契約内容の見直しを拒絶、詐欺まがいの無断発注…… オーナーらがセブン‐イレブン・ジャパンを再び集団申告

契約内容の見直しを拒絶、詐欺まがいの無断発注…… オーナーらがセブン‐イレブン・ジャパンを再び集団申告

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◆公取委への第二次集団申告

 10月10日、セブン&アイがグループ全体での約4000人の人員削減、セブン‐イレブンの不採算店1000店の閉鎖・移転などを内容とする大リストラ計画を発表し衝撃を与えた。しかし、グループの上層部によるトップダウンの改革ではなく、コンビニ関連労働者の働きかけによって労働者自身の待遇改善を目指している労働組合がある。それがコンビニ関連ユニオンだ。

 10月11日、コンビニ関連ユニオンの呼びかけによって集まったオーナーらが東京・霞ヶ関の公正取引委員会を訪れ、先月の11日に引き続き第二次集団申告を行った。

 今回もオーナーらが独占禁止法に違反していると主張した筆頭はセブン‐イレブン・ジャパンだ。

 同日の申告直前に開かれた記者会見の内容によると、第二次集団申告で主に問題とされたのは、まず「契約書に明記された5ヶ年ごとの契約内容の見直しが40年間で一度も行われていないことが優越的地位の濫用に当たる」ということだ。さらに「前回の集団申告で問題になった社員によるおでん等の無断発注は、本部とメーカーとの間の契約をフランチャイズ加盟店に押しつける形で行われている組織的問題である」ということも問題とされた。以下これらの内容を中心に解説する。

◆40年間無視され続ける「5ヶ年ごとの契約内容の見直し」

 セブン‐イレブン・ジャパンがオーナーとの間に取り結んだ契約内容がまとめられた「加盟店基本契約書」の第58条では、契約内容が定められた1979年10月1日から5ヶ年が経過するごとに、セブン本部はオーナーの意見を聞いた上で契約に記載された基準値を見直すと定められている。基準値とはチャージ料(店舗売上の中から本部へ支払う手数料)の比率等の値であり、オーナーの店舗経営を何にもまして左右する重大な意味をもっている。

 しかし、この契約内容の見直しはなんと79年から40年間が経過した今現在に至るまで一度も行われていない。今年はその5ヶ年ごとの節目にあたるため、9月11日の集団申告の後、コンビニ関連ユニオンの河野正史委員長は東京・四ツ谷のセブン本社に赴き、オーナーの意見を聞いた上で契約内容の見直しを行うように求める要求書を社員に提出した。

 要求書によると、コンビニの店舗数は、1983年度には6308店舗だったが、2018年3月末には5万7956店となっている。35年間で9倍以上に増えているのだ。また東京都の最低賃金は、382円(1979年)から、985円(2018年)まで上昇している。

 基本契約書は、「社会・経済情勢の急激な変動」も契約を見直す理由になるとしている。コンビニオーナーを取り巻く環境がこれだけ変化しているのだから、セブン本社は契約の見直しに応じるべきだろう。

 また、セブンイレブン前橋荻窪町店のオーナーである、永尾潤同ユニオン副委員長は、今年8月に内容証明書を送付。こうした情勢の変化を考慮すれば現在はチャージ率を9%減額する基準値の変更が本部とオーナーの「労使関係」の正常化のために必要だと主張している。

 だがセブン本部は9月20日に要求書を河野委員長宛てにそのまま送り返してきた。要求書では10月10日までにオーナー全員との集団交渉の日時と場所を指定するよう本部に求めていたが、これに対する回答はなかった。

 契約書の第57条では、契約内容を5ヶ年ごとに見直すことを定めた第58条を含めた各条項の定めに違反した場合、違約者は損害賠償をしなければならないと定められている。セブン本部は5ヶ年ごとに契約内容を見直すという契約に違反しているばかりか、それによってオーナーに対しての損害賠償を求められることにもなりかねない。

◆オーナーの意見を聞いて契約内容を変えてきたというセブンの主張に妥当性はあるのか?

 この異常事態を前にして本部も徹頭徹尾沈黙し続けているわけではなく、あるオーナーは社員から次のような見解を聞かされたと会見で語った。その社員によれば、セブン‐イレブン・ジャパンが公取委から排除措置命令を受けた2009年から実施されている食品廃棄ロス15%の本部側負担や、2017年9月から実施されているチャージ率の1%特別減額など、本部はオーナーの意見を聴いた上で契約内容の改定を行っているという。

 そして聴き取りについては普段から社員がフランチャイズ店舗を訪店して行っており、要求書に対する文書による回答はしないとも述べていたという。これらはすべて永松文彦社長の見解として受け取って構わないとのことだ。

 これに対してコンビニ関連ユニオンは19年10月11日付で声明を発表した。9月に同ユニオンが提出した要求書はあくまでも基本契約書第58条に定められている5ヶ年ごとの契約見直しを行うように要求したものであり、本部の見解はこれに対して正面から回答していない。本部が第58条(および第57条)に違反しているのは依然として変わらない。これが本部に対する同ユニオンの見解だ。

 また声明では基本契約書で「契約は文書で行う」と定められていることが指摘され、文書回答をしないというのは今後契約の見直しを行わないと言っているのと変わらないと本部を弾劾している。

 会見に来ていたあるオーナーは、「本部社員の日常的な訪店による聴き取りといっても、そこで意見を聴き入れて実現されたことなど一度もない」と語った。加盟店が本部に対して意見を提出することのできる「改善提案書」をオーナーが提出しようとした場合も、OFC(店舗経営相談員。最もオーナーに近い立場にいる社員)から「出すのはやめてくれ」と止められてしまうという。

 オーナーらが求めている契約改定の要求は基本契約書に明記されている立派な契約内容であるにもかかわらず、これを遂行しないことによってセブン‐イレブン側が契約関係で優越的な地位にある以上、セブン本部は優越的地位の濫用に該当している。これが同ユニオンの見解だ。

◆オーナーの了解を得ない無断発注が起きる背景とは

 次の点に移ろう。先月の集団申告では、おでんをはじめとする「無断発注」がメディアで大きく取り上げられ話題になった。会見では実際に無断発注の被害に遭ったオーナーの口からこの件の詳細が語られた。

「セブンには発注といっても仮発注と本発注があるんです。仮発注では予め発注する商品の種類と数を入力しておきます。本発注ではこの仮発注で入力しておいた分を確定させるんですが、その際は一つ一つの商品をいちいち確認せずキーボードを連打して一気に完了させるのが慣習です。

 無断発注というのは、仮発注の段階でOFCが店に来てこっちが入れるつもりのない商品を勝手に入力するんです。それをやられると普通は本発注で気付かなくて、商品が届いて初めて気付く。OFCには『あれーこんなに来ちゃいましたねー。じゃあ頑張って売りましょう!』とか言われる。私はたまたま本発注でウチの店でやるはずのないおでんが入っていておかしいぞと気付きましたが、気付かなくて確定させちゃった無断発注もありました」

 しかし、これを問い詰められた時の本部社員の回答は驚くべきものだった。本発注ではなくて仮発注だから問題ない、というのだ。もちろん本部社員は本発注でオーナーが連打して一気に発注を確定させることも知りぬいた上でこう言っている。先ほどのオーナーはこれに対して「未遂であれば事件を起こしていないんだから罪はないんだ、と言っているのと同じ。ふざけた言い分だ」と怒りを露わにした。

 無断発注の問題が社会的に問題とされるようになったのは最近だが、これは今に始まったことではない。会見では10年前に無断発注を行ったOFCがオーナーに書き送った「謝罪文」も公開され、「この件に関して、契約書上でも到底容認出来ない重大な過失であり、やってしまった事の重大さを真摯に受けとめ反省しています。大変申し訳ございませんでした」などと記されていた。

 しかし今回の会見でより重要だと思われたのは次の点だ。同ユニオンは前回の申告で「おでん無断発注」がメディアで予想以上に大きく取り上げられてやや困惑したようだが、それをきっかけに詳しく検討してみたところ、これはセブン本部の組織としての体質にかかわる、深く根付いた問題として捉えなければいけないのではないか、と認識を新たにしたというのだ。

 一体どういうことか。会見で公開されたとある店のOFC業務日報には次のように書かれていた。

「琥珀エビスが今週新規で推奨されておりますが、自店は導入されていない。アテンションで数回オーナーに直接コミュニケしてきているが、本日においても導入されない」

 これは担当している店のオーナーが本部の推奨している商品を導入しないことを問題視した文書である。文章は次のように続く。

「エビス導入の背景(中略)●メーカー出荷50万ケース内10万ケースを7-11が押さえている」

 つまり、本部が仕入数量を事前にメーカーとの間で契約してしまっており、その分をフランチャイズ加盟店に買ってもらわなければ困ると書かれているのだ。フランチャイズ加盟店は事業主ということになっており、今年3月に中央労働委員会がコンビニオーナーの団体交渉権を認めないとする判断を示したのもそれが理由だった。本部の義務は事業主である加盟店に仕入先を紹介することであり、勝手に数量契約を締結してそれを事業主に押し付ける権利などない。まして加盟店に仕入義務などない。

 しかしこの文書に示されている通り、実際には本部がメーカーとの間で事前に契約を締結してしまい、オーナーがそれを押し付けられる形になっている。本部に対して団体交渉権を行使しようとすると「事業主だからその権利はない」と断られ、逆に事業主だから仕入商品は自分で決めるのだと言うとしつこく本部の「推奨」する商品を入れろと迫られる。この文書はコンビニオーナーがいかに弱い立場に置かれているのかを表していると同時に、コンビニ本部がオーナーに対する優越的な地位を都合よく振りかざす体質にどこまで深く毒されているのかが一目瞭然だ。

◆ユニオンはオーナーの月命日に申告を続けると意気込む

 今回の申告で提出する文書はもちろんこの一点だけではない。会見では山のような文書が用意されており、それだけで何本記事が書けるか分からないほどであった。

 公取委との面談を終えた鎌倉玲司同ユニオン書記長は「これだけの量の決定的な証拠書類を公取委に毎月提出している組合は我々コンビニ関連ユニオンくらいだと思う。公取委は実態調査に踏み切ると発表したが、我々は集団申告を継続していく」と話した。

 本部社員として長野の事務所で働いている河野委員長は今回の申告当日に来られなかったが、「11日は今年7月11日に亡くなった東日本橋1丁目店の齋藤敏雄オーナーの月命日だ。これからも11日に申告を行っていくので、全国のコンビニ関連労働者の方々に協力を呼びかけたい」と話した。

 先日の台風の影響により、セブン‐イレブンでも首都圏・東海地方の約1000店が計画休業することになり、配送トラックも一部運休することになった。翌日からは各店舗で営業が再開されていったが、今回の休業では普段我々が当然のものだと思っているコンビニの「近くて便利」が、配送ドライバーや店舗従業員の日々の労働によって維持されている貴重なものであることを改めて意識せざるを得なくなったのではないだろうか。

 コンビニを回しているのは上層部から降ってくる鶴の一声ではなく、現場で汗水垂らして働く従業員の労働という力だ。コンビニ関連ユニオンはそのような現実の力で会社を下から突き上げることによって、コンビニ業界を変革していこうとしている。

<取材・文/鈴木翔大>

【鈴木翔大】

早稲田大学在学。労働問題に関心を持ち、執筆活動を行う。

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