問題山積の被ばく労働、外国人労働者の受け入れは中止を

問題山積の被ばく労働、外国人労働者の受け入れは中止を

多瑠都 / PIXTA(ピクスタ)

 福島第一原子力発電所での廃炉作業に「特定技能」の外国人労働者を受け入れるとしていた東京電力。厚生労働省からの通達を受け、5月22日に当面の間は受け入れないという方針を示した。

 しかし今後、廃炉作業に外国人労働者を投入する可能性は残っている。識者らは、「被ばく労働に従事させるべきではない」と反対している。

◆厚労省は「極めて慎重な検討」を東電に要求

 技能実習生を福島第一原発で受け入れることは、制度の「国際貢献」という名目上、認められていなかった。しかし東電は、特定技能について法務省に問い合わせ、「新資格は受け入れ可能」と判断したという。福島第一原発だけではなく、再稼働を目指す柏崎刈羽原発(新潟県)でも受け入れる方針だった。朝日新聞が4月18日に報じた。

 しかし厚生労働省は5月21日、同社に対し、「極めて慎重な検討」を求める通達を出した。通達では、外国人労働者を受け入れる際の課題について、こう指摘している。

「日本語や我が国の労働習慣に不慣れな労働者に対する安全衛生管理体制を確立する必要があること、放射線に関する専門的知識がない労働者が作業することに起因した労働災害、健康障害が発生するおそれがあること等の課題が想定される」

 そのうえで東電には、外国人労働者が作業の指示を確実に理解できるように教育することなどを求めていた。

◆東電は当面は外国人労働者を受け入れないと発表

 これを受けて東電は22日、「当面の間、発電所での特定技能外国人労働者の就労は行わないこととする」と発表。

 しかし、朝日新聞の5月22日の報道によると、福島復興本社の担当者は「この先ずっと就労させないと言い切っているものではない。検討して改善したうえでの就労はありえる」と語っていたという。今後、外国人を就労させる可能性が十分にあるということだ。

◆危険手当まで中抜きされる現状

 廃炉作業への外国人労働者の受け入れに当たっては、様々な懸念事項がある。そもそも被ばく労働では、賃金が中抜きされているという問題が指摘され続けてきた。

 5月27日に開催された「外国人労働者と被ばく労働」の学習会で、朝日新聞社の青木美希記者は「多重下請構造で、中抜きが横行している。1万数千円の日給が5500円まで下がってしまうことがある。危険手当まで中抜きされることがわかっている」と話す。

 また、外国人労働者が廃炉作業の危険性をきちんと理解できているのか、そもそも自分がどのような仕事をしているのか分かっているのかという問題もある。過去には、ベトナム人の男性が、そうとは知らずに除染作業に従事させられていたことがあった。

 外国人労働問題に詳しい指宿昭一弁護士は、「技能実習生の多くは自分がどこで働いているのか、何の仕事をしているのか正確に理解していないことが多い。労働条件もわかっていない。そのような人たちに廃炉作業をさせるのか」と憤る。

 ある支援団体では、相談を受けるとまずその実習生がどこで働いているのかを訊ねるという。自分がどこで働いているのはしっかりと理解している実習生は少なく、「日本で働いている」といった答えが返ってくることも珍しくない。働いている場所を正確に把握するため、最寄のコンビニで買い物をしてもらい、レシートを撮影して送ってもらうそうだ。

「登録支援機関」の制度にも問題がある。外国人労働者を雇う企業とは別に、登録支援機関が様々な支援を行うことになっている。しかし支援機関は、企業から委託を受けて、報酬を受け取っているため、「労働者がハラスメントや賃金の未払いといった問題を相談したときに、適切支援することができるのか」(指宿弁護士)という問題がある。

◆複数の原発で被ばく、責任の所在は

 福島第一での廃炉作業や九州電力玄海原発の定期検査を行い、急性骨髄性白血病を発症した男性がいる。2015年10月に労災認定を受け、2016年11月には、原子力損害賠償法に基づく慰謝料を求めて2社を提訴した。

 複数の原発で被ばくした場合、電力各社は「どのように責任を分担するのか」。被ばく労働を考えるネットワークのなすびさんは、そう指摘する。問題が山積する現状では、危険な被ばく労働に外国人労働者を受け入れるべきではないだろう。

<取材・文/HBO編集部>

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