増える女性向け風俗、男性セラピストに依存してしまう利用客も

増える女性向け風俗、男性セラピストに依存してしまう利用客も

画像提供:SPA White

◆店舗数が増えてきた女性向け風俗

 女性向け風俗、それは女性客に向けた性的サービスを提供する店舗のことである。

 出張ホスト、レズビアン風俗、性感マッサージと、その形態は様々であるが、特に昨年からその社会的注目度は増し、近年伸びつつある産業と言っても過言ではない。

 とある女性芸人が自身の女性向け風俗体験談を赤裸々に語った事が話題になったり、昨年末にはルポライター、ハラ・ショー氏が『女性専用:快感と癒しを「風俗」で買う女たち』(徳間書店)という本を出版したりと、その認知度は以前に比べると上がったのでないだろうか。

 その歴史は古く、確かな歴史的資料は存在しないが、20年前には札幌に女性向け風俗が存在していたともいう。また、2007年には福岡に女性用ソープが存在したというが、その息は長く続かず、開店から8ヶ月で閉店することになってしまった。

 無論、江戸時代には歌舞伎の世界ではまだ舞台に立つことのできない若手の少年役者が陰間(「陰の間」の役者という意味から)と呼ばれ、主に男性を客として売色をしていたが、時折女性を客に取ることもあった、という事を考えると大して驚くほどアブノーマルなものでもないのだろう。また、新宿二丁目で同性愛の男性を対象とする「売り専」と呼ばれる男娼の中には、女性を相手にする者もいた、という。

 異性愛男性にとって性産業が一般的であったのは、家父長社会において社会的に許容されていたお陰である。それに比べ、日陰者(女性・同性愛者)を対象とした性産業は、社会的にはなかなか許容されてこなかったものの、以前から存在していたのである。それは性欲が食欲・睡眠欲と同等に人間の3大欲求であることを念頭に置くと、あって然るべきものである。

 近年の女性向け性産業の動きとして顕著なのが、明らかにその店舗数を拡大している事だ。2007年にできた女性用ソープが難航した大きな理由は、男性側の力不足とそれに伴う人手不足だそう。つまり、女性向け風俗で働くにはそれなりのホスピタリティと技術力が必要という事になる。身体的な射精だけでサービスが終わる男性向けとは異なり、女性向け風俗は利用客に精神的な多幸感を与える必要がある、という事だ。

◆女性向け風俗の使い方とは

 では近年の女性向け風俗では、どのようなサービスを受けられるのか。

 大きく分けると「疑似恋愛型」として性感を伴わない出張ホスト型店舗もあるし、性感マッサージ店においても「デートコース」と呼ばれ、デートに重きをおくものがあるが、ここではいわゆる性感マッサージ店の流れを説明していきたい。

 大きな流れとして、最初に女性客が予約をする所からそのプロセスは始まる。どのような店を選び、誰を選び、どのくらいの時間を要求するのか、という所だ。女性向け風俗では男性は「セラピスト」と呼ばれ、どの店舗のサイトに行っても大体のプロフィールが書かれている。ここで女性は自分の需要とマッチするような男性セラピストを選ぶ。また、女性向け風俗情報サイトには、それぞれの口コミや体験談が書かれているのでそれも参考にすることもあるだろう。

 気になる男性セラピストの出勤情報と自身のスケジュールを照らし合わせ、予約する。もちろん当日での予約も男性セラピストの空き次第で可能だが、基本的には事前予約、ということになる。

 というのも女性向け風俗においては、予約が人気セラピストに集中しがちで、フリー(指名なし)の受注数が圧倒的に少ない。多数のセラピストを待機させることが困難ゆえに基本的に自前予約制という形をとっている。つまり、女性向け風俗は気軽に友人何人かと飲み会の後に繰り出す、というような文化ではないのだ。

 男性セラピスト達は、もちろん個人の裁量や店の方針によってさまざまであろうが、実際にセラピストとして活動するまでに緻密なトレーニングを受け、サービスと技術の面である程度のクオリティが担保されている。よって、ただただ女性の身体を触りたい、というような男性では勤まらないのである。

 そのような男性セラピストと指定の時間・場所で待ち合わせをし、施術を行うホテルへ。一緒に行く場合もあるし、指定のホテルで待ち合わせという事もあるだろう。ホテルに入ったら、軽い会話の中で女性客が何を求めているのか、何を求めていないのかを男性セラピストと丁寧に擦り合わせをし、実際の施術に入る。

 基本的にはマッサージから身体中の性感を刺激してもらい、満足を得る、という流れだ。ただし、男性セラピストとはいえ赤の他人。ここで大事なのは、女性客が触れて欲しいところ、触れて欲しくないところを明確にして、きちんと伝えることだ。

 無論、逆も然りで、女性客も過度な要求やサービス外の事を頼むのはご法度だ。それぞれの店舗のウェブサイトで何を提供するのかは明確に書かれているので、そこは事前に確認しておくべきである。わざわざ中華料理店に行ってメニューにあるはずのないイタリア料理を頼む客はいないのと同じように。

◆男性セラピストに過度に依存してしまう女性客も

 ここで問題なのは、女性向け風俗が、あくまでも女性の精神面を癒す、という体裁を取っていることだ。それ自体は何ら問題もなく、一種のファンタジーとして消費できれば女性向け風俗は楽しい。

 しかし、現実的に考えると、容姿端麗な男性に甘い言葉を囁かれながら自身の身体を委ねるということは大多数の異性愛女性が持ち得る幻想的欲望であり、それを一時的にでも満たしてくれる男性セラピストというものは貴重な相手なのである。そのため、あくまでもサービスであることを忘れ、男性セラピストに過度な期待をしてしまう女性客も少なくないという。

 また、一説によると、多くの女性向け風俗の利用者は、男性経験に何らかのトラウマやコンプレックスを抱えているという。そのような人たちの立場を考えると、自身のコンプレックスを払拭してくれる男性セラピストとの時間は、彼女達の人生にある一定の刺激を与えるものである。その刺激が、外の世界、つまり一般社会での恋愛・婚活の場でポジティブなものとして活かされればいい。何らかの原因で自分に自信を失っていた女性が、風俗での経験からそれを取り戻し、仕事や他の人間関係で活かすことができる、それが風俗、特に昨今の女性向け風俗に求められる姿なのではないだろうか。

 しかしながら、中には前述した幻想的欲望を満たし続けるために、男性セラピストに一線を画した要求をしてしまい、男性セラピストを傷つける女性客もいる。そしてその逆も然りで、男性セラピストのエゴによる不誠実な対応で、そのような心理的状況に悩まされ、傷ついた女性客も少なくない。

 女性向け風俗店、SPA Whiteグループ代表久慈あす香氏によると、男性セラピストのほとんどがツィッターを使い、ダイレクトメール(DM)によって女性客と個人的な連絡が取れる、という状態が、女性向け風俗が提供するファンタジーと現実の境目の曖昧化の温床になっている、とのこと。

ホテル内での施術に加え、ツィッターでDMを送ることは男性セラピストにとっては営業にすぎない。しかし女性客の中には、日常生活に影響が出るほど心理的に依存してしまう人もいる。

 これはホストの「色恋営業」と似ており、男性セラピストが「好きだよ」「かわいいよ」と言った言葉を過剰に使いすぎてしまうと、そもそも現実の生活で異性関係に何かしらの問題を抱えている女性客は、それに依存してしまう可能性もある。

 また、この構図が一般化することによって、女性客がそのようなDMのやり取りを要求するようになってしまうと、男性セラピスト自体も時間外労働を強いられる、ということになりかねない。つまりはどちらにも良いことはないのである。

 もちろん、「色恋営業」を駆使し、女性客を男性セラピストに依存させ、来店頻度をあげ、収益を拡大するというビジネスモデルもあるだろう。しかし、それは本当に女性が「安全に、楽しく」遊べる女性向け風俗なのであろうか。

 あす香氏によると、SPA Whiteグループではそのような共依存の関係を避けるために、日程調整等以外での過度なDMでのやり取りは禁止、施術後はホテル前解散、というルールを設けているそう。無論、このルールに対して賛否両論はあるが、それも女性客と男性セラピストの事を想ってのこと。「あくまで女性が幸せになる為に必要な女性向け風俗であって 、女性向け風俗が必要になってしまう女性向け風俗は作りたくない」とあす香氏は語る。

 逆説的ではあるが、あす香氏は女性向け風俗からの「卒業」も奨励している。つまり、女性向け風俗で自己肯定感を高め、女性向け風俗は必要ない状態になることだ。あす香氏にとって女性向け風俗は、女性のための「駆け込み寺」的存在であるべきであり、依存する場所ではない、とのこと。

◆女性が性を楽しむことが「当たり前」になるように

 そもそも風俗店とは、サービスと時間を、お金を対価にして享受するものだ。それはきっと多くの女性にとって、エステサロンやリラクゼーションサロンと本来は同等のはずだ。

 前述したような問題が現実に起ってしまうのは、性的な行いと恋愛感情を切り離すことができない人が少なからずいること、また、そもそも女性の性的欲望が社会的に認知されていないことが原因なのではないか。

 確かにセックスやそれに伴う性的な行為は、その近距離感ゆえに感情が入りやすい。しかし、それらは行為であって、必ずしも恋愛感情が伴うものではない。ここでいう恋愛というのは、その行為の相手の時間と場所を恒常的に相互で共有する、という意味だ。

 パートナーとの日常は、時には自分のエゴを抑えて妥協し、相手を思いやることでその関係性を築いていく。それ自体はとても尊いものだ。逆説的にいうと、風俗はそのような社会的関係性から一時的に(しかも数時間という短い間)解き放たれ、自分にご褒美を与える時間なのである。

 また、女性の性的欲望も、男性の性的欲望と同等で、時には発散されるべきものなのだという社会的認識もあって然るべきだ。いくつになっても性的欲望はあって当然だし、それは何ら恥ずかしいことでもない。動物として自然なことであるし、ゆえに女性の性的欲望も、もっとリスペクトされるべきものなのである。

 セルフプレジャーの一環として、女性向けアダルトビデオや女性向けの大人のおもちゃ、そして女性向け風俗がある。それらを楽しむ女性の性文化はなくてはならないだろう。

 「当たり前」に女性が性を楽しめる社会になるための女性向け風俗。産業として、文化として今後の発展に期待したい。

<取材協力/SPA White>

【小高麻衣子】

ロンドン大学東洋アフリカ研究学院人類学・社会学PhD在籍。ジェンダー・メディアという視点からポルノ・スタディーズを推進し、女性の性のあり方について考える若手研究者。

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