増税で値上げの鉄道運賃。負担が一番大きい地域は?

増税で値上げの鉄道運賃。負担が一番大きい地域は?

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 今月2日、JR各社が国土交通省に運賃改定の申請を行った。つまりは“電車賃の値上げ”である。毎日鉄道を使っている人からすればこれは困ったということになりそうだが、値上げ予定日は‘19年10月1日。つまりは消費税の増税に伴うものである。各社の値上げ幅を見ても、増税分の転嫁程度にとどまっている。

◆増税分以上の値上げに

 ところが、一社だけ増税分を超えた値上げを予定している会社があるのだ。それは、JR北海道。かねてから経営難が伝えられているJR北海道が、増税幅を超えた運賃の値上げを予定しているのだ。

 鉄道に詳しいライター境正雄氏は「JR北海道は他社に先駆けて5月に運賃改定を申請していました。値上げによって悪化の一途を辿る収支を改善しようという狙いです」と説明する。

「運賃の改定率は普通運賃では平均15.7%。100kmまでは距離の区分ごとに運賃を定める対キロ区間制を導入し、乗車距離3kmまでの初乗り運賃は現行の170円から200円に。16〜20kmは現行360円から440円と80円の値上げになります。101〜200kmまではこれまでの運賃の1.1倍に、201km以上は据え置きになるので、短距離の利用ほど割高ということになりますね」

◆学生のいる家庭からは否定的な声も

 この運賃改定によってJR北海道は年間40億円の増収を見込んでいるという。そして収益の改善を図り、経営の立て直しにつなげようというのがその目論見なのだ。ただ、当然というべきか沿線自治体や利用者の間からは反発も多いとか。

「特に学生の負担が増えることが気になりますね。定期券の割引率は据え置かれるのですが、割引のベースになる普通運賃が値上げになりますから、平均22.4%の値上げになるとされています。通勤定期ならば通常会社が負担しますが、通学定期券の負担増は学生、すなわち学生さんのいる家庭の負担が増すことになります」(境氏)

 実際に子供がJR北海道を使って通学しているという千歳市民に話を聞いてみると……。

「そりゃあ困りますね。直接家計に響いてきますから。消費税増税もあるから、なかなか厳しい。まあ、JR北海道が厳しいというのはずっと言われているのでしょうがないのかなとも思いますが…」

 ただ、通学する子供がいない人は「どうでもいい」と冷たい反応。

「だってJRなんて使わないですもん。本数は少ないしすぐに止まるし。車が運転できないお年寄りとか学生さんは困るかもしれないけど、個人的には廃止されても困らないよ」(網走市の飲食店店主)

◆自動車やバスへの乗り換えが加速する

 いずれにしても、学生たちの負担が増えることは間違いないJR北海道の運賃値上げ。前出の境氏は「増収策ということでは間違いではないのかもしれないが、鉄道離れが進むのが不安」と話す。

「これまで鉄道を使っていた人が、運賃の値上げによって一層マイカーや高速バスなどに流れてしまう可能性があります。201km以上の運賃は据え置きとはいえ、札幌から旭川までも140km弱。特急と高速バスがともに盛んに走っていますから、鉄道離れが進むリスクは高いでしょう。さらに地方でも家庭の負担を軽減するためにスクールバスの導入などが進むことも考えられる。地域にとっては鉄道の利用者を確保するよりも子育て家庭の流出を防ぐほうが重要な課題ですから、スクールバス導入にはメリットも多い」

◆地域との連携に課題が

 運賃の値上げはJR北海道に限らず、多くの地方ローカル線で行われてきた。多くが赤字に苦しむ事業者の収支改善が目的である。これらは総じて沿線住民にも受け入れられているが、その背景には“おらが町の鉄道を守りたい”という住民意識もあったという。

 しかし、JR北海道は度重なる不祥事で利用者や道民からの不信感が募る一方。そうした中での値上げは、“JR離れ”を加速させるリスクがあると言えそうだ。

「経営再建が待ったなしの状況なのは理解できますが、ここ最近のJR北海道の姿勢には疑問も多い。北海道日本ハムファイターズが北広島市に新球場を建設して本拠地を移転しますが、そのアクセスのために千歳線に新駅を建設する構想がある。これにもJRは消極的なんです。まずは新球場を盛り上げることに全面的に協力する姿勢を示し、一体となった地域活性化を目指すべきところ、JRから出てくるのはコスト面などの話ばかり。沿線を取材していても、鉄道を利用した観光の取り組みを地元がJRに提案してもコストの話が返ってくるだけだとか」(境氏)

 とはいえ、JR北海道の置かれている現状は極めて厳しい。‘30年までの長期的な国の支援を受ける目論見も外れて、経営再建の状況を見て今後の支援を検討するという‘20年までの短期支援にとどまった。こうした状況で、目に見える増収策とコストカットを打ち出す必要がある。それでもそこで道民の鉄道離れを加速させてしまっては、まさしく貧すれば鈍するだ。

 果たしてJR北海道に未来はあるのか。道内の鉄道網をどう維持していくのか、日本中が本気で考えなければ、もうあとはないだろう。

<取材・文/HBO編集部>

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