お客に「オプション」をつけさせるのがうまいセールスマン、下手なセールスマンの差はどこにある?

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 見解の異なる相手の考え方を、自分の考え方に誘導したい……。そんな場面に直面するビジネスパーソンは実に多い。一対一の対話でも、一対多数の会議でも、あるいはプライベートの場面でも、それができれば苦労しない。

◆前向きなフレーズに含まれる「アンカリング力」

 しかし、相手にわかってもらおうと自分の意見を主張すればするほど、相手は相手の意見に固執してしまい、そのうちに険悪な雰囲気になってしまう。かといって、相手の意見に合わせていてばかりでは、仕事が進まない。

 なんとか相手と対立することなく、相手を誘導することができないだろうか? そのために最も簡単な話法が、「同意+経験」話法だ。

 「同意+経験」話法とは、相手の言っていることに理解を示したうえで、自分の経験を話すということだ。相手の見解を聞きながら、相手の話している内容に関連している自分の経験を思いおこして話す。実際に経験していることが相手を引きつけるパワーを持ち、ひいては誘導しやすくなる。

 私は相手を引きつけるパワーを持つフレーズのことを、「アンカリングのあるフレーズ」と呼んでいる。アンカリングとは、船の碇のアンカーに由来する。船が停泊するときに、碇が下ろされて海の底にずしりと響き、碇と鎖の重さで巨大な船を停止させるパワーが発揮される。

 これと同じように、相手の心にずしりと響き、相手の心を揺り動かすパワーを持つフレーズが、アンカリングフレーズだ。20年来の演習経験をふまえると、アンカリング力はネガティブなフレーズよりもポジティブなフレーズに多く含まれる。

 さらに、実際にあったかなかったかはっきりしない話よりも、実際にあった話に多く含まれる。なかでも、昔の話より、最近の話のほうにアンカリング力がある。

 そして、伝え聞いた話よりも、実際に体験した話の方がアンカリングのパワーが強いことがわかっている。つまり、ポジティブな最近の実体験に、アンカリングが含まれているのだ。

◆共感度と誘導幅のバランスで相手を誘導

 具体的には、相手の見解を聞いてから、「なるほど、そう考えているのですね(同意)。私も先月、このような経験をしました(経験)」とリアクションして、同意+経験のフレーズの組み立てにより、相手の見解に関連した経験を話す。

 この同意+経験のリアクション話法は、取り上げる経験談によって、相手の共感度と誘導幅が異なることに着目すると、リアクション効果を極大化できる。

 自分の経験が相手の見解に近接した経験であれば相手の共感を得やすく、共感度は高いことになる。しかし、相手の見解とまったく同じ経験を話すと、共感度は高いが、まったく同じ話なので誘導幅は小さい。

 相手の見解とかけ離れていたり、まったく逆の経験を話したのであれば、誘導しようとする幅は大きいが、共感度が低くなるので、実際には誘導できない。

 そこで、相手の共感を得られる範囲で、相手の見解とは少しだけずらした経験の話をすれば、そのずらした方向に相手を誘導しやくなる。共感度と誘導幅のバランスが重要だ。

◆相手の「関心領域」も織り交ぜる

 たとえば、相手が自動車を購入しようとして、「オプションは最低限のものでよい」という見解を持っていたとする。それに対して、「いや、せっかくですから、オプションA、B、C、D、E、Fのすべてを付けたほうがいいですよ」というように、相手の見解を否定して持論を唱えてしまうと、オプションを「付けない」「付ける」の言い争いになってしまう。

 これは誘導しようとする幅が大きすぎてと、共感度が低い例だ。売り込みたくて言ったのであれば自業自得だが、よかれと思ったり、親切心から言ったとしても、逆効果ということになってしまう。

 その代わり、「そうですか。オプションは最低限のものでよいと考えているのですね(同意)。私も半年前に車を変えたときに、同じように考えていたのですが、AとBとCは、とても役立っていますよ(経験)」とリアクションすれば、相手は最低限のAだけのオプションを想定していたかもしれないが、AとBとCのオプションを検討してみようという気持ちに誘導しやすいのだ。

 これは相手の見解に対して、誘導幅をA、B、Cの程度の幅に抑えて、自身の経験を加えて誘導する例だ。相手が共感できる範囲であれば誘導しやすいし、自身の経験談が誘導力を上げる。

 さらに、もう少し大きな振れ幅で誘導できる話法に、相手の関心領域のフレーズを組み込む方法がある。「そうですか。オプションは最低限のものでよいと考えているのですね(同意)。私は安全性(関心領域)のかかわるオプションはフルでつけたのですが、とても安心で助かっています(経験)」というようなリアクションになる。

 この「安全性」というフレーズを、相手の関心領域により、「独自性」「汎用性」「調和性」などに変えていけばよい。「いや、せっかくですから、色々付けたほうがいいですよ」と返すよりも、各段に相手を引きつける効果があるのだ。

◆相手の話に自分の経験談を絡める

 質問:「同意+経験」はどのように行えばよいか

 相手の考え方に対して、「同意+経験」によって誘導する話法は、具体的にはどのように行えばよいのでしょうか?

 回答:相手の考えに関連する自分の経験を話してみる

 相手の考え方に対して同意したうえで、その考え方に関連する自分の経験を話す方法です。自分の実際の経験を話す分、相手を引きつける度合が高まります。そのため、相手の考え方との関連の度合が小さかったとしても、相手を誘導しやすい方法と言えます。

【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第160回】

【山口博】

(やまぐち・ひろし)

グローバルトレーニングトレーナー。モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)、『クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい、2017年8月)がある

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