顔で、明るく元気な自分でいること。それが良いこととされているイメージ広告に、プレッシャーを感じる女性も少なくない。

「無理にポジティブでいる、なんてできない。憂鬱ならば憂鬱だと捉えてよい。それよりも、自分がどうやって生理と付き合っていくのか、を考えることが大事」(ハヤカワさん)

◆「情報交換をすることで、お互いに間違った知識を持たずに済む」

 月に1回、5日間ほど、昼夜問わず体内から血が流れ出る。それに伴い、心身の不調も表れる。これが生理の実態なのであるが、このことを男性が実感を持って理解する、というのは難しいことだろうと思う。

 「社会に対して理解を求めても、すぐには変わらない。まずは自分の半径3メートル以内からでいい。パートナー、親、自分の子供など。今日このイベントに参加した人それぞれが5人と話をしたら、150人にもなる。そうした少しずつの繰り返しが大事。情報交換をすることで、お互いに間違った知識を持たずに済む。」とハヤカワ五味さん。生理に辛さを感じる女性にとっても、生理を理解することが難しい男性にとっても、今日からできることは、あるのかもしれない。

(参照:telling,の生理特集「#あの日のお悩み、せいりせいとん」)

<取材・文/汐凪ひかり>

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