中年でも大丈夫。引きこもり支援団体の取り組み

中年でも大丈夫。引きこもり支援団体の取り組み

山奥の竹林を平地にして農地を造るプログラムが人気。「大変だけど、利用者に0から1をつくる楽しさを知ってもらいたい」(吉田氏)

◆引きこもりの社会復帰を促進するさまざまな支援団体の取り組み

 引きこもりの数が増加し、ますます社会問題化する一方で、彼らの社会復帰を支援する団体も存在する。不登校やニートを中心に支援をする自立支援施設「NPO法人MIRAI(ミライ)」もその一つだ。施設では自立を促す取り組みがあると講師の吉田将史氏は説明する。

「MIRAIの寮は都会の喧騒から離れた千葉の成田空港近くにあります。現在の入寮者は15人で、プログラムの質を維持するためにおおむねこの人数を保っています。内容は掃除、洗濯、炊事といった家事指導から、農業、職業体験まで。共同生活を行うことで自立心の向上を促し、労働して報酬を得る経験をすることで社会復帰後に働く自分をイメージしやすくします。20代が中心ですが、40歳前後の入寮者もいますね」

 施設職員と話し合い、社会復帰できると判断すれば卒業する仕組み。職業あっせんもあり、卒業後は定職に就く人も多いという。

◆職業体験を通じて働く楽しさを改めて実感

 厚労省が運営する就労支援サイト「地域若者サポートステーション」と連携して、パン作りやDTPデザインなど、企業での職業体験を提供するのが「NPO法人文化学習協同ネットワーク」。代表の佐藤洋作氏が意義を語る。

「例えば、パンはその日の温度や湿度によっても適切な焼き加減が変わるため、おいしく作るにはスキルと経験が必要。五感を使いながら働く楽しさを改めて感じてもらうことが、職業体験の狙いです」

 取材当日、驚いたのは利用者の明るさだ。「こんにちは!」と元気よく声をかけてくれたのだ。

「お客さんはスタッフが引きこもりだと知ると驚くんですよ。ネガティブに取られがちな引きこもりですが、きちんと居場所を提供すれば、元気に働きだせる人も多いんです。特に、うちに相談に来るのは、事情があって一度働けなくなったものの、就労に意欲を持っている人が多いです」

◆引きこもり支援を拡充しつつ進学実績の高い塾

 3つ目に紹介するのは不登校や引きこもりの生徒が対象の大学進学塾を運営する「CARPE・FIDEM(カルペ・フィデム)LLC」。一般的な学習塾と違い、教室にはゲームやマンガなどの娯楽品や、ベッドやハンモックなど寝具も置いてあり、定期的に無料で参加できる旅行や合宿も実施している。その理由を代表の大村悠輝氏は次のように語る。

「うちは単に学力の向上よりも、協調性やコミュニケーション能力の向上が主な目的なんです。そのため、生徒同士の仲を深められるような設備の導入や、いろんなものに触れる体験ができる場所の提供を心がけています」

 10代だけでなく、引きこもっていた30代が、勉強を改めてやり直し、大学進学を目指すべく入塾するパターンもあるのだとか。

「薬学部に進学した例があります。また、その他にも、国公立の医学部や早慶上智などの難関私立大学に合格する人もいますね。仲間と学びや遊びを共にし、成長していく過程が大きいと感じています」

 信頼できる仲間や、働く楽しさ、生きがいを見つけることが、社会復帰への第一歩になるのだ。

◆引きこもりを食い物にする悪徳支援団体に要注意

 引きこもりの支援組織が増える一方で、状況を利用した悪徳業者も生まれ、存在が問題視されている。長年、週刊誌で引きこもり問題を追い続けてきたライターのT氏は次のように語る。

「ヤツらが隠れ蓑にするのは滞在型の自立支援施設です。寮費が月15万円前後に、別途入寮費として15万〜30万円。高いカネを取るだけ取って、専門家もついていません。引きこもり中年の親世代は情報収集をする手段に乏しく、言葉巧みに騙されて多額のお金を支払わされるトラブルが後を絶たないんです。なかには、初期費用+3か月分の寮費で500万円以上の契約を結ばされたケースもあります」

 さらに支援プログラムの中身がなく、実質放置しておきながら、長期滞在させて寮費を搾り取ろうとする場合もあるとか。

「ほかにも、研修と称して入寮者をタダ働きさせ、労働先からの報酬は業者が全額懐に入れるのも常套手段。施設職員による虐待にも気をつけたいです」

 支援団体の透明化も急がれる。

― 引きこもり中年の衝撃 ―

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