モラハラ夫が妻を屈服させる、矛盾だらけの屁理屈論法7選<モラ夫バスターな日々27>

モラハラ夫が妻を屈服させる、矛盾だらけの屁理屈論法7選<モラ夫バスターな日々27>

まんが/榎本まみ

◆弁護士・大貫憲介の「モラ夫バスターな日々<27>

 専業主婦の妻が夫にプレゼントした際、夫が「俺のお金で買ったんだよね」と言うことがある。8月27日の「とくダネ」は、これを「女性が怒る何気ない一言」として紹介した。しかし、これは、「何気ない一言」ではない。モラ文化が染みついた、モラ夫丸出しのモラ発言というべきものである。

 ところが、アナウンサーの伊藤利尋氏は、このモラ発言について、「実際俺のお金なんでしょ?妻は働いてない」と語った(参考)。

◆「モラ夫は弁が立つ」説は誤り

 ところで、多くの被害妻は、「うちの夫は弁が立つ」「ソトヅラがいい」と言う。私は31年間、離婚事件を扱ってきて、「弁の立つ」「ソトヅラのいい」モラ夫と出会ったことは一度もない。私のまわりの離婚弁護士も同じ感想だ。私がこの説明をしてもなお、被害妻の9割は、「いえ、私の夫は(特別で)弁が立つ」「(ほかのモラ夫と違って)ソトヅラがいいので、皆騙される」と強調する。

 私は、それを聞いて、今度こそ、弁の立つ、ソトヅラのいいモラ夫に会えるかもしれないと期待する。しかし、「論争したら負けない」「俺は交渉がうまい」などと自己認識が歪んだモラ夫にはときどき会えるが、ほぼ全員、モラ夫丸出しで弁は立たず、いつも期待は外れる。

◆被害妻は、なぜ言い負かされるのか

「夫は弁が立つ」と被害妻が強調するのは、モラ夫に言い負かされるからである。なぜ言い負かされるのか。

 まず、被害妻は、怒っている夫に理解してもらおうと努力する。理解してもらうには、ある程度、相手に歩み寄ることが必要なので、論争上、妻に隙が生じる。モラ夫は、この隙を見逃さず、突いてくる。

 他方、モラ夫には禁じ手はない。禁じ手のないものに言い勝つのは、極めて難しい。以下、モラ夫の駆使する禁じ手(モラ論法)を紹介する。

1、都合の悪いことは忘れる

 例えば、妻が「でも、あなた、このまえは、××って言ったじゃない」と訊いても、モラ夫は「俺、そんなこと言ったか」とすっとぼける。妻がひるむと、「ほら、言ってないだろ、お前は嘘つきだ」と畳みかける。

2、カカシ論法で責め立てる

 妻の言葉を勝手に解釈し、或いは、妻が言っていない言葉を付け加えて、攻撃する。カカシ論法と呼ばれる。例えば、「俺の苦労は苦労でないと言うんだな」と妻の言葉を勝手に捏造し付け加える。妻が、「そんなこと言っていない」と否定しても、「いや、言ったも同然だ」と勝手に認定する。奥床しい妻は、そう聞こえたのは私が悪いと謝ってしまう。

3、普通、〜〜だろと根拠づける。

 この普通論法は、用途が幅広い。「そこは、謝るところだろ、普通だろう」、「夕食は、主菜だけでなく、副菜をつけるのが普通だろう」。「普通」の代わりに、「常識」、「皆そうだ」を使うモラ夫もいる。

4、誰のおかげ論法。

 モラ夫は、妻を従わせ、支配するために、誰のお陰で食べられるんだと言い募る。特に、妻が専業主婦だと妻を黙らせるキリングワードになるので、モラ夫様ご愛用のフレーズで、用途も広い。俺の稼いだカネだろ、も同じ論法である。

◆モラ夫に歩み寄ろうとするのは徒労である

 ほかにもモラ夫の屁理屈論法はあるが、今回はここまでとする。モラ夫たちは、学歴が高い、社会的地位のある者を含めて、決して頭がいいわけではない。モラ夫は、自らのモラが妻子を不幸にし、ひいては自らも不孝にすることに気が付かない。むしろ、究極的に頭が悪いともいえる。したがって、しばしば妻の反論を潰せない。しかし、モラは終わらない。モラ夫に禁じ手はないのである。

5、お前が正しいのか?正しいことを証明してみろ。

 ここでモラ夫の言う証明とは、「俺が納得する証明」である。例え、どんな証明を提出しても、モラ夫は納得しないので、被害妻は言い負ける運命にある。

6、そうか、いつもお前が正しいと言うんだな。

「いつも」を付け加えた点は、カカシ論法の応用である。妻が、そうね、「いつも正しい」訳ではないとモラ論法を肯定すると、そうだろ、お前が間違っていると論理をすり替える。

7、俺を悪者にするのか。俺の気持ちも知らないで。

 それでも追い詰められると、俺を悪者にするのかと開き直る。そして、妻が否定できない俺の気持ちで反撃する。

 多くの被害妻は、決して夫を言い負かそうとしていない。むしろ、夫に理解してもらうおうと努力する。他方、モラ夫は、妻を言い負かし、支配することを意図し、禁じ手がない。これでは、妻に勝ち目はない。ジェダイの騎士は、シスの暗黒卿には勝てないのである。

◆ソフトモラで対抗できないと、ハードモラで反撃する

 以上のソフトモラの手法を駆使しても、妻を言い負かせないこともある。そうなると、ハードモードに切り替わる。怒鳴る、睨みつける、物を投げる、ドアをバッタンと閉め、壁をパンチする、妻をガン無視するなどのハードモラで妻を攻撃し、従属させるのである。

 さて、冒頭の「俺のカネで買ったんだよね」は、妻のプレゼントを捉えて、「俺が稼いでいる」=「俺が主人」という論理を妻に押しつけるための一種のすり替え論法であり、ソフトモラの一種である。

 プレゼントを貰い、本来喜ぶべき場面まで利用して、妻に対する支配を確立しようとしているのであり、悪辣というべきである。

 モラ文化は、一朝一夕で変えることはできない。これからも、多くの有名人、権力者、「識者」のモラ発言が出て来るだろう。

 曽野綾子氏が、「(女は)出産したら会社を辞めろ」と発言したことが話題になった(参考)。

 出産、育児は、人間社会を維持するために必要有益なことであり、これを人迷惑とする発想自体、あり得ない。

 仮令、営利企業であっても、社会的存在であり、社会に貢献するのは義務である。しかも、労基法にも規定がある。したがって、企業が出産、育児を支援することは、全く以て当然のことである。曽野氏女性作家の発言は、モラ文化から出た、由々しきモラ発言であろう。

 繰り返されるモラ発言に対しては、否定的評価を重ねることで、モラ文化を地道に駆逐していくしか、日本が生き残る道はない。

【大貫憲介】

弁護士、東京第二弁護士会所属。92年、さつき法律事務所を設立。離婚、相続、ハーグ条約、入管/ビザ、外国人案件等などを主に扱う。著書に『入管実務マニュアル』(現代人文社)、『国際結婚マニュアルQ&A』(海風書房)、『アフガニスタンから来たモハメッド君のおはなし〜モハメッド君を助けよう〜』(つげ書房)。ツイッター(@SatsukiLaw)にてモラ夫の実態を公開中

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