あの店も新規参入!外食チェーンで巻き起こる「天ぷらブーム」、その行方は?

全国各地の外食チェーンが天ぷらチェーンに続々と参入 丸亀製麺のトリドールHDも展開

記事まとめ

  • 全国各地の外食チェーンが天ぷらチェーンの展開を開始し、徐々に勢力を伸ばしている
  • 全国各地の外食チェーンが天ぷらチェーンの展開を開始し、徐々に勢力を伸ばしている
  • ロイヤルHDはてんや、和食さとのSRSホールディングスは天丼・天ぷら本舗 さん天を展開

あの店も新規参入!外食チェーンで巻き起こる「天ぷらブーム」、その行方は?

あの店も新規参入!外食チェーンで巻き起こる「天ぷらブーム」、その行方は?

全国各地で相次ぐ大手外食チェーンの「天ぷら参入」。果たしてその行方は…?(写真は「天ぷらスガキヤ」)

◆全国各地の外食チェーンが「天ぷら」に参戦

 前回、「天ぷらのファストフード化」に挑戦する新業態「天ぷらスガキヤ」を紹介したが、その中で「スガキヤ」は過去にも天ぷら店の展開を目指したものの、軌道に乗せることができなかったことを述べた。

 天ぷら業態での失敗を経験したことがある同社がここに来ての「業態再興」となったのは、全国各地の外食チェーンが「天ぷらチェーン」の展開を開始し、徐々に勢力を伸ばしていることも大きいであろう。

◆一番の成長株も!安くて速い「ファスト天ぷらチェーン」

 全国チェーンの天丼・天ぷら専門店市場はロイヤルホストを展開する「ロイヤルHD」が大都市部を中心に展開する「てんや」(2019年3月現在、国内208店・海外22店)が独占状態にあった。

 しかし、近年は大手外食チェーンが相次いで天ぷら業界への参入を開始しており、店舗網を広げつつある。

 そのうち、目下一番の「成長株」となっているのが、和食ファミリーレストラン「和食さと」で知られるSRSホールディングス(旧・サトレストランシステムズ、大阪市)が手掛ける「天丼・天ぷら本舗 さん天」だ。

「天丼・天ぷら本舗さん天」は、2012年に大阪市に1号店を出店。300円台の「海老天丼」を提供するなど「低価格路線」により店舗網を拡大し、僅か6年で関東から四国にまで全国43店舗(2019年5月現在)を数えるまでに急成長を遂げた。

店舗立地も都心型から郊外型まで様々で、今や同社にとって、「和食さと」、2016年に買収した定食チェーン「宮本むなし」に次ぐ「フラッグシップ業態」となりつつある。

 このほか、牛丼で知られる「松屋フーズ」(武蔵野市)も2016年から「ヽ松(てんまつ)」という名称で天ぷらチェーンの展開を開始しており、朝定食が300円台から(伊勢佐木町店)など、やはり「低価格路線」が特徴だ。ヽ松は横浜市に伊勢佐木町店1店舗を出店するのみで実験的要素が強いとみられるが、てんやの向かいという攻めた立地であり、軌道に乗れば都市部を中心に全国展開に乗り出す可能性も高いであろう。

 もちろん、以前紹介した「スガキコシステムズ」(名古屋市)による「天ぷらスガキヤ」(2018年6月参入、名古屋市の1店舗のみ、2019年6月に改装されて「はね天」となる予定)も、こうした「低価格路線」の一角を占める店舗の1つだ。

◆「ファスト天ぷら」と一線を画す「揚げ出し」「おかず食べ放題」、全国へと広がるか?

 一方、九州に拠点を置くチェーン店の多くが特徴としているのが、オープンキッチン形式で揚がった天ぷらから提供するという高級志向の「揚げ出し」方式だ。

「揚げ出し」方式は1960年代に福岡市の天ぷら店「だるま」が始めたのが元祖とされる。九州北部では、この「だるま」を始め、一番の人気店との呼び声も高い「ひらお」(福岡市)、北九州エリアを拠点とする「ふそう」(北九州市)など複数の中小チェーン店が店舗を展開。さらに、九州の地場大手企業で九州・中国・四国地方を中心に和食ファミリーレストラン「庄屋」などを展開する「庄屋フードサービス」(佐世保市)も「揚げ出し」をウリにする天ぷら専門店「那かむら」「金の天ぷら」「天丼 金天」を九州・中国地方各地に21店舗(2019年5月現在、天丼業態を含む)展開するなど「激戦区」となっている。

 こうした「揚げ出し」方式を採用することで全国へと展開しつつある成長株が、丸亀製麺を展開する「トリドールHD」(神戸市)の新業態「揚げたて天ぷら定食 まきの」だ。

 同店は丸亀製麺の天ぷら製造・販売ノウハウを活かしつつ、丸亀製麺と同様のオープンキッチン形式で客の目の前で調理(まきのでは「都度揚げ」と称する)を実施。定番メニューの「まきの定食」が990円(+税)といわゆる「ファスト天ぷら」の各店より価格帯は高いものの、店内に落ち着いた高級感のある内装を採用するなど「上質路線」をアピールしている。2019年5月現在は全国に13店舗(天丼業態含む)しかないが、2016年には東京進出も果たした。

 九州の揚げ出し方式の店舗の多くは「いかの塩辛」、「漬物」、「佃煮」などといった何らかの「おかず」が食べ放題であることをウリにしているのも特徴だが、「まきの」も同様に「いかの塩辛」などが食べ放題だ(おかずは時期や店舗によって異なるとのこと)。揚げ出し方式の店舗では「おかず」を目的に訪れる客も少なくないようで、各店の個性を際立たせるものとなっている。

◆「明太子食べ放題」で人気のチェーンも

 また、関西を拠点に「まいどおおきに食堂」を全国展開する「フジオフードシステム」(大阪市)が展開する「天麩羅 えびのや」(45店舗、2019年5月現在)は揚げ出し方式ではないものの、価格帯は「まきの」と同水準で、おかずの「辛子明太子」や「漬物」が食べ放題。「天ぷら まきの」と同じ2016年に東京に初進出している。

 現在、「まきの」は首都圏に3店舗、「えびのや」は首都圏に10店舗のみの展開であるが、「丸亀製麺」や「まいどおおきに食堂」と同様、両店がこれまでのノウハウを生かすかたちで全国へと店舗網を広げていくことができるかどうかが注目される。

 一方で、とくに「揚げ出し」方式の店舗は「オープンキッチン」が必須であり、店舗スタイルが決まっている店も多いため、飲食チェーンで良くみられる居抜き方式による店舗網の拡大が難しいと思われる。そのため、てんやなどの「ファスト天ぷら店」とは異なり、とくに都心部においては一気に店舗網を伸ばすことは困難かも知れず、当分は各チェーンによる「群雄割拠」状態が続く可能性も高い。

 日本人の誰もが好きな食べ物でありながら、これまでは見かけることが少なかった「天ぷらチェーン」。その潜在市場は大きなものであることは確実だ。

 次々に新たな事業者が参入し、まさに群雄割拠となりつつある天ぷら業界。大きく広がる「油の海」の覇者は一体誰になるのであろうか。

<取材・文・撮影/若杉優貴(都市商業研究所)>

【都市商業研究所】

若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」

関連記事(外部サイト)