300年以上前の男尊女卑の教え「教女子法」を今だに踏襲するモラ夫文化<モラ夫バスターな日々13>

300年以上前の男尊女卑の教え「教女子法」を今だに踏襲するモラ夫文化<モラ夫バスターな日々13>

まんが/榎本まみ

◆弁護士・大貫憲介の「モラ夫バスターな日々」<13>

 前回は、モラ文化、モラ夫が日本を滅ぼすことを示した。ところで、モラ文化も、その重要な要因となって日本が潰滅的に敗北したことが、かつて一度あった。日本は、敗北から立ち直るにあたって、モラ文化と決別する旨、宣言した。

 すなわち、日本は、1946年11月3日、

1、婚姻は、…夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力より、維持されなければならない。

2、…婚姻及び家族に関する…事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

と宣言したのである。(日本国憲法24条)

◆憲法24条を起草したベアテ・シロタ・ゴードンは両性の本質的平等を目指した

 明治民法が確立した、日本のイエ制度が、富国強兵の基礎となり、軍国主義と結びついたことから、憲法は、両性の本質的平等を宣言し、イエ制度は廃止された。憲法24条を起草したベアテ・シロタ・ゴードン氏は、少女時代の約10年間、戦前の日本に住んでいた。当時の日本女性が、夫の後ろをついて歩き、家事使用人のように扱われていることを深く心に刻み、日本女性の社会的地位の向上に思いを寄せていたという。

 ところが、当時の法務官僚たちは、イエ制度の信奉者であり、ベアテ草案に強く反対した。GHQの強い指導で、明治民法は改正され、表面的には、男女平等な形が整えられた。しかし、妻が夫の姓を名乗って、夫の戸籍に入り、夫の従属者になる、それを示す戸籍や夫婦同姓強制主義は、生き残った。これらは、モラ文化存続のまさに要だったからこそ、当時の官僚たちは、これを守ったのであろう。

◆最高裁判決自体が示す、夫婦同姓強要の違憲性

 夫婦同姓強制主義は憲法24条違反ではないか。この点に関し、最高裁大法廷は、2015年12月16日判決にて、合憲判断を示した。

 しかし、この判決自体が、夫婦同姓強制主義の違憲性を示している、私は、そう捉えている。すなわち、弁護士出身の最高裁判事5人のうちの3人は、憲法24条違反との判断を示した。離婚案件を扱い、妻の従属的地位を痛切に体験する弁護士の過半数は、夫婦同姓強制主義を憲法24条違反と考えるのである。

 また、3人いる女性判事は、全員が憲法24条違反との判断を示している。男女差別を考えるにあたって、女性判事たちが一致して、24条違反と考えている事実は重い。仮に、大法廷の半数が女性であれば、違憲判決が出されただろう。

 この判決の中で、岡部喜代子判事は、「…96%もの多数が夫の氏を称することは、女性の社会的経済的な立場の弱さ、家庭生活における立場の弱さ、種々の事実上の圧力など様々な要因のもたらすところである…」と現在の女性の立場の弱さに言及している。

◆モラ文化の素地は300年以上前にできた

 日本のモラ文化は、儒学者貝原益軒の和俗童子訓(1710年)に始まる。その5章、教女子法は、未婚の女性に対し、「夫を主君として仕えよ」「夫に逆らうな」「家事に専念しろ」「貞操を守れ」などと教えた。その数年後、教女子法を通俗簡略化した女大学(おんなだいがく、女性向け人生訓)が出版され、男尊女卑の文化が江戸の世に広まっていった。

 明治政府は、女大学の教えを基礎に女子教育の目的を良妻賢母育成とした。教育における良妻賢母主義は、明治20年頃から強く意識され、明治32年の高等女子学校令により確立する。モラ文化の基礎である性別役割分担(男は仕事、女は家事)や夫を家長とする男尊女卑が、教育を通じ、社会的文化的規範となったのである。(※参考)

◆妻は「無能力者」として夫の籍に入り従う。これが戸籍制度の本質だ

 明治政府は、明治31年に制定した民法(明治民法)にて、イエ制度を定めた。イエ制度の下では、戸主は、イエの統率者としての地位と権能を与えられ、妻は、夫の戸籍に入り無能力者として戸主である夫(因みに、女戸主は極めて例外的)に従うものとされた。

戸籍は、イエの統率者である戸主を筆頭に記載し、妻や子を従えていることを表現した。

 モラ文化との決別を宣言するベアテ草案に抵抗した法務官僚たちは、この戸籍を生き延びさせ、家族の「一体性」を示すものとして、戸籍や夫婦同姓強制主義を温存した。

 その結果、夫は、未だに戸籍筆頭者であり、妻は夫の姓を名乗っている(前述のとおり、96%が夫の姓を選択する)。日常生活において、夫は家長として扱われ、主人と呼ばれる。

 その結果、モラ夫たちは、「俺様は家長」という意識であり、モラ文化を背景に、日常的に妻たちをいじめ、支配する。社会的規範の側に立っているとの意識のため、モラ夫たちが自らの言動を自省することはない。つまり、日本は、未だに、モラ夫を許容するモラ文化から脱却していない。

 すなわち、約70年前に、モラ文化との決別を宣言した憲法24条の先進性に、私たちは未だ追いついていないのである。

 次回は、日本の若い男性たちがなぜモラ夫になるのかを考えてみたい。

【大貫憲介】

弁護士、東京第二弁護士会所属。92年、さつき法律事務所を設立。離婚、相続、ハーグ条約、入管/ビザ、外国人案件等などを主に扱う。著書に『入管実務マニュアル』(現代人文社)、『国際結婚マニュアルQ&A』(海風書房)、『アフガニスタンから来たモハメッド君のおはなし〜モハメッド君を助けよう〜』(つげ書房)。ツイッター(@SatsukiLaw)にてモラ夫の実態を公開中

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