「共同親権」はモラハラ男が元妻を支配するツールになりかねない<モラ夫バスターな日々20>

「共同親権」はモラハラ男が元妻を支配するツールになりかねない<モラ夫バスターな日々20>

<まんが/榎本まみ>

◆弁護士・大貫憲介の「モラ夫バスターな日々」<20>

 40代の女性が相談に来た。第1子を妊娠したころから、夫が怒鳴るようになったという。毎日のように怒鳴られてきた苦労が顔に刻まれていて、モラハラの凄惨さがわかる。

 私が、「お辛そうですし、別居、離婚をお考えになった方がいいのではないですか」と水を向けたところ、女性は、「そんなことすると、主人が怒ります」と怯えた。

◆暴力団員や社長には逆らえないくせに、妻は虐待するモラ夫

 モラ被害妻たちは、日常的に、夫から、怒鳴られ、ディスられ、怯えてしまう。そして、怒鳴られないよう、怒らせないよう、細心の注意を払うようになる。それでも、モラ夫は、妻を怒鳴り、怒る。

 自分が失敗して怒らせたと思い込み、泣き出す妻もいる。モラ夫は、「泣くんじゃない! 俺がイジメたみたいじゃないか。泣きたいのは俺のほうだ!」などと怒鳴り、涙を封じようとする。涙が怖いのだろう。実は、殆どのモラ夫たちは、気が小さいのだ。

 モラ夫は、なぜ怒るのか。それは、他者を支配し、コントロールするのに、怒りが最も安易な手段だからである。怒りは、決して、感情が暴発して発動するものではなく、計算の上に発動されるものである。

 例えば、列に割り込んだのが、女子高生であれば怒って注意する人も、怖い暴力団員であれば注意しない。社長が酷いことを言っても怒らないが、それが部下なら躊躇しない、そういう人は多い。皆、計算して怒っている。

 モラ夫たちは、妻を支配し、コントロールするために怒る。したがって、モラ夫の怒りの責任は、妻にはない。妻に落ち度があってもなくても、モラ夫は、怒る。その邪まな意図に問題がある。

◆夫恐怖症に陥る妻たち

 日常的にモラ夫の怒り、怒鳴り声に接していると、被害妻は、恐怖症に陥る。モラ夫の顔が少し歪んだだけで、怒りの兆候を感じただけで怯える。足音が、咳払いが聞こえただけで、顔を見ただけで、動悸がする。ドアのガチャ音、モラ夫の帰宅時刻が近づくと口から心臓が飛び出そうになる。

 そんな妻たちも、別居し、安全が確保されると、恐怖症は多少収まる。安全な日々が続くと、少しずつ、辛かった日々を忘れていくこともできる。しかし、試練は続く。モラ度が高いほど、モラ夫は、離婚に反対する。弁護士を入れての離婚協議や離婚調停を経ないと離婚できないことも多い。

 2016年の離婚総数は、216,798件、離婚調停は47,717件、離婚裁判は8,807件であった。つまり、離婚の5件に1件強は離婚調停を経ている。

 まず、調停自体が被害妻にとっては試練である。同じ家裁にいるだけで、不安が襲う。モラ夫の姿が見え、声が聞こえようものなら、不安は、一気に高まる。調停委員は、50代、60代であり、モラ文化のなかで生きてきたので、モラ夫に同情的であることも多い。

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◆モラ夫が利用しかねない「共同親権」の危険性

 子どもがいると、面会交流の問題もある。家裁は、夫婦間の問題と親子の問題は別問題と言い張る。家裁の見解は、家族が相互に影響をし合っていることを無視している。母が父からイジメられていることを目撃している子は、心が傷つけられ、トラウマを負う。面前モラが続くと、脳が損傷し萎縮し、その後の心身の成長に重大な悪影響を及ぼす。

 面前モラ、面前DVがあっても、子が面会を嫌がっていても、家裁は、面会を強力に推進する。

 私は、これを面会原理主義と呼んでいる。子と同居している母が面会を拒否すると、家裁調査官による「意向調査」が行われる。

 約2時間、同居親は、調査官との個室面談を強要される。意向調査では、面会交流に応じない理由を繰り返し問われ、面会交流の意義が延々と説かれ、どのように面会交流を行っていくかを執拗に訊かれる。つまり、圧迫面接である。

 或るモラ夫は、別居後、1歳の子との面会を執拗に要求し、妻は面会に応じた。しかし、子どもに声をかけることも、抱き上げることもなく、1時間程、妻に話し続けた。このモラ夫は、離婚に反対し、再同居を求めている。

 ところで、別居後の「育児」への関与等のため、離婚後共同親権への法改正が提案されている。これは、いかにも危険である。様々な場面で、元夫の同意が必要になる。

 元夫が、進学先や普段の生活での自分の意見を通そうと、元妻の家庭に介入することは目に見えている。子ども部屋の点検を要求するかも知れない。つまり、離婚後共同親権は、モラ(元夫)の支配のツールになる。

◆夫と縁が切れるならば、財産分与も慰謝料もいりません

 さて、冒頭の女性は、数か月間迷った末、別居、離婚を決断した。離婚条件を尋ねたところ、財産分与も慰謝料もいらないという。

「今後の生活もあるし、財産分与も慰謝料もあなたの権利ですよ」と説得したが、夫が怒るのが怖い、一日も早く、夫と縁を切りたいという。

 この妻は、非正規で働き、月給は10数万円である。家賃、水光熱費を払うと殆んど残らない。他方、年収約1000万円の夫は、「離婚理由が分からない。(妻は)頭がおかしくなったのではないか。精神科医に診てもらってほしい」と述べた。

 何が妻を追い詰め、結婚生活を破綻させたのか、余りに明らかであろう。

<文/大貫憲介>

【大貫憲介】

弁護士、東京第二弁護士会所属。92年、さつき法律事務所を設立。離婚、相続、ハーグ条約、入管/ビザ、外国人案件等などを主に扱う。著書に『入管実務マニュアル』(現代人文社)、『国際結婚マニュアルQ&A』(海風書房)、『アフガニスタンから来たモハメッド君のおはなし〜モハメッド君を助けよう〜』(つげ書房)。ツイッター(@SatsukiLaw)にてモラ夫の実態を公開中

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