「お母さんはもっと自由でいい」。女性を苦しめる母親像は「つながり」を持つことでアップデートできる

「お母さんはもっと自由でいい」。女性を苦しめる母親像は「つながり」を持つことでアップデートできる

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「子どもはお母さんと一緒にいるのが一番いい」「家事と育児は妻がやること」など、社会的な決めつけによって女性が生きづらさを感じることがある。

 しかし、そうした考えは、時代の流れとともに変わっていくのが自然だ。

 既成の母親像を見直し、自分らしく生きる女性たちを増やそうと今年2月、「母親アップデートコミュニティー」(以下、HUC)が立ち上がった。ソーシャル経済メディア「NEWS PICKS」ユーザーが有志でつくったグループで、オンラインでの活動のほか、イベントも主催している。

 国内外から集まる約130人のメンバーをリードする鈴木奈津美代表に、同グループが思う「新時代の母親像」を伺った。

◆「母親だから」の言葉に縛られていた

 鈴木代表は、4歳の男の子を持つ女性。かつては社会的に求められる「母親像」に苦しんだ経験があった。長男を出産後、約半年後に仕事に復帰。その際には「家事、育児、仕事の全部を100点満点で頑張らないといけない」と思い、無理を続けた。

 保育園の送迎、仕事、帰宅後は食事の準備、お風呂、寝かしつけの後は深夜まで仕事をする日々を送った。当然ながら睡眠不足に陥り、仕事中に高熱を発して寝込んだこともあった。鈴木代表は当時のことを、

「冷静に考えたら、かなりきついスケジュールですよね。でも当時は『お母さんってそういうものだ』と思っていたんです。家事と育児を夫に任せると、『夫に任せて、自分はダメな母親なのではないか』と落ち込んだこともありました」

と振り返る。

◆「子どものお迎え=母親の仕事」に疑問

 そのような生活を送るうちに、鈴木代表は、「自分は本当にここまでする必要があるのか?」と疑問を抱き始める。

「いまの自分も、お母さんに対するイメージも変えていきたい」

 こう思った鈴木代表は、2018年の夏に行動に出た。それまではSNSもほとんどせず、考えや気持ちを発信したことがなかった自分を変えるべく、ブログを立ち上げた。アウトプットを通じて、外の世界とのつながりを持ちたいと思ったためだ。

 プライベートでも勉強会に参加し、自分がいま何を思い、どんなことをしたいのかを整理した。旧来の母親像についてモヤモヤを抱いていたところに、鈴木代表の人生を変えるイベント案内が舞い込む。

「メディアアーティストの落合陽一さんがMCを務める"WEEKLY OCHIAI"(※)の観覧席募集を見つけたのです。テーマは『母親をアップデートせよ』で、自分の課題とマッチしたんです」

(※)「NEWS PICKS」のライブ動画番組。同番組では、毎週1つずつテーマを決め、どのようにアップデートするかを議論している。

 鈴木代表はすぐさま観覧席に応募し、見事当選。会場には、母親になってからの生き方を模索する女性たちが50人ほどいて、まず「自分の課題」を色紙に書いてから子育てやキャリアなど5つのテーマについて議論をした。この際、代表が書いたのが、「お迎え=母親の仕事からの脱却」だった。

「観覧のスタートは、午後10時。子どもがいるから夜の外出はできないと決めつけていた自分を文字通り『アップデート』できました」

◆週5で飲み会に行ってもいいんだ!

 会場で議論が深まったとき、「お母さんたちでコミュニティをつくったらどうか?」という提案があり、代表は気づいたら手を挙げていた。こうして立ち上がったのが、HUCだ。NewsPicksが好きで、「母親をアップデートしたい」という強い想いを持ったメンバーが集まった。

「『無敵の、つながり。母親を、もっとおもしろく。』『誰も否定しない』のコンセプトのもと、メンバー専用ページでは日々思ったこと、気づいたことを書き込み、みんなで共有しています」

 HUCには「3つの『ア』」を大切にする文化がある。

「アウトプット」(気づいたこと、思ったことをグループ内で伝える)

「シェア」(どう感じたかを共有する、意見し合う)

「アップデート」(成長する、気づきを得る)

 これは、課題を同じくする人とのコミュニティーがあってはじめてできることだ。社会的、また自分の中でつくりあげた思い込みから脱却できる。

「『週5で飲み会に行く』というメンバーがいて、『こんなに自由でもいいんだ!』と驚きました。毎日誰かがするアウトプットを見て、自分では思いつかない考え方に触れることができます」

 メンバー専用ページでのやりとりだけでなく、「母親のメンタルヘルス」に焦点を当てたトークディスカッションなど、イベントも開催している。

◆新時代の母親に必要な「3つのS」

 HUCは、令和初の母の日を前に、Twitterで「#令和の母 ツイートキャンペーン」を行なった。ハッシュタグ「# 令和の母」をつけ、母親のあるべき姿、理想の姿について1000件を超える投稿があった。

「『母親』をラベルではなく、『模様』のひとつにできたらいい」

「母である前に、ひとりの人間」

「コミュニティをつくり、仲間と育児を分かち合う。人類にとって自然な形に育児が戻ろうとしている」

 寄せられた投稿をふまえてHUCは、令和の母のキーワードとして「3つのS」を見出した。

・Self(自分で、切り拓く。自分の人生を自分らしく生きる)

・Share(シェアでつながる。学び、喜び、子育てをシェアする)

・Smile(もっと、おもしろく。自分もみんなもおもしろくなるように行動する)

 これら3つの「S」の文化が当たり前のように広がれば、子育てと仕事や趣味の活動との両立が楽になり、女性は産後も人生を楽しみやすくなるはずだ。

 そのためには、女性の意識を変えるだけでなく、夫である男性の長時間労働の是正や、保育園の問題の解消など、社会的な変革もセットで考える必要はあろう。

◆ひとりでも多くの女性が、自分らしく生きられるように

 ブログ開設からHUCの立ち上げを通じて鈴木さんが痛感したのが、「人とのつながりの大切さ」だ。

 母親になってからの生き方は、両親や周囲の人たちをロールモデルにすることが多く、HUCのように横のつながりを持って考えを共有することは、あまりない。

「もしいま辛いのであれば、『辛い』と言葉にすることが大切だと思います。私はブログを立ち上げましたが、それはひとつのやり方にすぎません。Twitterで誰かの投稿にリプをつけるだけでもいいんです。

 発信をすれば、共感する人が必ずいます。そうやって、さまざまな人とのつながりが持てるようになるんです。他の人の考えや行動に触れると刺激を受けますし、視野が広がるきっかけになります」

 今後について鈴木代表は、

「HUCはまだ立ち上がったばかり。コミュニティ内におけるアップデートを促進して、その後は世の中に向けて『新しい時代の母親像』を伝えていきたいと思っています。

 時代の移り変わりに伴い、『お母さんはもっと自由でいいこと』などをメンバーのひとりひとりが会社の人、友人など周りの人に伝えていく。そうやって輪が広がり、ひとりでも多くの母親がアップデートされて、自分らしい楽しい人生を送ってもらえたら嬉しいです」

 と笑顔で話してくれた。

<取材・文/薗部雄一>

1歳の男の子を持つパパライター。妻の産後うつをきっかけに働き方を見直し、子育てや働き方をテーマにした記事を多数書いている。

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