カルト2世問題から貧困問題へ。仙台に貧困女性支援のケアハウス

カルト2世問題から貧困問題へ。仙台に貧困女性支援のケアハウス

LETS仙台 - 宮城県仙台市の女性用ケアハウス

◆切っても切り離せない「カルト問題」と「貧困」

 以前、当サイトにおいて配信した『終わりなきカルト2世問題の連鎖<短期集中連載・幸福の科学という「家庭ディストピア」1>』という記事で、幸福の科学2世信者の貧困問題に触れた。いま「カルト問題」への取り組みの中から、貧困問題への取り組みを本格化させようとする動きが起こっている。今年5月に宮城県でスタートしたケアハウス「LETS仙台」だ。現在、維持費捻出のためのクラウドファンディングを実施している。

「カルト問題」と貧困の関係は、今に始まったことではない。カルトに財産を根こそぎ奪われる信者、献金や宗教活動の影響で家計を圧迫される信者家庭、カルトをやめても貯金もなく職探しに苦労したり体調を崩すなどして生活がままならない脱会者(だからこそ脱会しにくいという事情もある)、教義に基づいた親からの教育や入信・宗教活動の事実上の強制などに耐えられず家を出て住居や仕事に困る2世信者──。カルトの周辺には、様々な構図の貧困が常につきまとっている。

 第三者が、こうした事情を頭では理解することはできても、その苦しさを実感として完全に理解するのは難しい。私自身、どんなに取材を繰り返しても完全な理解や共感は不可能ではないかと思えるほど深刻で複雑だ。体験や悩みの内容の個人差も大きいのだから。

◆共通していたカルト脱会者と虐待被害者が抱える課題

 カルト問題の現場では昔から、カルトをやめた人々を対象としてケアハウスを運営するという活動があった。現在それを行っているのが、2007年に福島県白河市で「いのちの家LETS」を開設した日本基督教団白河教会牧師の竹迫之氏だ。自身が、2世ではないがかつて統一教会に入信した経験を持つ。

 その竹迫氏が顧問となって新たに設立されたのが、対象をカルト被害者に限定しないケアハウス「LETS仙台」だ。所長は、白河のLESTで3年間活動してきた社会福祉士の松田彩絵氏が務める。

「もともと白河のLESTでも、カルト被害とは無関係の方からの相談もあり、入居したケースもありました。こうした支援活動を通じて、カルト被害者や2世が脱会後に抱えている課題とカルトと無関係に虐待を経験した人の課題がよく似ていることを痛感しました。貧困の問題だけではなく、たとえば人間関係の構築が不得手であるとか、そういった点も含めてです。また、たとえば子供がギャンブル依存だったり親に暴力を振るうといったケースでは、親のほうが『自分さえ我慢すれば何とかなるのではないか』と自分を攻めることがあるのですが、これもまた子供がカルトに入ってしまったという親御さんにも見られる傾向だったりします」(松田氏)

 原因がカルトであろうがなかろうが、結果として目の前に横たわる課題は共通しているというのだ。

◆多かった女性からのSOS

「また竹迫牧師が仙台の大学で講師をしていることもあって、白河のLETSに仙台在住の人からのSOSが多く入るようになってきました。中でも女性からのSOSが多かった。奨学金返済や実家の経済事情など貧困が原因で性風俗産業に関わったというケースもあれば、生活支援を確立しなければ住居付きの性風俗求人のような貧困ビジネスに向かいかねなかった相談者もいます。未成年女性からの相談もあります。そんなこんなで白河のLETSが一杯になってしまいました。また白河より仙台のほうが都会なので、ケアハウスで生活しながら仕事を探すといった自立支援もしやすいので、今回、新たに仙台に女性向けケアハウスを作ることになったのです」(松田氏)

 5月にオープンしたLETS仙台の間取りは5DK。すでに、継続的な入居者だけではなく、「オフ会のようなノリで互いに交流する人々の短期滞在もある」(松田氏)という。

「もともと、カルト被害者や2世の支援の現場では、カルトと無関係な貧困等の相談が来ることもあれば、そういった人々にも支援しようとする問題意識はありました。白河のLESTも、13年間、それをやってきました。一方で一般的な貧困支援活動の関係者からも、カルト2世などからの相談があるという話は聞きます。しかし当事者の課題の原因や背景にカルトの教義という特殊な事情がからむため、福祉関係者の中には『カルトには関わらないほうがいい』ということをこぼす人もいる。本来はほかの生活困難者と区別する必要などなく、カルトがからむ部分についてだけカルトに詳しい専門家と連携できれば対処できるはずなのですが」(松田氏)

◆運営資金をクラウドファンディングで募集

 支援活動そのものに加え、カルト問題と貧困問題それぞれに取り組む人々の交流や提携の足がかりになっていくことも見据えた活動だ。現在LETS仙台では、維持費用捻出のためクラウドファンディングを実施。すでに1次目標額である100万円を達成し、現在は2次目標として、2020年までの1年間の維持費200万円を目指している。

<取材・文/藤倉善郎>

【藤倉善郎】

ふじくらよしろう●やや日刊カルト新聞総裁兼被告人 Twitter ID:@daily_cult3。1974年、東京生まれ。北海道大学文学部中退。在学中から「北海道大学新聞会」で自己啓発セミナーを取材し、中退後、東京でフリーライターとしてカルト問題のほか、チベット問題やチェルノブイリ・福島第一両原発事故の現場を取材。ライター活動と並行して2009年からニュースサイト「やや日刊カルト新聞」(記者9名)を開設し、主筆として活動。著書に『「カルト宗教」取材したらこうだった』(宝島社新書)

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