コピーライターが名付けた「名もなき家事」70項目があるある過ぎる

コピーライターが名付けた「名もなき家事」70項目があるある過ぎる

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 共働きなのに普段は何もしない夫からの「家事の何が大変なの?」という一言。おそらく、この言葉ほど妻をイラつかせるものはない。

 そうした無神経な発言をする人は、家事を「掃除」「料理」「洗濯」というふうに、大きなくくりでしか見ていないのだと思う。実際には家事のための家事というべきだろうか、名前もない細々したタスクがたくさんある。それらのタスクは、目立たないだけに目が向けられず、評価されにくい。

「原因は呼び名がないから。じゃあ、名もなき家事に名前をつけてしまおう!」。そんな主旨の本、『やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。』(サンマーク出版)が今年9月に発売された。

 著者は、現役コピーライターの梅田悟司さん。日常的に行われているが名前がない家事70項目を取り上げ、それぞれに梅田さんが命名した。「言語化することで、家事を見える化する」ことが狙いだ。

◆「仕事の方が楽」「名もなき家事多すぎ」ツイートが大反響

 執筆のきっかけは、梅田さんが今年4月に投稿したツイートだ。梅田さんはかつて4か月半の育児休業を取得。「10年以上も働いてきたし、息抜きしながら将来のことでも考えよう」と思っていた。しかし、家事をしてみて、大変さに驚く。「終わりがない。達成感もない。誰かにほめられることもない。もはや、ないないづくし……。」と認識を大きく変えた。

【梅田さんのツイート(全文ママ)】

育休を4ヶ月取得して感じたこと

・授乳以外は男性もできる

・子ども慣れしてないは甘え

・子育ては2人でやってちょうどいい

・名もなき家事多すぎ

・育児での凡ミスは死に直結

・24時間、緊張状態が続く

・会話できる大人は命綱

・職場の方が落ち着く

・仕事の方が楽

・仕事の方が楽

・仕事の方が楽

 この投稿には、13万件を超える「いいね!」がつき、「よくぞ言ってくれた!」といった共感が集まった。

 家事には、外からわかりやすい家事とそうではない家事に分けられる。冒頭で例示したような「料理」はイメージしやすい部類に入る。

 一方で、献立をつくるためのさまざまなプロセスのほか、キッチンを使いやすい状態にするための工夫や行動は見えにくい。家族の好みやそのときの体調に合わせて何をつくるかを決めたり、食材の購入はネットスーパーか路面店にするかを決めたりするのは、「見えない家事」だ。こうした影の努力があって初めて料理ができるのだが、あまり意識されない。

◆「手料理スルー」「タッパー神経衰弱」面白い名前が続々

 この本では、様々な「名もなき家事」が紹介されている。例えば、「タッパー神経衰弱」、「手料理スルー」、「家事渋滞」、「家事無限ループ」などだ。

「タッパー神経衰弱」は、「タッパーのフタと容器を正しく組み合わせる家事」のことをいう。食材の保存に便利なタッパーだが、一度にたくさん洗って乾かしておくと、どのフタがどの容器に対応するのかわかりにくい。

「これとこれかな?」とひと組ずつ合わせていくのは、まさにトランプの神経衰弱。この作業を発生させないためにすべて同じサイズで揃えるのも手だが、深いタッパーは汁物用、広くて浅いものはおかずのつくりおき用など、さまざまな形のタッパーがある方が便利なので悩ましい。「A」「B」など、対応する記号をマジックで書いておくべきだろうか。

「手料理スルー」とは、「スーパーの惣菜だけでは申し訳ないので手料理を一品作ったのに、その料理だけが余っているのを切ない気持ちで見届けながら自分で食べきる家事」のことだ。

 惣菜で申し訳ないなんて思う必要はないのに、なぜか手づくりしようとしてしまう。簡単なものといっても、食材をカットしたり、ボウルで味付けしたりするので、それなりの手間はかかる。

 せっかくつくったのに、食べる人は気楽なものである。こちらの気も知らないで、なぜか手料理のおかずを残す。家族だけではなく、わざわざ料理をした自分にも腹が立つ。

「完璧な家事の計画を立てたのに、ペースを乱されることが起きすべてのやる気を一瞬で奪われる家事」は「家事渋滞」と名付けられている。

 本書では、やる気満々の主人公が床に置いたコップをこぼしてしまい、悲痛な叫びをあげながら吹きとるシーンが紹介されている。おそらく、この経験は誰にでもあると思う。筆者は詰め替えたばかりで満タンの衣類用漂白剤容器を床に落とし、飛び散った液体を拭き取ったとことがある。いらいらしすぎて、その日は料理も掃除も一切できなかった。

「手洗いにするか洗濯機に放りこむか判断する家事」もある。「洗濯の選択」だ。

 洗濯前の衣類の仕分けは、地味に面倒な作業だ。洗濯機にまとめて入れて洗うこともできるが、服によっては傷んでしまう。かといって手洗いは時間も労力も必要で、忙しさに拍車をかける結果になる。なんでもかんでも洗濯機に入れればいいわけではない。

「家事無限ループ」は、「家事をしていたらいつの間にか1日が終わっていた家事」のこと。

 わかる、わかりすぎる。家事には本当に終わりがない。家事をするための家事がどんどん湧いてきて、どこかで自制しないとやることが増えていく。あっという間に時間が過ぎ、一通り終えても達成感がなく、むなしい気持ちになる。

◆家事を普段しない人ほど、「見えない家事」には気づきにくい

 家庭での家事負担には、夫婦間で大きな偏りがある。一般社団法人ストレスオフ・アライアンスが2018年12月に発表した調査結果によると、約8割の男性が平日、休日ともに家事を1時間もしていないことがわかっている。顕著なのが、洗剤の詰め替えや掃除機のゴミ捨てといった「見えない家事」に充てる時間だ。そうした「家の中の雑務時間」に1時間以上を費やす人の割合を男女別に見ると、男性は6.8%に対して女性は20.2%と3倍近い差が開いている。

 調査の結果からは、普段家事をしない人ほど家事の表面的な面ばかりを見て、その裏に細かい作業があることを意識できていない可能性が高いことがわかる。たとえば、掃除であれば掃除ロボットが動けるように床の上の物をどける、洗濯であれば特定の洗濯物を洗濯ネットに入れるといった「雑務」があるが、その部分が抜け落ちると「何が大変なのか?」との思いを抱いてしまう。

 しかし、こうした「名もなき家事」を言語化することで、「料理」や「洗濯」「掃除」と同じように、存在そのものを意識できるようになりそうだ。

◆「どの家事をどんな順番でするか」家事は頭脳労働

 本書に興味を示した筆者の妻は、「わかる」「ほんと、面倒なんだよね」とうなずきながら読み進めていた。そしてこんな感想を漏らしていた。

「一見するとそんなに手間じゃなく映るけど、これが毎日とか2日に一回とか高頻度で発生するからつらい。

 私の場合は、実際に手を動かすよりも、『最初に何をして、次に何をして』と家事の順番を考える作業が面倒。仕事や育児もあるし、限られた時間でどうするかを考えるわけだから、家事って頭脳労働」

 確かにその通りで、家事はパズルのようなものだと筆者は感じる。自分の持ち時間からひとつの家事にかかる時間を逆算して、できそうな家事をする。これを考えるのは、なかなかに疲れる。

 また、奥さんの妊娠をきっかけに家事を積極的にするようになった知人の男性に「名もなき家事」について聞いてみたところ、

「洗濯って洗濯機に汚れものを入れてスイッチを押して終わりではなく、汚れがひどければ事前にシミ取りをしたり、糸くずフィルターの掃除をしたりしないといけない。

 キッチン周りの家事にしても、食洗機が使える食器とそうではない食器に分けたり、水気が残っていないかを確認しながら食器棚に戻したりと、やることがたくさんあります。家事のことを考えながら仕事をするって、頭が疲れますね」

と本音を漏らしていた。

 このように、名もなき無数の家事は、人を疲れさせる。大切なのは、完璧を目指さないことだ。そんなことをすれば、いつか心身が参ってしまう。

 梅田さんは本書の終わりに、次のような一文を添えている。

「家事は無限にある。だからこそ、完璧はありえない。不完全でいいじゃないか!」

<取材・文/薗部雄一>

【薗部雄一】

1歳の男の子を持つパパライター。妻の産後うつをきっかけに働き方を見直し、子育てや働き方をテーマにした記事を多数書いている。

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