小学生がYoutuberとなって不登校宣言。我が子がこう言ったとき、親はどうすべきか?

小学生がYoutuberとなって不登校宣言。我が子がこう言ったとき、親はどうすべきか?

※写真はイメージです H.Kuwagaki / PIXTA(ピクスタ)

◆「不登校」の自由とリスク

 史上最長のゴールデンウィークが明け、日本のあちこちで若者が自殺したというニュースが駆けめぐりました。

 これら自殺の原因はいじめであったり、学力不振、学校の雰囲気になじめなかったなど、様々な理由が想像できますが、やはり長期間の休暇が明けて、いざ学校へ行くとなると憂鬱な気持ちになってしまうのでしょう。自殺まではいかなくても、不登校も増えます。

 児童や生徒が不登校になった時、もし自殺するリスクがあるというなら、無理に学校へ行かせるべきではありません。また、学校生活に楽しみを見出せなくなった児童・生徒は、自分よりも劣っている者を見つけて、いじめる側に回ることもある。そんな状態に陥るくらいなら、学校なんか行かない方がいい。だから、学校なんか行かなくてもいいじゃないかと不登校を支持する意見も多いと思います。

 しかし、それはあくまで目先の問題を先送りにするだけの対症療法であって、自殺リスクを回避する一方で、学校に通わないということは、学ぶ機会を失うのだから、登校している生徒に比べ「学力の低下」という、別のリスクを伴うことになります。

 そんな中、沖縄県の小学校に在籍する、ゆたぼんと呼ばれる10歳の小学5年生が、学校に行くことを拒否し、Youtuberとして生きていくことを宣言した動画が話題になっています。

 義務教育中の、しかもまだ10歳の小学生が、学校での学びを拒否し、動画を配信するという事態に、新聞やテレビなど、マスコミが取り上げて、子どもの自立を促すとか、新しい子育て法とか、既存の学校教育に捕らわれない生き方として称賛される一方、ネットでは子どもを甘やかしすぎとか、父親が子どもをだしにして商売をしている、10歳の子どもが自らの生き方を決定するのは異常など、賛否が問われています。

 この状況について、マスメディアやネットの情報だけを収集して、私が是非を述べるのはどうかとは思いますが、こうした不登校問題の考え方を示しておきたいと思います。

◆憲法や法律に書かれた義務教育のあり方

日本国憲法

“第26条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。

2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。”

学校教育法

”第17条 保護者は、子の満6歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満12歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを小学校、義務教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部に就学させる義務を負う。ただし、子が、満12歳に達した日の属する学年の終わりまでに小学校の課程、義務教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部の課程を修了しないときは、満15歳に達した日の属する学年の終わり(それまでの間においてこれらの課程を修了したときは、その修了した日の属する学年の終わり)までとする。

A 保護者は、子が小学校の課程、義務教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部の課程を修了した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満15歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを中学校、義務教育学校の後期課程、中等教育学校の前期課程又は特別支援学校の中学部に就学させる義務を負う。

B 前二項の義務の履行の督促その他これらの義務の履行に関し必要な事項は、政令で定める。

第144条 第17条第1項又は第2項の義務の履行の督促を受け、なお履行しない者は、10万円以下の罰金に処する。”

 これがいわゆる「義務教育」の根拠条文です。保護者は、子どもを学校教育法上の小学校・中学校に就学させる義務を負っていて、それに従わなければ督促の後に10万円以下の罰金という罰則規定まで設けてあるのです。つまり、条文を杓子定規に適用すれば、親は子どもが6歳になったところで、学校教育法上の小学校へ就学させる義務があり、親の教育方針でフリースクールに行かせるとか、インターナショナルスクールへ進学させるといったことは許されません。ただし、それは建前で、病弱や発育不完全やその他の事情で就学できない場合については、就学義務を免除される旨の条文もあります。

学校教育法

”第18条 前条第一項又は第二項の規定によつて、保護者が就学させなければならない子(以下それぞれ「学齢児童」又は「学齢生徒」という。)で、病弱、発育不完全その他やむを得ない事由のため、就学困難と認められる者の保護者に対しては、市町村の教育委員会は、文部科学大臣の定めるところにより、同条第一項又は第二項の義務を猶予又は免除することができる。”

 つまり、ただ勉強したくないという不登校も、フリースクール等の代替教育施設を選ぶことも、積極的に外国語教育を行うためのインターナショナルスクール等のいずれを選んだとしても、子どもの就学義務を果たしていることにはならないものの、「既存の学校教育が合わない」とか、「もっと適切な教育を受けさせたい」など、何らかの理屈をつけさえすれば、保護者は学校教育法上の義務を果たさなくても構わないという状況です。だから、児童虐待が疑われる場合を除き、まず刑事罰の対象にはなりません。

 不登校から起業して立派な経営者になった人もいれば、最高峰の大学を出ても犯罪者になった人たちもいるように、教育を受けようがうけまいが、親が納得し、子どもも望むのであれば、敢えて普通の教育を受けない選択も批判すべきではありません。

 しかし、日本の公教育は、子どもを学ぶ環境に置き、学習指導要領に従った体系的な授業を受けることができ、他人とのコミニュケーションを図ることで非認知能力(忍耐力・社会性・感情コントロール)を育むことができます。諸外国と比べて優れている訳でもなければ、きめの細かい教育が行われている訳ではありませんが、平日の大半をこうした環境に置くことで、社会に適合した人格形成を行っていくことができるという利点があります。また、我が国の公立の小中学校においては、授業料は無償とされているのですから、コストパフォーマンスの点から見ても、通わせるべき教育施設であると思っています。

 でも、就学することが困難というのであれば、不登校もやむを得ません。

◆転居先においても就学困難なのか

 問題の10歳のYoutuberゆたぼん氏は、大阪に住んでいた時、通っている小学校の教師が必要以上に宿題を課したり、居残り勉強をさせたり、不当な体罰があったという説明をしています。仮に彼の言う通り、問題の多い小学校であったとしても、それは大阪に住んでいた時の状況であって、今は沖縄在住です。沖縄の小学校も同様だったのでしょうか。それとも沖縄であれば、のんびりした環境だから、あまりうるさく言われなかったのかもしれませんが、保護者が現地で就学させる可能性を模索したのかが疑問です。

 あくまで一般論としてでしかいえませんが、転居先の小学校にきちんと相談すべきだったではないでしょうか。

 脳科学者の茂木健一郎氏はこの少年について、「学校に行くだけがすべてじゃない」とエールを送っています。確かに、学校へ行けない子どもに無理強いするのは良くないという意味では私も同意見です。だけど、学校へ行くことによって得られる知識や人間関係など、可能性を最初から否定してしまうのはどうかと思うのです。

◆アメリカのホームスクーリングを参考にすべきか

 アメリカは、小学校を追われたトーマス・エジソンに対し、母親が自宅で教育したことでも知られるように、個々人の能力や状況に応じ、学校以外の場所で初等・中等教育を行うことが許されています。このホームスクーリングは、家族や家庭教師によって、自宅で学習させるという、学校教育を代替する制度です。

 教材を使って勉強する以外に、とりあえず机に向かうとか、絵本を読み聞かせるとか、生活の中で体験する様々な活動をレポートとして提出し、それを単位として認定し、小中学校を卒業したものとしてみなす制度です。これらは悪い制度ではありませんが、そもそも教師の代わりとなるになるはずの家族が適切に指導できるかという点が疑問です。全米でこの制度が導入されたのは、個々にあった適切な教育を施すというよりも、学校へ行かない子どもたちが犯罪に巻き込まれたり、ギャングに入らせないため、保護者などの大人が子どもから目を離さないための施策なのです。

 確かに「アメリカでは学校へ行かなくても自宅で勉強させるのはよくあることだ」と、自由で明るい印象はありますが、実は「不登校には常に犯罪リスクと、低学歴・低学力の子どもが大人になっても定職に就けないというリスクも同時に存在する」ことを理解しなければいけないのです。

◆ゆたぼん氏を讃える人、批判する人

 子どもが小学校へ行かず、Youtuberとして活動していることについて、私は彼の未来が想像できません。

 学校へ行かなかった人でも、きちんと職に就いている人や、起業して立派な経営者になっているケースもあれば、まともな職にありつくことができず、学歴不問の違法スレスレの職にしか就けない人もいるためです。

 前者を想像している人は讃え、後者を想像する人は批判するのです。

 Youtuberの業界についていえば、うまくやれる人は莫大なカネが稼げるけれど、うまくやれない人は無茶な動画を作成して炎上して初めて閲覧されるという過酷な業界です。やはり、個性的な動画を作成する一方で、学校の勉強は人並みにこなしておくというのが、普通の大人の無難なアドバイスではないでしょうか。

◆子どもが学校をやめたいと言った時、親はどうすべきか

 もしみなさんの子どもがゆたぼん氏と同じような状況で、「学校へ行きたくない」と言い出したら、どうすべきなのでしょうか。

 ゆたぼん氏は、Youtubeというお金を稼ぐツールを得ているから、一種の職業訓練になっているともいえるのですが、やはり親としては法律上の就学義務を果たすために、公教育を受けさせる努力はすべきです。

 まずは子どもとしっかり話し合うべきだと思います。学校へ行きたくない理由が、学力低下による教師との関係が原因なのであれば、親は教師と話し合って、解決策を模索すべきです。我が子の学力低下が教師の指導力によるものなのか、それとも子どもに発達障害のようなものがあるのかなど、スクールカウンセラーや学校長を巻き込んで、見極めなければならないと思います。

 もちろん、本人が嫌がっているのに、無理に就学させてもPTSDを受けたり、ストレスから自傷行為などを起こすような状況なら、近隣の学校へ転校させたり、フリースクールやサポート校への転校も検討すべきかと思います。ただ、フリースクールやサポート校は授業料が高いケースもありますから、経済状態が悪いのなら、せめて安価な学習塾など、国語や算数などの一部の学習を補助してもらうくらいの学習機会を検討すべきです。

 不登校の問題は、どうしても学力が低下してしまうことにあります。児童が成長し、学びの必要性を感じ、心機一転して学ぼうと思っても、そもそも基礎学力が低いと学ぶモチベーションを維持できません。その結果、何をやっても、どこへ行っても何もできない状況に陥ってしまうのです。そして企業などは、学習経験のしっかりした人の方が、より多くの仕事を正確かつ短時間にこなすことができるという経験則を持っているため、一定の学歴を持っている人の方が採用されやすいのです。つまり、学校へ行かないとか、学習経験を積まないと、将来の選択肢の幅が狭くなってしまうのです。

 自殺するくらいなら学校へは行かない方がいい。自分の好きなことで生きていきたい。

 この言葉は一理あります。

 でも、フランスの哲学者「ヴォルテール」は『その年齢の知恵を持たない者は、その年齢のすべての困苦を持つ』と述べたように、皆が学んでいることを自分だけが学んでいないことによって、様々な問題が生じます。こうしたリスクを理解した上で、どの道をどう選ぶかは、子どもと親の話し合いで決めていくべきかと思います。

<文/松本肇 Twitter ID:@matsuhaji>

まつもとはじめ●教育ジャーナリスト&教育評論家。

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