「シェア」から生まれる新しいライフスタイル。人との繋がりや信用が重視される経済圏とは?

「シェア」から生まれる新しいライフスタイル。人との繋がりや信用が重視される経済圏とは?

石山アンジュさん

◆シェアリングエコノミー協会のイベントが開かれた

 数年前より欧米を中心に、シェアリングエコノミーと呼ばれる経済の潮流が台頭してきた。日本でもモノや空間、時間、スキルなどの遊休資産を生かしたシェアリングサービスが興隆している。メルカリやエアビーアンドビー、ウーバーといったサービスはその代表格と言えるだろう。

 そうした中、一般社団法人シェアリングエコノミー協会は7月2日、会員向けのミートアップを都内で開催した。IT ジャーナリストの佐々木俊尚氏や、同協会の事務局長で「内閣官房シェアリングエコノミー伝道師」も務める石山アンジュ氏らが登壇。シェアリングエコノミーの先駆者たちが次世代のライフスタイルの可能性について議論した。

◆「シェアによって個人が網の目になっていく社会になる」

 冒頭の挨拶では、シェアリングエコノミー協会の佐別当隆志常任理事が「これからは自分らしい時間を使って仕事をしていく。選択できる時代になる。民泊、ライドシェア、ミールシェア、スキルシェア等のサービス自体は増えてきたが、日本の法律が追いついてきていない」と現状の課題について語った。

 今後、法律が変われば、シェアが当たり前の世の中になるのかもしれない。

 また、佐々木氏は東京と長野、福井の3拠点を移動しながら暮らすライフスタイルを5年ほど実践している。

「現代社会は、会社という共同体がなくなり、21世紀型の新しい共同体について考える局面にきている。私自身は、会社の共同体やしがらみなどに息苦しさを感じていたので、あらゆるモノを共有するシェアリングエコノミーの考え方に注目している」

 佐々木氏にとってシェアする社会を一言で表現すると「個人が網の目になっていく社会」だという。

「人はとかくヒエラルキーによって判断して、階層や役職で人の特性を見てしまいがち。一方、シェアで繋がる人との間にヒエラルキーは存在しない。会社の組織としての枠にとどまらず、広い社会の中で人間関係を築いて繋がっていくことでネットワークが形成されていく世の中になる」

◆様々な場所に移動しながら暮らす「アドレスホッパー」という生き方

 また、定住先を持たず、様々な場所に移動しながら暮らす「アドレスホッパー」であるHOPPING MAGAZINE 編集長の市橋正太郎氏は、「私にとってのシェアは、移ろい偶然を楽しむ社会だと思う。海外へ行く時も無計画で行動することを意識していて、偶然出会う人や光景がとても刺激的に思える。たまたまの出会いがまた次の出会いを生む。これがアドレスホッパーとして生きる魅力」と自らの体験をもとに述べた。

 もともとアドレスホッパーという言葉は、旅の楽しみ方にあるアイランドホッピングから着想を得たという。あえて予定を決めずに行動し、偶然の出会いを楽しむ。

 広く浅く人と繋がっていき、家を持たない暮らしを実践する市橋氏は、「私が実践する生き方で大事なのは、偶然を通して得た情報や繋がり。会社員の時にはない、人間関係の中で仕事をしている感覚がある。こうしたライフスタイルもあるんだということを、社会にもっと提案していきたい」と述べた。

◆「人と共有することで得られる新しい体験が人生を豊かにする」

 石山氏は著書『シェアライフ 新しい社会の新しい生き方』(クロスメディア・パブリッシング、2019年)の中で触れている、シェアで変わる働き方や暮らし方についてこう説明した。

「シェアするライフスタイルを実践することで、暮らし・仕事・豊かさの尺度や見方が変わる。シェアハウスで出会う人との交流や、スキルやモノを持っているだけではなく、人と共有することで得られる新しい体験が人生を豊かにするきっかけになる」

 昔は、地縁、血縁、所属意識に基づいたコミュニティで社会が形成されていた。しかし、シェアハウスや多拠点をハブにした居住スタイルなど、シェアライフを送ることによって新しい居場所ができる。

 また、消費・趣味・価値観に基づいたコミュニティが形成されることにより、豊かさの象徴である「お金」という従来の概念から「人との繋がりや信用」へパラダイムシフトが起こっている。

 シェアリングエコノミーがもたらすライフスタイルや価値観の変化。そう遠くない未来に、シェアすることが当たり前になる社会も到来するだろう。

<取材・文/古田島大介>

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