オーディオブックの意外な効能。鍵は「2倍速」で聴くこと

オーディオブックの意外な効能。鍵は「2倍速」で聴くこと

AUD Cars株式会社代表取締役社長の太田 良氏

 経営者を目指す学生や若手ビジネスパーソンは少なくない。しかし、そのためにどのスキルを高めるべきなのか、何をしておくべきがわかっていないために、経営者になるための準備ができなかったり、ステップを歩めない人は多い。今回は、40歳で年商40億円の企業、AUD Cars株式会社を経営する太田 良氏に、本連載「分解スキル反復演習が人生を変える」でお馴染みの山口博氏が迫る。

◆文章題を華麗に描くことが経営に役立つ

山口 博氏(以下、山口):「今日は太田さんが経営者として活躍されるようになった背景をお伺いしながら、経営者として大成していくために、いったい何が必要なのか、つまびらかにできれば幸いです。まずは学生時代に何に関心があったかお聞かせいただけますでしょうか」

太田 良氏(以下、太田):「小学校からとにかく算数が好きでした。中学受験の算数なので、ほぼパズルみたいなものですね。文章題を図で華麗に表して解くのに夢中でした。大学で理論物理を専攻していても小学校時代に通っていた大手塾で中学受験の算数講師をしていました」

山口:「算数に関心をもたれていたわけですね。意外に思いました。算数は企業経営に役立ちますか?」

太田:「世の中は常に選択の連続だと思っています。簡単に言えば常に2択です。しかし、2択の先もまた2択があり、それを10回先まで考えると1024通りです。もちろん私はそんなに考えられません(笑)。しかし、式で表す数学と違い、算数は文章題を絵や図で表して問題点を簡潔明瞭にして答えを導き出します。世の中にあふれかえる数値や流れを頭の中で絵に変換できるようになると、さら楽しくもっと知りたいと思うようになる、と思っています」

山口:「確かに、経営は、例えば方針をどう描いてメンバーにイメージさせるか、キャリア開発をどのように心象化するかにかかっているかもしれません。しかし、イメージ力を高めることは、容易ではありません」

◆今はテロップで理解する時代

太田:「そもそも今は聞く力を養うのがとても難しい世の中です。昔は、会話によっておばあちゃんの昔話や風俗が伝承されてきました。しかし、今はネット動画もテレビも全てテロップで理解する時代です。聞いて自分なりに理解・想像していたものが、今はテロップのオチに強制誘導されます」

山口:「なるほど、理解力、イメージ力を高めるということは、聞く力に行き着くわけですね。ではどのように高めればよいのでしょうか」

太田:「会話のキャッチボールが一番です。相手の考えを聞いて理解し、答えを返す。聞く力が弱ければ答えを返す余裕がなくなってしまします。そこでおすすめしたいのは、本を朗読してくれる本です。いつでもどこでも自分の興味のある本を一流のナレーターが読んでくれます」

山口:「いわゆるオーディオブックですね。オーディオブックを聞く時間は、どのように捻出されるのですか」

太田:「私は車で通勤しており、片道45分、往復1時間半です。月に20日間聞いたとすると月30時間分です。また朗読速度も1.5倍から2倍に設定して聞いています。なので、45時間から60時間分、つまり月で5〜10冊換算の量が読むことができます」

◆2倍速で聞いてイメージ力を高める

山口:「確かに太田さんの薦めで実施してみると、よくわかりました。1倍速のあと1.5倍速で聞くと、速くて聞き取れないという印象を持つのですが、2倍速でわずか1分聞いた後、1.5倍速で聞くと聞き取れるようになっている。これは聞き取る実践スキルの、それもわずか1分間でできる、能力開発手法ですね。この連載のテーマである分解スキル反復演習の一手法だと思います」

太田:「そうなんです。普段から2倍速でオーディオブックを聞いていると、通常の人との会話がゆっくり聞こえます。すると今までは聞くことに思考回路を使っていたのが、状況を把握する、行間を読む、表情を読む、そしてその後を予測して回答するというフェーズに思考回路を割くことができるようになります」

山口:「イメージ力、リスニング力がまさに経営に役立っているという実例をお聞かせいただきました。実にポジティブに能力開発に取り組んでいらっしゃることがよくわかりました。太田さんにとって、モチベーションを高く維持する原動力は何ですか?」

太田:「学生時代にバックパッカーとして世界中を巡っていた影響が大きいですね。強盗に手を切られたことも、8歳の子供が生活するために一生懸命に騙そうとすることも、身分制度の違いから棍棒で殴られ続けている人を目の当たりにしたことも、今思えば全てが糧になって活きています。ここを話し出すと尽きないですが、日本という素晴らしい環境で仕事が出来ていることは幸せです」

<対談を終えて>

 オーディオブックを2倍速で聞いて、「聞く」というパーツスキルを高める。これができると、意状況把握、予測、回答といった、次のステップのスキル発揮に注力することができる……。太田さんのこの考え方は、まさにスキルをパーツ分解して、コアスキルを見極めて、それを反復演習により修得し、スキルの連動や組み合わせを容易にする、分解スキル反復演習そのものだ。太田さんはその実践者なのだ。(モチベーションファクター株式会社・山口 博)

【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第155回】

【山口博】

(やまぐち・ひろし)

グローバルトレーニングトレーナー。モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)、『クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい、2017年8月)がある

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