ベトナム人技能実習生、除染作業と知らされずに従事。福島県の会社を提訴

ベトナム人技能実習生、除染作業と知らされずに従事。福島県の会社を提訴

左から旗手明さん、飯田勝康さん、佐々木史郎さん、中村優介さん

◆ベトナム人技能実習生ら3人が福島県の建設会社を提訴

 技能実習生として来日し働いていたベトナム人男性3人が、技能実習契約に反して除染作業・被ばく労働に従事させられたとして、約1200万円の損害賠償を求めて福島県の郡山市の建設会社・株式会社日和田を提訴した。3人を支援する全統一労働組合と、技能実習生除染・被ばく労働事件訴訟弁護団らが9月4日に記者会見で明らかにした。

 3人は鉄筋施行・型枠施行の技能を実習する雇用契約を日和田とのあいだに締結し、2015年7月に来日、同年8月から就労を開始した。しかし、実際は契約通りに鉄筋施行・型枠施行の仕事に従事することができず、2016年3月から2018年3月の間の300日以上の労働日を除染・被ばく労働に従事させられることになった。

 全統一労働組合は日和田に対し、団体交渉や補償金支払いの提案といった手段で働きかけたが、同社は謝罪と補償を拒否。解決の見通しが立たず提訴することとなった。雇用契約に反して除染作業に従事させられていた技能実習生が雇用主の企業を相手取った訴訟を起こすのは、今回が初となる。

◆基本理念を見失い形骸化した技能実習制度

 そもそも技能実習制度とは、「我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国への移転を図り、開発途上国の経済発展を狙う『人づくり』に協力することを目的とする」という基本理念のもとに制度化されたものだ。ベトナム人の技能実習生3人は鉄筋施行・型枠施行の技能を習得するために来日したのだ。

 それにもかかわらず、日和田は3人との雇用契約に違反し、鉄筋施行・型枠施行には関係のない仕事に3人を従事させた。日和田が作成した3人の工事内容がまとめられた資料には、「鉄筋組立の補助」「型枠組立の補助」などの仕事内容が記載されているが、これも3人が体系的な技能を習得できるようなものでは到底なかったという。

 原告の1人であるグェン・バ・コンさん(36)は直筆の手紙で次のように書いている。「日本に来てから、専門の勉強はほとんどできませんでした。契約書によると、わたくしの専門の勉強は鉄筋施行ですが。日和田会社はいってから、てっきんしごとがあたってないです。いろいろちがうことをさせられました」(原文ママ)

 外国人技能実習生権利ネットワークの旗手明さんは会見で次のように訴えた。「技能実習制度のカラクリが一番ひどい形で暴露された。国際貢献のための制度であるはずの技能実習が、日本の必要に応じて外国の労働者、労働力を都合よく使うためのものになってしまっている。93年にスタートした制度だが、昨年は33万人の実習生が日本で働いており、これは今後5年間で入れようとしている特定技能の人数に匹敵する。これだけ日本は技能実習生に頼らざるを得ない状況になっている。その労働者のサポートを生涯にわたって国境を越えてできるのかどうか、という問題が投げかけられている」

◆「今回の一件は別次元のレベルの問題だ」

 しかし、今回最も重大な点は、ベトナム人技能実習生3人が福島原発事故の影響で放射線量が高くなっている危険地帯で、除染作業・被ばく労働に従事させられていたことだ。具体的には、郡山市と本宮市の住宅地や森林での除染作業、さらに当時は避難指示解除準備区域内であり一般の立ち入りが禁止されていた浪江町での下水管配管工事に従事させられていたのだ。弁護団の中村優介弁護士は、「これによって今回の一件は実習生が契約違反の仕事をさせられただけではない、別次元のレベルの問題になっている」と話した。

 先ほどのコンさんの手紙の続きを読んでみよう。「とくに除染をたくさんやらされました。誰もいない立ち入り禁止の場所(なみえ)でも働きました。危険な仕事だとは知らされませんでした。将来、とても健康がしんばいです。会社と交渉しましたが、会社は謝罪もしないし、補償もしません」(原文ママ)

 労働安全衛生法では除染作業に従事する労働者の健康被害を防止するため、事業者は労働者に対して学科・実技の両面で特別教育を実施しなければならないとする「除染電離則」を定めている。しかし訴状によれば、ベトナム人技能実習生3人が日和田から受けさせられた講習はビデオ視聴だけだったという。

 ここには、技能実習生の日本語能力が専門的な内容を含む資料を理解するレベルに達していない場合も多いという問題も関連してくる。たとえば、厚生労働省電離放射線健康対策室編「除染等業務特別教育テキスト(4訂版)」は関係法令を含めれば230頁を超えるもので、日本語以外の言語では用意されていない。

 日本語でさえ難解な漢字や語句が頻出するこのテキストを、技能実習という名目で来日した技能実習生に理解しろと言うのは無理難題を押し付ける行為だと言わざるを得ない。現行の制度とそのために整備された現実的な条件のもとでは、除染作業に従事する技能実習生の安全を確保することは極めて困難だ。

 ベトナムでは2016年に原発の建設計画が中止されており、現在原発ゼロの国だ。そのためベトナム人実習生を除染作業・被ばく労働に従事させるのは技能実習としての意味をなしていない。弁護団は日和田の対応を出入国管理法違反と見なし、今後の訴訟を進めていくつもりだと話した。

◆日本の外国人への態度はこのままでよいのか?

 今回の一件は、契約に反して、また事前に十分な知識と注意を与えられることなく除染作業に従事させられた技能実習生が雇用主を訴えた初の事例としてそれ自体注目すべきものだ。だがそれが注目されるに値するのは、健康被害を負いかねない危険な環境で労働させられる技能実習生の存在が決して過去の問題ではないからだ。

 全統一労働組合の佐々木史朗さんは、除染・除雪等の業務について、「特定技能外国人と同様の業務に従事する他の技術者が従事している場合、特定技能外国人に同程度の範囲内で従事させることは差し支えありません」と明記された法務省の文書(「運用要領別冊 特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領-建設分野の基準について-」)の一節に言及し、その点を強調した。条件付きではあるが、特定技能外国人に除染に従事させるケースを「差し支えない」として容認しているのである。

 外国人技能実習生権利ネットワークの旗手明さんの話でも、今回のベトナム人技能実習生3人が氷山の一角に過ぎないことが指摘された。今回も使用者側は「除染は危険だと認識していない」と回答したという。

 激化する入管収容所の長期収容者によるハンガーストライキ。政府と一部のマスメディア・出版社が一体となって韓国へのヘイトを煽るような国内の動向。日本という国家が外国人に対してとる態度に起因するこれらの問題の一端として、今回の一件を位置づける必要がある。我々はこれら一つ一つの問題を個別的に注視しつつも、日本という国家が歴史的に形成させてきてしまったそれらの淵源を病根として断ち切るべく自問自答を続けていかなければならないのである。

関連記事(外部サイト)