客からの悪質クレーム「カスハラ」はれっきとした犯罪。「レジを蹴るだけで暴行罪になる可能性も」

客からの悪質クレーム「カスハラ」はれっきとした犯罪。「レジを蹴るだけで暴行罪になる可能性も」

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◆「悪質クレーム、許さない」、UAゼンセンが啓発動画を公開

 顧客から従業員への過剰なクレームや迷惑行為である「カスタマー・ハラスメント」(カスハラ)。社会問題となって久しいが、法規制や対策はなかなか進まないのが現状だ。

 そうした中、流通業やサービス業の労働組合が加盟する「UAゼンセン」は今年6月、「悪質クレームを、許さない」という啓発動画を公開した。スーパーで女性の店員を怒鳴り散らすクレーマーの行為は、犯罪に当たる可能性があると啓発する内容になっている。

◆「惣菜の価格を確認しに行こうとして3時間説教された」

 UAゼンセンは2017年、小売店や百貨店などの流通部門で働く人を対象に実施した調査の結果を発表した。回答した5万878人のうち73.9%の人が「業務中に来店客からの迷惑行為に遭遇したことがある」と答えた。

 迷惑行為の内容は、「暴言」が27.5%で最も多く、「何回も同じ内容を繰り返すクレーム」が16.3%。他にも、威嚇・脅迫が14.8%、長時間拘束が11.1%、セクハラ行為が5.7%となっている。

 具体的にはどのような被害にあっているのか。アンケートには、次のような回答が寄せられた。

「商品の在庫を尋ねられ、在庫が無い旨お伝えしたところ、『売る気がないんか、私が店長だったらお前なんか首にするぞ』と延々怒られました」

「惣菜の価格が間違っていると言われ確認に行こうとしたら、待たせるなと怒鳴られ3時間説教され続けました」

「『電話番号教えて、外で仕事終わるのを待っている。ご飯行こう』など、2年ほど同じお客さまから言われ続けていますが、お断りし続けています」

「酔った客に、ここで酒を飲むからコップをよこせと言われ、店内での飲酒をお断りしたところ、大騒ぎし、殴られそうになったので手をつかんだら蹴られました」

 UAゼンセンの松ア基憲(もとのり)弁護士は、こうした行為が犯罪に該当すると指摘する。

「金品の要求は恐喝罪に当たりますし、土下座を強要すれば、強要罪に当たります。また、直接体に触れなくても、店員に向かってレジを蹴るだけで暴行罪になる可能性があります。さらに長時間に渡り店員にクレームを入れることで業務が滞ったり、周囲のお客さんがお店に対して嫌な感情を抱いたりすれば、威力業務妨害罪に当たることもあります。以前、店員に土下座させた写真をSNSに投稿した人がいましたが、この行為は名誉棄損罪に当たります」

◆「サラダバーに小バエで6時間拘束」

 さらにUAゼンセンは2018年9月、外食・タクシー・介護業界などで働く人を対象に実施した調査の結果を発表。3万396人のうち73.8%が「迷惑行為に遭遇したことがある」と回答した。

「『あんたブサイク!麻薬やってるやろ!』訪問すると麻薬!麻薬!と言われます。もちろん麻薬はやっていないのに、毎回言われるので訪問前は胃がきりきり痛みます」(介護)

「オレは市長と仲が良いから、おまえなんかいつでも辞めさせる事が出来るんだ!と繰り返し怒鳴られた」(医療)

「通行禁止道路への通行強要。断ると『殺したろか』と言われた」(タクシー)

 また飲食店でも、セクハラや過剰なクレームが相次いでいるようだ。

「サラダバーに小バエが飛んでいたという理由で6時間以上の拘束」(外食)

「顧客が車のシートに持ち帰りした天丼のタレがこぼれたという理由で洗浄代2万円を要求してきた」(外食)

「レジにて接客中、顧客から『いっぱい食べて夜がんばらなくちゃ…』『昨夜もがんばっちゃって2回、3回…』『あなたとなら何回がんばれるかな…』など言われた」(弁当)

◆国民民主党は「悪質クレーム対策推進法案」の制定を掲げる

 こうした被害を防ぐためには、どのような取り組みが有効なのか。国際労働機関(ILO)は今年6月、職場等での暴力やハラスメントを禁止する初の国際条約を採択した。この条約は、顧客やサービスの利用者、患者等の第三者がハラスメントに関与する場合があること認めている。これを日本政府が批准し、条約に沿った国内法を整備すれば、カスタマー・ハラスメントへの対策が一歩前進するはずだ。

 また、国政レベルでも、この問題に取り組もうという動きが出ている。国民民主党は今年2月、「悪質クレーム対策推進法案」を党の総務会で了承。企業に対策マニュアルの作成を求め、政府には悪質クレームの実態調査を行うこと、消費者向けの啓発活動をすることを要求する内容の法案だ。

 同党から参院選に立候補した田村まみさんもカスハラの問題に積極的に取り組む。自身がイオンで働いてきた経験から、カスハラの深刻さを実感しているからだ。「店内、売り場は私たちの職場です。カスタマー・ハラスメントは職場でのハラスメントに他なりません。必ず法規制を実現します」と意気込みを見せた。

<取材・文/HBO編集部>

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