ひとり歩きする「女性活躍」。専業主婦も共働き女性も、なぜ辛い?

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◆日本が抱える「主婦に依存した社会構造」の問題点

 ワンオペ育児、マミートラック、専業主婦の苦悩。日本では子育て中の女性が置かれる環境は厳しい。政府が掲げる「女性活躍」とはほど遠い現状だ。

 男性の立場も苦しい。育児休業を取得した男性が復職後に嫌がらせを受けたり、理不尽な転勤を命じられたりするなど、会社と家庭の板挟みになる例も少なくない。

 現在の日本では、働き方を含め「家事と育児を家庭で担ってくれる主婦を前提とした」仕組みがまかり通っており、女性はたくさんの負担を強いられている。

 6月中旬に発売された『なぜ共働きも専業もしんどいのか 主婦がいないと回らない構造』(PHP新書)では、日本が抱える「主婦に依存した社会構造」の問題点に触れている。

 著者は、子育てや働き方改革についての記事を多く執筆するジャーナリストの中野円佳氏。

 本書では、専業主婦、共働き、男性がそれぞれ直面する「しんどさ」が生じる背景を見つめ、どうすればよいかを考えている。

◆三人分の無償労働をする日本女性

 中野氏は現在、夫の転勤にともないシンガポールに住んでいる。同国では共働き世帯が多いが、ヘルパーや外食などを使い、「日本よりもしなやかで余裕があるように見えた」という。同時に、日本女性が抱える負担を痛感した。

「多くの日本人の女性は三人分の仕事をしているように見えた。つまり、母親や妻としての役割に加え、他国であればメイドなどに外注している家事労働の二人分、あるいは不在がちな父親の分も含めて三人分の無償労働をしている」

 文字にして眺めるとかなりのインパクトがあるが、これが現実だ。それどころか、社会的には「当たり前」とされている風潮すらないだろうか。

 一方の男性は、「一家の稼ぎ主」であるプレッシャーから、仕事をして家計を支える方に傾き、家庭に関わる時間は少なくなる。職場の上司が「専業主婦の妻がいるので仕事だけに集中すればいい」との考えを持っていれば、早く帰れない。そうすると、専業、共働きを問わず女性が家庭のことを一手に引き受けることになり、負担が増していく。

 2016年社会生活基本調査によれば、日本人の6歳未満の子供を持つ夫婦の一週間の家事などの時間(育児含む)は、男性が1.23時間に対し、女性は7.34時間と、大きな差が開いている。女性偏重の現状が浮き彫りとなっている。

 男性がこれだけ「家事や育児をやらずにすむ」のは、女性がサポートするのが当然、との考え方があるためだろう。

◆「転勤」が専業主婦を生み出す

 妻のサポートありきの働き方の最たる例は、「転勤」だろう。家庭の事情を踏まえず、専業主婦のサポートを前提としたやり方だ。企業の中には「家族帯同が原則」とするところや、妻の就業を阻むところもある。妻は夫のケアをする存在でいればいいと言っているようなものだ。

 そのような社会的な背景もあり、それまで共働きだった場合でも、やむをえず退職して夫の転勤先に行く女性は多い。再就職のための就活や保活はスムーズに行くとは限らず、専業主婦としての生活を長く送ってしまう。

 一方の男性も稼ぎ主としてプレッシャーがあり、失業を恐れて転勤命令を拒みにくい。とりわけ、専業主婦の妻を持つ男性は転職しにくい。近年では転勤に際し、企業が従業員の家庭事情に配慮するケースは増えている。しかし、仕事第一主義で働いてきた上司から「家庭の事情を持ち込むなどけしからん」と思われ、評価や昇進に響く懸念はある。

 前時代的な「主婦ありきの働き方」は、夫、妻の両方に重くのしかかり、暗い影を落としている。

◆日本女性の家事レベルは、異常に高い

 中野氏はまた、日本人女性の「家事レベルの高さ」も、しんどさの原因となっていると見る。

「日本人女性の家事レベルは異常に高い。しかもそれを自分でやらないといけない感は凄まじい」

 部屋を毎日掃除する、料理は手作り、誰も来なくてもきちんとしておくなど、高水準な家事をしなければならないとの考えが根強い。専業主婦が主流だった親世代をロールモデルとし、現代の女性たちも同じレベルを目指してしまう。2児を育てるワーキングマザーは、専業主婦だった実母から、「毎日掃除機だけではなく雑巾がけもするように」と言われ、それを守っているという。

 女性が家事負担を手放せない別の理由として、女性自らが「家事と育児にしがみつく」心理状態を中野氏は挙げる。

「離職によってアイデンティティの一部または全部を失った女性たちが、自分の価値を見出そうとするため家事労働にのめり込むではないか」

 本当は仕事を継続したいのに、やむをえず専業主婦をしている女性が、子どもとつきっきりの日々や世間からの隔絶で孤独感を覚えるなどして自分を見失ってしまう。そうすると、「いま自分がやっている家事・育児は、価値あることなのだ」と思い、余計にのめり込んでいく。イソップ物語の「すっぱいぶどう」の話のように、不快な事実に直面することで「認知的不協和」が起きると、自分の認識や行動を変えてしまうのだ。

◆妻が稼ぎ、夫が家事と育児をしたっていい

 では、どうすれば「主婦がいないと回らない問題」は解決できるのだろう。そのひとつとして中野氏は、状況に応じて夫婦が役割を入れ替えることを挙げる。

 本書では、妻がキャリアを継続し、夫が専業主夫にになった夫婦の例が紹介されている。状況に応じて「稼ぐ人」と「家のことをする人」の役割を夫婦間で入れ替え、乗り切っていくケースだ。

 また、ライフステージによって働き方を変えられる環境も過去よりは整っている。たとえば、週5日フルタイム勤務だけではなく、週3〜4日勤務もある。いまやネットにつなぎさえすればどこにいても仕事ができるので、リモートワークを選択する人もいる。

 それに、フリーランスなど雇用されない働き方を選択する人も増え、働き方はどんどん多様化している。仕事の間口が広がることで、子育てや転勤で離職した人が再就職や起業をしたりすることもできる。

 もちろん、新しいやり方には試行錯誤がつきもので、さまざまな問題が一気に解決することはないだろう。しかし、過去に比べれば状況は少しずつ良い方向に進んでいることは確かだ。

「主婦がいないと回らない構造」は昭和に生み出されたもの。平成が終わり、令和を迎えたいま、働き方、生き方を見つめ直すときにきている。本書は、そんなことを考えさせてくれた。

<文/薗部雄一>

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