駄目なリーダーほど相手の考えを先走って説明する。3ステップで上手に相手の考えを引き出す方法

駄目なリーダーほど相手の考えを先走って説明する。3ステップで上手に相手の考えを引き出す方法

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 筆者はトップダウンのマネジメントだけでなく、ボトムアップのリーダーシップ実践力を高めるための演習を、さまざまな企業の経営者や管理職、若手リーダーと実施している。それが5つの質問による巻き込み型リーダーシップだ。

◆相手の考えがわからないのは致命的 

 ボトムアップのリーダーシップを発揮する際、よく受ける質問に「メンバーの考えがわからない」「だから、ボトムアップのリーダーシップを発揮したくでも、発揮できない」というものがある。

 メンバーの考えがどうであっても、トップダウンのマネジメントをしようとして、メンバーの考えをわかろうとしていること自体が、ボトムアップのリーダーシップに取り組み始めている証左だ。

 「メンバーの考えがわかない」という人の話法を観察させていただくと、共通の特徴があることがわかった。「Aという考えなのではないか?」「Bというように思っているのだろう?」「Cと考えているとすれば、こうしてほしい」というように、相手の考えていることを先走って、説明してしまっているのだ。

 相手が、「そうではなくて、こうだ」というように言ってくれればよいが、たいていの場合、勢いに押されて口ごもってしまったり、「そういうわけではありませんが……」と生返事をしてしまったりする。

 リーダーが畳みかければ畳みかけるほど、メンバーは口を閉ざしてしまって、ますます、メンバーが何を考えているかわからなくなってしまうという悪循環に陥る。

 質問によるボトムアップの巻き込み型のリーダーシップを実践しているはずにもかかわらず、意識が変わっておらず、自分で何でも伝えてしまうトップダウンのままの行動になってしまっているのだ。こういう状況に直面すると、「だから、意識を変えることは難しい」「意識が行動を変えるので、行動はなかなか変わらない」という見解に接する。しかし、私は決してそうは思わない。

◆「意識が行動を変える」には時間がかかる

 「意識が行動を変える」という考え方がある。しかし、意識はなかなか変わらない。意識が変わらないから行動も変わらない。行動を変えるまでの間に、数か月、数年といった、途方もない時間がかかってしまう。変革には時間がかかると諦念さえ生まれている。

 そこで私は、「行動が意識を変える」というアプローチを用いている。その行動もできるだけ分解して、コアな行動を見極めて、そのコアな行動を身につけたり、行動発揮の仕方を高めたりする。まさにこの連載のタイトルになっている分解スキル反復演習を行うのだ。

 簡単な動作を反復演習するので、とても身につけやすい。スキル種類にもよるが1セット3分を5回反復して、15分で相当程度スキルが身につく。いくつかのパーツスキルを身につけていくと、各々パーツなので、組み合わせや連動がしやすい。実際のビジネスの状況や相手の特性に合わせて、調整が効きやすくなる。

 このようにして、実際のビジネスシーンに役立つ行動のあり方が身についていくと、意識が変わってくるのだ。それも数か月、数年という単位ではなくて、繰り返しスキルを発揮していければ、数日の間に意識が変わってくることに気づく。

◆行動が意識を変える

 冒頭の事例に陥ってしまうリーダーに対しては、決して説明のフレーズを盛り込まないで、純粋に素朴な質問だけで相手と対話するという反復演習を15分実施してもらう。「Aという考えなのではないか?」と決めつけてしまうかわりに、「考えを聞かせてくれますか?」と質問するのだ。

 「Bというように思っているのだろう?」と言うかわりに、「思っていることを何でも言ってくれますか?」とだけ、問いかける。「Cと考えているとすれば、こうしてほしい」と指示するかわりに、「どんな考え方でも、考えの途中でも結構なので、気にかかっていることを共有してくれますか?」とだけ聞く。

 こうした質問を繰り出すことだけを実施していくと、「相手の考えを聞こう」という意識が高まり、「良い悪いで相手を決めつけないでいよう」という意識に至り、「相手を尊重しよう」という意識が生まれることがわかっている。行動が意識を変えるのだ。

 難解なリーダーシップ理論を学ぶ必要も、理論書籍を読破する必要もない。何度理論を学んでも、何冊理論書籍を読破しても、頭ではわかっても意識は変わらず行動に移せないのであれば意味はない。

 逆に、まったく理論を学んでいなくても、一冊も書籍を読んでいなくても、最初は意味がわからなくても、パーツ行動を実施できるということの方が意味がある。そしてその結果、意識が変わり、変革が生まれるのだ。

◆3段階のステップを踏む

 質問:相手の考えていることがわからない場合はどうすればよいか

 相手の考えていることに触れてから、自分の考えを話すといっても、相手の考えていることがわかりません。相手が考えていることがまったくわからない場合や、相手の考えていることが推察できない場合は、どうすればよいのでしょうか?

 確度が低くても、「たぶん、このように考えているに違いない」「おそらく、このように考えているはずだ」というように見当をつければよいのでしょうか。

 回答:相手に考えを聞き、リアクションして、自分の考え方を伝える

 相手の考えていることがわからない場合は、当の相手に聞いてみることが一番です。つまり、相手に考え方を聞く、相手の考え方に対してリアクションする、自分の考え方を伝えるという3段階のステップをとればよいのです。

 それをやらないで、自分の言いたいことを言うだけだったり、勝手に「相手はこう考えているはずだ」と決めつけて話しはじめたりしてしまうと、無用な対立が生じてしまうのです。

 そして、相手の考え方を聞くということ自体が、相手を巻き込むことに絶大な効果があるのです。

【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第154回】

【山口博】

(やまぐち・ひろし)

グローバルトレーニングトレーナー。モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)、『クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい、2017年8月)がある

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