男性も生きづらい現代社会。もっと楽になるために必要な考え方とは

男性も生きづらい現代社会。もっと楽になるために必要な考え方とは

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 育児によるキャリアの中断や復職の難しさ、医学部入試による女性受験者の差別など、女性の生きづらが注目されている。しかし、男性の葛藤にはあまり焦点が当たっていない。

 知らず知らずのうちに学習した「男はこうあるべき」との考えは、男性の生き方の選択肢を狭め、苦しみの原因となってしまう。

 いったいどうすれば、男性はもっと楽に生きられるのか。男性学の第一人者・田中俊之氏の新刊『男子が10代のうちに考えておきたいこと』(岩波ジュニア新書)には、それらのヒントが書かれていた。

◆競争に勝ち、達成によって男らしさを証明する

 そもそも、「男らしさ」とは何を指すのか。田中氏は「競争を優位に進めるために求められる特性」と定義している。

 受験、就職、社内の出世レース、結婚など、性別を問わず人生には競争がついてまわる。だが、とりわけ男性には「勝ち続けること」が求められやすい。

「どのような形で能力が発揮されるにしても、競争を通じて社会のなかで価値があるとされている目標を成し遂げること、つまり、男性は達成によって自らの<男らしさ>を証明できるのです」

 難関大学に進学後は一流企業へ就職し、高いポストと収入を得る。そうなれば、他の男性よりも優位に立ち、結婚しやすいのは事実だ。だが、みんながこの「勝ちパターン」を得ようとすれば、競争は激しくなる。

 どんなことでも「達成」できれば「男らしい」と思われる。しかし、競争に破れたり、男性が歩むべき道から外れた生き方をしたりすれば、その男性は「男らしくない」と見なされてしまう。

◆男性最大の苦しみは「働き続けること」

 男性にとって「仕事」は大きな関心ごとであり、「達成できない」状態に陥ったときのストレスは大きい。田中氏も、

「現代の日本で、男性だからこその不自由で最大のものは、四〇年にわたって働くというルールです」

と、仕事の負荷を強調する。

 「男は仕事」という性役割を前提とした現在の社会システムでは、男性が大学卒業後から定年まで働き続けることが「普通」とされている。40年間、途中で長い期間休むことは想定されていないため、社会人になった男性は「とにかく働くしかない現実」に直面し、葛藤する。

 結婚して家庭を持てば、「働くしかない現実」はいっそう強まる。一般的には男性の賃金の方が高いため、一家の稼ぎ手としてのプレッシャーは大きい。

 満員電車や長時間労働を嫌ったり、いやおうなしに命じられる転勤を断りたいと思ったりしても、そうした「男性なら当たり前にしていること」に慣れないと社会人失格の烙印を押されてしまう。

 働くしかない生活を送れば、家庭で過ごす時間は短くなり、家事や育児にほぼかかわれない。仕事を通じた人間関係しか持たない男性は、定年後には家庭にも地域にも居場所がなくなり、孤独な暮らしが待っている可能性がある。「働くことしかしなかった」人生の代償を、定年後に払わなければならなくなるのだ。

◆自分が納得する生き方を選ぶ

 では、男性が生きやすくなるにはどうすればいいのか。田中氏は、「比較をやめること」を提案している。

「競争に煽られる人生は、強敵に勝つと、息もつかせず、さらなる強敵が現れるといった感じです。マンガなら面白いかもしれませんが、自分の人生としてはいかがですか。『難関大学』に入れば、確かに親や周囲は『安心』するかもしれません。でも、他人との比較でしか自分の価値を測れなければ、長い人生のなかで落ち着く日は来ないでしょう」

 比較をやめるときに大切なこととして、田中氏は「見栄とプライド」について触れている。

 見栄とは、他人よりも地位が高い、収入がある、良い腕時計を着用している、など比較をして自分を上に見ようとすることだ。見栄に生きる男性は、誰かを見下していないと安心できなくなってしまう。

 対してプライドはどうか。田中氏は次のように説明する。

「プライドとは、何かを達成した際に、その人が成果に誇りを持つことで生まれる感情です。試行錯誤し、努力しなければプライドを確立することができません。他人との比較ではなく、自分の納得が重要になります」

 プライドを確立しても、男性が抱える悩みが解消するわけではない。しかし自分なりの価値観が明確になれば、周りと比較して優劣で落ち込むことは少なくなるはずだ。

◆自分にも、他人にも寛容になろう

 個人だけでなく、社会全体の変化も求められる。いろいろな考え方や価値観を認め、「男だから」「女だから」と性別で生き方を制限せず、多様性を許容する社会が必要なのだ。

「いかにして多様性を許容するかを考える際、寛容が重要なキーワードとして浮上してきます。分かりやすく言えば、『やさしさ』が大切だということです」

「男は定年まで働き続けるもの」「長時間労働をすべき」というふうに決めつけてしまうと、それ以外の価値観、生き方を受け付けなくなるり、社会は柔軟性を失ってしまう。

 いま当たり前のように思っている「男らしさ」とは何か。自分の人生にどう影響しているのか。それらを10代のうちに考え、さまざまな価値観を許容できる「やさしさ」を持てるようになれば、いまよりももっと生きやすくなるのではないだろうか。

 自分の中に「それは男らしくない」という気持ちが湧いてきたとき、「それは決めつけではないか」と考え直そう。そのように感じさせてくれる一冊だった。

<文/薗部雄一>

【薗部雄一】

1歳の男の子を持つパパライター。妻の産後うつをきっかけに働き方を見直し、子育てや働き方をテーマにした記事を多数書いている。

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