パチンコ業界の政治への働き方は業界に何をもたらすのか?

パチンコ業界の政治への働き方は業界に何をもたらすのか?

てぃらいみ / PIXTA(ピクスタ)

◆パチンコ議連の提言を受けた保通協適合状況結果

 ちょうど1か月前、本サイトに「接近するパチンコ業界と自民党。パチンコ議連提言がもたらす『じゃんけんの構図』」という記事を寄稿した。通称パチンコ議連と呼ばれる自民党の「時代に適した風営法を求める議員連盟」(以下、風営法議連)が、4月25日、山本順三国家公安委員長宛に遊技機基準等に関する提言を行ったという記事で、その提言の主たる内容は、「型式試験(=遊技機試験)の結果を開示する等、適合を容易にするための方策を取り、適合率を向上させること」というものだった。

 全国のパチンコ店に設置されている遊技機は、すべて「保安通信協会」(以下、保通協)の試験を受け「適合(=合格)」したものであるが、ギャンブル等依存症対策の一環として2017年2月に遊技機の規則等が変更された以降、新規則にそった遊技機の適合状況がかなり落ち込んでいた。

 パチンコ店は2021年の1月までに、旧規則で適合しているすべての遊技機を全台撤去し、新規則で適合した遊技機を設置しなくてはならない状況にあるにも関わらず、その新規則機がほとんど市場に出てこないという現状を打破するため、パチンコ業界は風営法議連に働きかけ、保通協における遊技機の適合状況の改善を図ろうとしたのだ。

 提言が4月末。そして5月の保通協の適合状況の結果が公表された。

◆新規則機の適合状況は改善されたのか?

 結果から言えば、「改善」された。

【パチンコ遊技機】受理75件、結果交付74件、適合42件、適合率56.8%

【パチスロ遊技機】受理80件、結果交付79件、適合19件、適合率24.1%

 パチンコ遊技機に関しては今年に入って初めて適合率50%を超え、パチンコ業界が特に問題視していた、パチスロ遊技機に関しても、1月以降最高の適合率となっている。

 この5月の保通協の適合状況をパチンコ業界は注目していた。風営法議連への働きかけが奏功するのか。そして結果は「改善」された。この事実をもって、業界関係者の中には「政治への働きかけは間違っていなかった」とする声が広がっている。

 しかし本当にそうなのだろうか?

 そもそも保通協の遊技機試験は厳格なルールの元で行われている。

 勿論、試験の内情については徹底して秘密が保持されているため一般人には知る由もない。一部業界関係者の中には「恣意的な試験をしているのでは」と穿った見方をする人もいて、その噂がまことしやかに囁かれたりもするが、しかし保通協のその試験方法は法文等で明確化されており、まして保通協は警察庁の管轄でもあることから、恣意的な試験操作は「都市伝説」の域を出ない。

 ちなみにパチスロ遊技機の1月以降4月までの適合率は、以下の通りだ。

1月:受理76件、結果交付70件、適合9件、適合率12.9%

2月:受理78件、結果交付92件、適合15件、適合率16.3%

3月:受理76件、結果交付65件、適合15件、適合率23.1%

4月:受理78件、結果交付66件、適合10件、適合率15.2%

 それ以前の適合状況も見ても、確かにここ1年間は、特にパチスロ遊技機の適合状況が悪かった。しかしそれは新たに運用された遊技機則と、メーカー開発者との擦り合わせの期間であったとも言える。直近4カ月の結果を見ても、3月には適合率が23.1%となっており、今回の適合率24.1%と大差ない。ちなみに2018年の1年間の適合率は20.4%である。

◆政治活動は業界の未来を拓くのか?

 5月度の保通協の適合状況。

 いわば、パチンコ業界の政治への働きかけが奏功したともとれるし、そうでないともとれる、そんな結果に落ち着いた。保通協は公的な試験機関である。政治家先生の声ひとつで結果が大きく違えるのであれば、もうそれは試験機関としての機能を失している。

 保通協(=警察庁)の立場から言えば、そこに何かしらの意図が働いた訳ではないだろうが、結果的に「絶妙な適合率」に着地したと思っているだろう。

 一方この結果をもって、もしパチンコ業界が「政治のおかげ」と思っているのであれば、それは尚早な判断である。パチンコ業界の政治活動が活発化の兆しを見せているが、なんでもかんでも「政治のおかげ」とするのは、市場規模だけ見れば超が付くほどの一大産業としての品格と知見が問われてしまう。

◆低適合率は新規則や不明瞭な試験方法だけが問題か?

 最後に、本稿の本筋とは違うがあえての一言を。

 パチンコ業界が、保通協の適合率が極めて低いこと、その理由を、保通協の試験方法の不明瞭さや、依存症対策を称してがんじがらめに縛った新しい規則にのみ求めるのはいかがなものか。

 世論の後押しを受け、射幸性の抑制を当面は受け入れざるを得なかったメーカーが、それでもギリギリまで射幸性を高めようとしている結果だとは受け取れないだろうか。またそのように高い射幸性を有する遊技機しか購入しなくなったホール側にも問題があるとは考えられないだろうか。

 メーカーが射幸性の高さを追求するのも、ホールがそのような遊技機を優先的に購入したがるのも、結局はユーザー(客)が求めているからだと開き直る業界関係者も少なくない。その結果どうなったか。業界の市場規模は縮小し、パチンコファンはみるみるうちに減少した。

 それが本当の結果だ。

<文・安達 夕 @yuu_adachi>

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