薬物依存や副作用が危惧されるベンゾジアゼピン系薬剤、世界的な注意喚起アクションが行われる

薬物依存や副作用が危惧されるベンゾジアゼピン系薬剤、世界的な注意喚起アクションが行われる

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◆副作用が問題視されるベンゾジアゼピン系の睡眠薬・抗不安薬

「あなたはストレスで眠れなかったことはありますか?」

「日本人の49.9パーセントに不眠症の疑いがある」と日本睡眠科学研究所は分析している。しかし気軽に処方される睡眠導剤や抗不安薬によって、薬物依存に陥る危険性があることは、ほぼ知られていない。

 特にベンゾジアゼピン(BZD)系睡眠薬や抗不安薬は依存性が高く、筋萎縮・転倒・骨折・眼瞼痙攣(※がんけんけいれん)などの副作用が国際的に問題視されている。

(※まぶたを閉じる筋肉が、自分の意思とは無関係に痙攣する病気)

 世界保健機構(WHO)が1990年、「BZD系薬剤の服用は30日まで」と提言。欧米諸国では処方制限され、イギリスではBZD系薬剤専門の減薬離脱施設ができた。

◆日本は世界2位のBZD系薬剤消費国

 2011年の国連レポートでは、日本がベルギーに次いで世界2位のBZD系薬剤消費国であることが明らかになった。その消費量は中国の45倍に相当し、日本の成人の20人に1人が摂取している計算になる。

 日本のBZD系薬剤のうち35%は精神科や心療内科で処方され、残りの65%は精神科以外から処方される。向精神薬だと知らされずに、肩こりや皮膚の薬として処方される例もある。

 消費量が日本の6分の1の米国では、BZD系薬剤の大量摂取による死亡数は年間1万人超。被害者による訴訟が多発している。

 米国ではオピオイド系鎮痛剤が薬物中毒を誘発したとの訴訟の賠償金により、米製薬会社インシス・セラピューティクス社が2019年6月に経営破綻。現在もジョンソン&ジョンソン社などが訴えらえている。

 米国連邦政府研究機関、国立薬物乱用研究所(NIDA)は、オピオイド系鎮痛剤の大量摂取者の30%がBZD系薬剤を処方されていると発表。「BZD系薬剤との併用が、オピオイドの危険性をさらに高めている」とトロントのセントマイケルズ病院ニカシング研究所のニコラス・ヴォゾリス博士も警告している。

 BZD系薬剤の薬害は日本ではどの程度あるのか。日本では統計自体が存在しないため、正確な把握ができていない。

◆服用を続けて、歩行機能を失うほどに衰弱

 毎年7月11日は「世界ベンゾ注意喚起の日」とされ、アメリカ・フランス・デンマークなど世界同時アクションが行われている。日本でも、厚生労働省にて医薬生活衛生局、社会援護局、障害保健福祉部、精神・障害保険課の課長補佐はじめ診療報酬部門の職員等5名と、25名ほどの当事者や支援者が1時間半にわたって対話を行った。

 呼びかけたのは、在日ニュージーランド人のダグラス・ウェインさん。ダグラスさんは2000年、日本の耳鼻咽喉科で中耳炎と診断され、処方された薬の中にBZD系向精神薬があった。

 服用を続けていたところ、ダグラスさんは歩行機能を失うほど衰弱して「BZD中毒」と母国で診断された。その後、断薬治療やリハビリに努め、回復までに10年かかったという。日本で最高裁まで闘って敗訴したものの、現在まで世界中にBZD問題を伝える活動を続けている。

https://youtu.be/npfG6uCeFlY

◆BZDは「ハイリスク・ハイコスト・マイナスリターン」

 光線過敏症の当事者、くるみさんは全身黒づくめの服装で、室内でも帽子とサングラスを手放せない。彼女は、BZDの副作用と思われる目の異常を訴える患者会を立ち上げた。

「(BZD系薬剤によって)眼瞼痙攣という目の症状が起き、暗い部屋から外に出られなくなります」(くるみさん)

 辛いのは、BZD系薬剤を飲み続けて症状が出たからといって、急に薬を止めるとさらに悪化するということだ。

「理想の医療は、『低リスク・低コスト・ハイリターン』しかし、BZDは『ハイリスク・ハイコスト・ノーリターンよりもさらにマイナス』。お金の無駄遣いなんです。日本の財政も大変な中、健康保険料を納めている国民の皆さんも、この問題の被害者です」(くるみさん)

◆「薬を止めたいのに止められない」恐怖

 化学メーカーに勤務する田中さん(仮名・男性)は、20年前にストレスから心療内科を受診、BZD系抗不安剤のソラナックスを処方された。日常的に服薬を続けた結果、4年前に精神的ストレスを感じて早朝覚醒し、目が開けられないという症状に陥った。

 薬のせいかと考え、同じくBZD系のセパゾンに変えてみたが、猛烈な恐怖感が襲ってきていっこうに症状は改善しない。1か月入院していったん断薬に成功したが、退院後9か月して再服薬するようになった。

「家族も会社も、私が病気だからと投薬に疑問を感じていない。体調悪化が進んで孤独と不安を感じる。断薬に寄りそってくれる施設がほしい」(田中さん)

 日本では2017年3月に独立行政法人(独)医薬品医療機器総合機構(PMDA)が、根拠のないBZD継続投与、長期使用の禁止と急な断薬を控えるようすすめる勧告書を医療施設に配布した。

 2018年2月には、向精神薬の長期処方や多剤処方の診療報酬が改定された。しかしこれも、諸外国が「処方〜減薬期間あわせて4週間」で処方料・処方箋料を減額するのに対し、日本は「1年以上長期処方の場合」と基準が甘い。

◆「投薬が新たな精神疾患を生む事実」を隠蔽!?

 なぜ日本のBZD系薬剤対策は遅れているのか。10年間当事者支援を続け、米国国家認定減薬カウンセラーの資格を持つ藤永マキさんはこう分析する。

「うつや不眠は誰の身にも起こりえますが、相談した医師によって診断名がつけられると、薬漬けが始まる。多くの人は医師を信じますし、精神障害への日本社会の偏見もあります。そのため、疑問を持っても声をあげにくい。こういった風潮を利用して『投薬が新たな精神疾患を生む事実』を、国と官僚と利権団体が隠蔽しているのです」

 ダグラスさんは「日本でもBZD系薬剤を処方された人たちの3年後、6年後を調べ、実態調査をするべき」と訴える。

 日本では近年、中枢神経系に作用する薬剤の使用が急激に増えている。例えば、「ブラックボックス警告」(※)表示を義務づけられているADHD治療薬、ストラテラの消費量は、8年間で50倍にも増加している。(※米食品医薬品局(FDA)による、処方薬のリスクについての最も高いレベルの警告)

 高齢者は肝機能が低下しているため体内に薬が残りやすく、長期服薬した高齢者の認知症発症率や交通事故率が上がるという研究結果もある。子どもから現役世代、高齢者まで、だれもが向精神薬の薬害と隣り合わせの日常を生きている。まさに日本の国民病と言っていい。

 8月23日の薬害根絶デーには、薬害エイズ、ワクチンなどの薬害当事者と向精神薬薬害当事者が厚生労働省前でリレートークを行い、厚生労働省大臣に書面を渡す予定だ(一般参加も可能)。

 偏見を超えて、国民全員が向精神薬とのつき合い方を見直す時期にきているのではないだろうか。

※独立行政法人医薬品医薬機器総合機構ではBZD系薬剤副作用の実態を調べる患者報告をウェブサイトから集めている。

※原稿内の記述について、「薬害訴訟による経営破綻はアメリカでのオピオイド系ではないか」とのご指摘をいただきました。誤解を与える表現だったことをお詫びいたします。追記・修正いたしました。

<文・写真/増山麗奈>

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