「4トン車なら4トン積める」は間違い。トラック運転手を苦しめる、荷主による「過積載の強要」

「4トン車なら4トン積める」は間違い。トラック運転手を苦しめる、荷主による「過積載の強要」

トラックの過積載は事故の原因にもなりうる危険な事案だ

◆重大な事故の原因にもなる「過積載」

 「トラックドライバーが一般ドライバーに知っておいてほしい“トラックの裏事情”」をテーマに紹介している本シリーズ。

 前回記事「業界に蔓延る“荷主第一主義”の弊害」について前編「トラック運転手の労働環境はなぜブラックになってしまうのか? ドライバーを縛る「荷主第一主義」」では、「荷主第一主義」で起きる労働環境のブラック化について述べたが、後編の今回は、現場から今だ聞こえる「荷主からの過積載の強要」について紹介したい。

「荷主第一主義」の中でも、筆者が最も悪質だと思うのが、「過積載」だ。

 トラックドライバーをしていると、荷主から法で定められている最大積載量以上の荷物を「いいから積んでいってよ」と積まされるケースがある。

 実際、現役時代の筆者も、大型連休に入る直前などに、得意先から「(連休は自分たちが休みたいから)今日これも一緒に持って行って」と、過積載を強要されたことが数え切れないほどあった。

 過積載のトラックは、制動距離(ブレーキが効き始めてから停止するまでに走行した距離)が長くなり、走行中の車体もバランスが非常に不安定になる。これにより衝突・転倒したトラックは、通常よりもはるかに大きな被害をもたらすことは想像に難くない。

 2018年9月、千葉県の県道で、緩やかな下り坂を走行していたトレーラーが青信号の交差点を左折した際に横転し、その先で信号待ちをしていた軽自動車が下敷きになった事故を覚えている方もいるだろう。

 

 軽自動車は、原形が分からないほど変形。乗っていた3名が死亡したが、この事故の直接的な原因も、過積載だった。

「走ること」を「食べること」としているトラックドライバーにとって、このような重大な交通違反は、多方面で「命取り」だ。

 ゆえに昨今、警察による取り締まりや、運送業界の働きかけも強まり、現役のドライバー曰く、こうした荷主らによる過積載の強要は、ひと昔に比べて大幅に減ったという。

◆「4トン車なら4トン積める」は間違い

 が、そんな現在においても、一部の運送や建設現場のトラックドライバーから、「いまだに過積載を強いられる」といった声が筆者に届くのも事実だ。

 その大きな原因になるのが、荷主の道路交通法に対する認識の甘さだ。

「これも積んでいってよ」と軽い気持ちでドライバーに過積載を強要する荷主は、過積載がいかに危険か分かっておらず、罪の意識も道路交通法の知識も希薄な人が多い。

 また、汎用性が高く、運送業界の中でも最もよく使用されているトラックの1つに「4トン車」と呼ばれる中型車があるのだが、これを知識の薄い荷主が「4トン車ならば4トン積める」と誤解しているケースもある。

 トラックの「最大積載量」は、「車両総重量」から「車両重量」と「乗車定員(ひとり当たり55kg)」を差し引いた分のみ。

 クレーンや昇降装置、冷蔵冷凍車に必要な装置などがトラックに付くほど、載せられる荷物の重さは少なくなり、4トン車の場合、最大積載量が3トン以下になることもザラなのだ。

 建設現場で使用されるダンプカーは、石や砂、鋼材など、積み荷の比重が高いものが多く、過積載のリスクが高まる傾向があるという。

 また、運送トラックが運ぶ、1つひとつの重さが分かりやすい段ボールや個体とは違い、ダンプカーが運ぶ石や土、砂利などは重さが千差万別で、現場で曖昧にされやすいことも原因となり得る。

◆過積載で事故を起こしたドライバーの悲痛な訴え

「3割超えは当たり前で5割超えて少し積みすぎくらいの感覚」、「土木建設業界の現場は無法地帯」、中には「いつ事故の当事者になるか知れない」と、自身の身の危険を訴えてくるドライバーもいる。

 そんな中、トラックドライバーが所属する業者は、荷主から「積めなきゃ他の会社に任せる」と言われることを恐れ、「客の要望なら仕方ない」と、暗に過積載をドライバーに指示してしまうこともあるという。

 いわずもがな、過積載はドライバーだけでなく、運送業者や荷主も処罰の対象になるのだが、事故が起きた場合、誰よりも心に傷を負うのは、他でもない自社のトラックドライバーなのだ。

 筆者がある日、SNS上で現役トラックドライバーに投げた「今までの大失敗は何か」という質問に、こんなメッセージが届いた。

「自分は以前過積載で事故を起こしてしまいました」

「よかったら詳しく話を聞かせてくれないか」と返信したところ、しばらく彼からの返事は途絶えた。

 長いメッセージが返ってきたのは、それから半年ほどしてからだった。

◆死亡事故を起こし、会社からも見放され……

「積み場所にいくと、そこには10トン分の積み伝票の他に、もう一枚『ウン千キロ』と書かれた別伝票がありました。

 荷主に『積まなきゃ駄目か』と尋ねると、出来れば積んで欲しいとのことでした。会社に連絡したところ、管理者から『積め』との命令があり、荷主の指示通り積んで出発しました。

 夜中に時速70キロで走行中、赤の点滅側から軽自動車が一時停止せず道路に進入。ブレーキをかけましたが、間に合いませんでした。

 即座に警察と、救急車を呼びました。が、軽自動車の運転手は死亡。

 死因はシートベルトが胸に食い込んだことによる心臓破裂でした。まだ20歳の大学生。外傷もなく口から血を出した状態でした。シートベルトが胸に食い込んでおり、ハサミでベルトを切った記憶があります。

 現場検証後、自分は免許停止になりました。会社と荷主は、は10日の営業禁止。他ドライバーからは『オマエのせいで生活出来ない』と罵声されました。

 指示したのは会社の運行管理者なのに、なぜ自分が非難されるのか。当時若かった自分には、不思議でなりませんでした。

 結局、他の社員からも見放され、孤立した自分は、会社を辞めざるを得なくなりました」

 現在彼は、別の運送会社で働いている。

 こうして、荷主や所属会社の指示によって事故を起こしてもなお、彼は「会社を辞める前、辞めてからも、お客様あっての仕事。お客様から仕事をいただき、生活させていただけている。その気持ちは今も昔も変わっていない」と話す。

 一般的に、過積載の責任はドライバーにあるとされがちだが、彼らは過積載で損をすることはあっても、得をすることはほとんどない。

 今回話を聞かせてくれた彼が、この半年の間に振り絞った「勇気」と「記憶」と「懺悔の思い」。未だドライバーに過積載をさせる荷主や運送企業には、どうか、こうした切実な声を無駄にしないでいただきたい。

<取材・文/橋本愛喜>

【橋本愛喜】

フリーライター。大学卒業間際に父親の経営する零細町工場へ入社。大型自動車免許を取得し、トラックで200社以上のモノづくりの現場へ足を運ぶ。日本語教育やセミナーを通じて得た60か国4,000人以上の外国人駐在員や留学生と交流をもつ。滞在していたニューヨークや韓国との文化的差異を元に執筆中。

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