「仕事・趣味・家族のどれかを選ばないといけない社会はおかしい」海外移住者の本音<ヨーロッパ編>

「仕事・趣味・家族のどれかを選ばないといけない社会はおかしい」海外移住者の本音<ヨーロッパ編>

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 母国を離れ、海外に住む海外在留邦人数は年々増え続け、現在は135万人以上に上る。いったい彼らはなぜ海外に移住するのか? 今回は、ヨーロッパへの移住者にその理由を聞いた。

◆「仕事かプライベートか」を選ぶ社会は間違っている

 近年、日本でもようやくワークライフバランスが叫ばれるようになったが、実際に成功しているのはほんの一握りだ。働き方改革が進められているとはいえ、日々の仕事は残業だらけ。先日の台風でも多くの人が公共交通機関の復旧とともに、出社を余儀なくされるなど、現実は厳しい。

 そうしたなか、よりよいワークライフバランスを求めてポーランドに移住したのは、幅野雅彦氏(仮名・30歳・製造業)だ。

「学生時代の部活動から、卒業後はアマチュアのクラブチームまで、ずっとサッカーを続けてきたんです。でも、働きながらやるとなると仕事もプレーするチームも限られてしまいます。練習時間が取れたとしても、家族や友人と過ごす時間まで確保するのは大変です。仕事をしながら家族や友人との時間、趣味などプライベートを充実させるのは日本の生活スタイルでは難しいと判断しました」

 いきなり外国の企業に就職するのは難しいため、幅野氏は海外に支社や工場がある企業を中心に就職活動をしたという。

 新卒ですぐに採用とはいかなかったが、2年ほど学校の事務職などをこなしたのち、海外に工場を持つ金属加工会社に就職。ポーランドへ出向することになった。

◆コンパクトな街並みも労働環境に影響

 こうして念願だった海外移住の夢を果たした幅野氏。海外駐在のため会社の状況に応じて帰国もあり得るというが、現地で結婚して1児の父に。移住6年目の現在は一軒家も購入している。

「勤務時間は8〜16時で残業もめったにありません。仕事が終わったら地元のアマチュアチームで練習して、あとはゆっくり家族と過ごしています。たまにヨーロッパやアジア諸国などへの国外出張もありますが、日々の生活には大満足です。職場へは車で20分程度なので、通勤で疲れることもありません」

 幅野氏が暮らす都市の旧市街には中世の街並みがそのまま残っており、職場・自宅・繁華街の距離が近いのも魅力的だそう。こうしたコンパクトな都市設計もワークライフバランスを実現させる要因のひとつであることは間違いない。

◆冷たいようでいて寛容な働き方

 また、仕事そのものへの取り組み方も日本とは大きく異なるという。

「もちろん、残業が必要になるケースもありますが、基本的に業務時間外に仕事をすることはありません。当たり前ですが、決められた時間と賃金に見合った仕事をするのが労働という考え方です。日本ではクライアントの注文に応えるため、なし崩し的に条件が変わることがありますが、そういったことはほぼありえません」

 大手に迫られた下請けが切り詰めて、さらにその下請けが切り詰めて……としているうちに、末端の労働者の労働時間が増え、賃金が減ってしまう。そんな負のスパイラルに陥らないようには、社会全体に無理な条件は断るという共通認識が必要だ。

「窓口に行列ができているのに、目の前でランチを食べていたりするのを見ると、イライラすることもありますけどね(笑)。でも、そういった状況でクレームを入れれば、同じことが自分にも返ってくるわけですから。接客態度などについても同じことが言えると思います」

 一見すると冷たい働き方にも思えるが、それはある意味、お互いを許しあうという寛容性の裏返しなのかもしれない。対価に見合った仕事しかしないのが当たり前の社会と、どんな無理難題にも笑顔と自己犠牲で応えなければいけない社会……。どちらを選ぶかは、人それぞれだ。

◆日本は数十年前にストップしたまま

 趣味に育児にと充実した毎日を送る幅野氏。では、そんな彼に今の日本はどう見えているのか?

「政治、経済ともに数十年前からストップしたままという印象です。自分に子供が生まれてからは、なおさらそう感じます。こっちも消費税は23%と高いですが、食費・家賃・光熱費など、生活に必要最低限なものの物価は安い。子供の数に応じて還付金を受け取れるなど税制面でも環境は桁違いです」

 何かを手にするためには、犠牲を払わなければいけない……。冒頭でも述べたように、そんなライフスタイルに疑問を持ったことから、幅野氏は移住を決意した。

「仕事、趣味、家族から、どれかを『選ばなければいけない』生き方なんて、どう考えてもおかしいですよ。普通に暮らすだけで負担を強いられる。月給は日本にいたころと変わりませんが、移住してから生活は格段に向上しました。見聞が広がるので間違いなく海外移住はオススメです。特に若い人には積極的に海外に出ていってもらいたいです」

<取材・文/HBO編集部>

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