妻にだけ過剰な負荷を強いる、日本の夫婦の非対称性<モラ夫バスターな日々22>

妻にだけ過剰な負荷を強いる、日本の夫婦の非対称性<モラ夫バスターな日々22>

まんが/榎本まみ

◆弁護士・大貫憲介の「モラ夫バスターな日々<22>

 私の事務所に来て、殆どの女性相談者がする質問がある。先日も、30代の女性相談者が質問した。

「私の夫はモラ夫ですか」

 聞くと、ほぼ毎日のように夫にディスられているらしい。夫は、帰宅すると、家事の不足を探して、指摘し、非難するとのことである。

 まず、言わなければならない。夫にも、当然、家事、育児の責任がある。床の汚れに気付いたなら、自分で拭けばよい。その際に、妻を睨む必要も、殊更にため息をつく必要もない。汚れを見つけたから拭く、ただそれだけのことである。

 専業主婦の妻が、家事育児の大半を引き受けてくれているのであれば、それを感謝するべきであって、その不足を非難するのは全くの筋違いである。

◆モラ夫は妻に感謝しないくせに、自らへの感謝だけ求める

 私は、数多くの結婚案件も扱ってきた。夫婦関係について悩んでいる方々の相談も比較的多い。これらの案件を扱う弁護士は極めて少数だろう。さらに多くの離婚案件も扱ってきた。

 その経験から、日本の夫婦が非対称であることを知っている。

 モラ夫は、妻に感謝を求める。「誰のおかげで喰えてる」と吠える夫から、オムツを替えて「俺、育児してる」と妻や周囲の称賛を求めるモラ夫まで、まるで幼児のようである。風呂を洗うと、洗ったよとアピールするモラ夫も少なくない。

 他方、日本の妻の殆どは、「誰が食事を用意したか考えたことがあるのか」とは訊かない。パートに出ても、「私、○○万円稼いだよ」とアピる妻は少数だろう。仮に、そんなことをアピれば、モラ夫から、「は?何言ってんだ、偉そうなことは俺くらい稼いでから言え」と逆襲されてしまうだろう。

 そして、多くの妻は、夫が働いていることをねぎらい、子どもたちにも父親への感謝の気持ちを教える。夫婦仲が悪くなっても、なお、家計を支えてきてくれたことへの感謝を忘れない妻は多い。

 他方、モラ夫は、日常的に妻の家事の不足を指摘し続ける。子どもに対してまで、ダメな母親であることを言い募るモラ夫までいる。仲が悪くなると、妻への罵詈雑言は凄まじい。

◆モラ夫にとって結婚とは「俺様専用の女中を得ること」

 文化的社会的規範においても非対称である。

 夫への服従を教える「女大学」(おんなだいがく)や良妻賢母主義は存在するが、その逆の「男大学」(おとこだいがく)は存在せず、良い夫を推進する主義もない。

 仮に、ある女性が「モラ妻」だとしても、そこには、モラ夫の場合と異なり、社会的文化的規範などの背景事情は存在しない。つまり、夫イジメと妻イジメは、その原因において、全く異なる現象なのである。

 なぜ、ここまで非対称なのか。仮に、性別役割分担を前提としても、日本男性の横暴は目に余るというべきである。

 女性にとって、結婚とは、幸福な家庭を築くパートナーを得ることである。

 ところが、モラ夫にとって、結婚とは、性交渉を含め、俺様の身の回りを世話する俺様専用女性を得ることである。妻は、「俺のおんな」であって、従属物である。

 したがって、妻に対しては、俺様の気持ちのよい家庭環境の提供を求める。熱を出して妻が寝込んで、夕食が用意されていないと、舌打ちをし、「役に立たないおんな」と罵るモラ夫までいる。

 すなわち、日本男性と日本女性では、結婚に求めるものが違うのである。日本において、生涯未婚率が右肩上がりで、少子高齢化が進むのは、当然の結果というべきである。

 なお、モラ男は、結婚により俺様ワールドを手に入れるので、同居や結婚に強い憧れをもっている。

 結婚願望が強い男の全てがモラ男とは言い切れないだろうが、かなりの高い確率でモラ男であろう。結婚を男の責任感の現れと捉えるのは極めて危険である。同居、結婚を急かし、或いは、モラ臭のするプロポーズをされた場合、モラ男かどうか観察し、モラ識別眼のある年配者に適切なアドバイスを求めるなどモラチェックが必要である。

◆妻を日常的に罵倒する夫は、モラ夫です

 さて、冒頭の事例に戻ろう。相談の女性は、自分の家事も完ぺきではないから、ディスられても仕方ないかも知れないと言った。

 私は、「いや、それは、違う」と思わず漏らした。妻をディスり続けるのは、自らを支配者、妻を従属者と位置づけ、「俺に仕えて当然」という価値観が夫に深く内在化しているからこそである。

 私は、試しに、「あなたをディスる以外には、彼とは、どんな会話をしていますか」と相談者に訊いた。相談者は、若干考え込んでから言った。

「そのほかには会話はありません」

 そんなモラ夫と夫婦生活を続けたら、遅かれ早かれ心身を病む。我慢しないで、早く離婚し、経済的自立を目指すのが正解だろう。

【大貫憲介】

弁護士、東京第二弁護士会所属。92年、さつき法律事務所を設立。離婚、相続、ハーグ条約、入管/ビザ、外国人案件等などを主に扱う。著書に『入管実務マニュアル』(現代人文社)、『国際結婚マニュアルQ&A』(海風書房)、『アフガニスタンから来たモハメッド君のおはなし〜モハメッド君を助けよう〜』(つげ書房)。ツイッター(@SatsukiLaw)にてモラ夫の実態を公開中

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