認知症理解にスタバが一役。町田市が「認知症カフェ」の取り組みに成功した理由

認知症理解にスタバが一役。町田市が「認知症カフェ」の取り組みに成功した理由

提供:町田市役所

◆認知症にやさしい町づくりに取り組む町田市

 東京南部の外れの方にある町、町田市。人口は42万8706人(2019年4月1日時点)で、東京都の中では大きめの都市だ。

 2015年から町田市は、認知症にやさしい町の基盤づくりに力を入れている。認知症カフェ(通称:Dカフェ)や認知症への理解を促す書店(通称:Dブックス)の運営や設置を行っている。2019年4月にはスターバックスコーヒージャパン株式会社と協定を結んだ。

 民間企業が行政と共に、地域に根差した認知症理解を目的とした活動をするのは、前例がない。町田市の歩みを探ってみる。

◆町田市の歩み〜新オレンジプランを受けて町田市が実践したこと〜

 高齢化社会が進む現代の日本。厚生労働省の調査によると、2025年には65歳以上の5人に1人が認知症患者になると推測されている。

 経験したことのない超高齢社会が訪れる中、2015年1月に厚生労働省が中心となり認知症施策推進総合戦略を打ち出した。これは、新オレンジプランと呼ばれる。

 新オレンジプランは、「認知症の人の意思が尊重され、住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現」を目的としており、認知症への理解を深めるための啓蒙活動を始めとする7つの柱にそって施策を進めていく。この取り組みの1つとして、認知症カフェがあるのだ。

 当事者や家族、地域住民が交流する場である認知症カフェを、町田市ではなぜDカフェと呼ぶのか。”D”にはdementia(認知症)、diversity(多様性)、dear(親しみ)といった意味が込められている。

 認知症カフェは、認知症の方が社会と繋がる居場所づくりを目的としている。1990年代にイギリスをはじめとするヨーロッパ地方で始まったのが、普及のきっかけ。

 全国の自治体が、認知症カフェの設置に取り組み始めているが、「関係者しかこない」といった問題に直面する。これを乗り越えたのが、町田市だ。町田市が市内のスターバックス全8店舗で月一回ずつ開くDカフェは、いつも多くの人で賑わう。

「『介護施設でカフェをやっても、誰も来ないと思う』。会議でこのような意見が出てきました。どんな”カフェ”なら行きたいと思うのか。どうやったら認知症の方の理解を深められるのか。認知症の方の集まりにお邪魔して話を聞くなど、彼らと座談会をするなど試行錯誤をしましたね」(江成)

 こう話すのは、町田市役所高齢者福祉課の江成裕司さん。「町田市がどのようにDカフェを活性化させたのか」について取材の依頼を申し込んだところ、高齢者福祉課の高橋さんと江成さんの2人が取材に応じてくれた。

 町田市がDカフェで注目を浴びた背景には、町田市役所のひたむきで「認知症の方の理解を広めたい」という強い思いがあった。

◆当事者が集まるカフェへ、動き出した民間企業

 町田市がスターバックスとの協定を結んだきっかけは、スターバックスコーヒー町田金森店の男性店長との出会いだった。町田市には12箇所に高齢者支援センターを設置しており、スターバックス町田金森店の近くに、その1つがあった。

 初めての出会いは地域のイベント。高齢者支援センターは地域住民の身近な存在になることを目指しており、地域のお祭りに出店をするなどしている。一方、スターバックスコーヒージャパンは、CSR(企業が持つ社会的責任)の一環として、”コミュニティへの貢献”を上げており、各店舗が自主的に地域社会活動を行うことを促しているのだ。町田金森店の店長は、頻繁に地域イベントに顔を出していたとのこと。

 地域イベントで知り合った高齢者支援センターとスターバックスコーヒー町田金森店。イベントの度に親交が深まり、「一緒に何かやってみよう!」と話が生まれたと江成さんは話す。

「町田市のDカフェのコンセプトは、特別な場所から日常の場所へ。認知症の方もスタバに来て、コーヒーを飲んで欲しいし、一般の方は認知症について身近なものとして捉えてほしい。『あ、認知症の話をしているね。あの人、認知症なんだ。全然普通の人と変わらないじゃん』と気づいてほしいんです」(同上)

 認知症の人の中には「『自分が認知症だと人に言いたくない』と悩みを抱えてしまう方もいる」と江成さんは話す。認知症に対して寛容ではない社会が根付いているからだ。「自分が住む世界は、認知症とは無縁のもの」と多くの人が考えているのが現状。

 スターバックスといった”オープンな場所”は、この現状打破に最適な場所である。Dカフェを運営するにあたって、一番重要なのは、”気軽に入れるかどうか”だからだ。

 2017年にスターバックス コーヒー町田金森店と共同で動き始めてから、町田市にある民間書店も動き始めた。認知症当事者の方が書いた本を、人目に付きやすい場所に置くなどの取り組みだ。民間企業と町田市の”絆”は、スターバックスとのコラボにより、広がりつつあるのだ。

◆認知症の人と一緒に住みやすい地域をつくる ことを目指して

 このように民間のセクターが協力的になり、地域の福祉活動に強く貢献することは異例だ。一つの企業が入ると、波を打つように次々と協力者が現れてくる。

 現在、町田市のDカフェは市内のスターバックスコーヒー全8店舗側で月一回ずつ開催されており、予約はいらない。飛び込み参加は大歓迎とのことだ。

「認知症の方が地域に溶け込める社会を作りたいですね。町田市はこれからも認知症に対する啓蒙活動を続けていきます。スターバックスでDカフェが開催されていたら、一度フラッと立ち寄ってみて下さい。誰でも大歓迎です」(同上)

 高齢者が増えていく一方、比例して認知症患者数も右肩上がりになる。 行政が民間企業と二人三脚で地域福祉に取り組んでいく例は、いずれ来る超高齢化社会に求められる”在り方”かもしれない。

<取材・文・撮影/板垣聡旨>

【板垣聡旨】

学生時代から取材活動を行い、ライター歴は5年目に突入。新卒1年目でフリーランスのライターをしている24歳。ミレニアル世代の社会問題に興味を持ち、新興メディアからオールドメディアといった幅広い媒体に、記事の寄稿・取材協力を行っている。

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