「お前の我慢が足りない」実家の親がモラハラ夫を擁護する地獄<モラ夫バスターな日々35>

「お前の我慢が足りない」実家の親がモラハラ夫を擁護する地獄<モラ夫バスターな日々35>

まんが/榎本まみ

◆弁護士・大貫憲介の「モラ夫バスターな日々<35>

「いい旦那じゃないか」

 父は、娘の話を聞き終わると、一言、そう言った。

 娘は一瞬、凍り付いたが、「でも、風俗通いは許せない」と声を絞り出した。父は、「まあ、男のサガだから、それくらい大目にみてやれ」と言った。

 隣で聞いていた母は、「両親揃っていないと、子どもたちが可哀想」と娘をなじった。

◆実家は、モラハラ応援団

 この女性(30代後半)は、後日、私の事務所に相談に来た。夫のモラに耐えかねて、2人の未就学児の手を引いて実家に逃げたが、両親は、女性のモラ被害を理解しなかったという。

 結婚当初に叩かれたことについては、「言い返したから(仕方ない)」。日々ディスることについては、「男は威張りたいもの」。家事・育児に無関心なことについては、「(彼は)真面目に働いてる」。

 風俗通いについては「男のサガ」と取りつく島もない。セックスの強要や夜中の説教について、女性は、とても親に言えなかった。そして、結論は、両親とも「(お前は)我慢が足りない」であった。

 女性は離婚したいと訴えたが、父は「離婚は許さん」、母は「子どもたちが可哀想」と反対した。毎晩説得され、結局、数日で夫の元に戻ることになった。

◆帰りの車は、妻を威圧するための“モラ運転”

 父が電話し、夫はその晩、車で迎えにきた。夫は、親に対しては、自らの不足を詫び、妻を大切にすると約束した。

 しかし、宿泊を固辞し、妻子を乗せて車で実家を出発した。両親は、満面の笑顔で「いつでも遊びに来なさい」と言って、立ち去る車に手を振ってくれた。女性は、両親の安心した顔を見て、離婚に踏み切らなくてよかったと安堵した。

 しかし、安堵が打ち砕かれるのに時間はかからなかった。帰路、夫は、子どもたちとは話すものの、女性をガン無視し、急発進、急ハンドル、急停止、無謀な車線変更、追い越しなどを繰り返した。女性は、怖い、から止めてと言ったが、それも無視された。

 因みに、妻を不安にさせたり、自らの怒りを表現するための無謀運転(私は「モラ運転」と呼んでいる)は、ガン無視、ドアバッタン、壁パンチと並んで、多くのモラ夫によくみられるモラ行動である。

◆再び、モラを受ける日々が戻ってきた

 そして女性には再び、モラ被害を受ける日々が戻ってきた。パートを辞めさせられ、日々の買い物、幼稚園の送迎以外の外出は禁止された。日々怒られ、ディスられた。夫は、突然、不機嫌になり、2、3日、口を利かないこともあった。

 女性は怒られないよう、以前よりも夫の顔色を窺った。夫が帰宅する時間が近づくと、動悸がした。

 そして、子どもたちに対して強く叱ることが、以前よりも増えた。子どもたちが泣くと、「泣くな」とさらに怒った。子どもたちは、ヒックヒックと泣くのを必死にこらえていた。或る時、その姿が、ふと、母親に怒られた幼い日の自分の姿と重なった。

 このままでは、自分も子どもたちも壊れてしまう、そう思って、法律相談先を探し、私の事務所に相談に来たのだった。

◆モラ夫を擁護する実家の親からも隠れる必要がある

 DV夫やモラ夫から逃げる場合、子連れで逃げ、その居場所を隠すことが多い。

 ちなみにDV夫やモラ夫は、自ら(妻が逃げ出す)原因を作りながら、子連れで逃げることを「連れ去り」と非難する。しかし、子どもを残して逃げるなどはあり得ない。家裁実務も、主たる監護者である母親が子連れで逃げることを問題視していない。

 この女性は、半年も経たずに、再度逃げ出した。女性の両親は、決してこれを理解しないだろう。離婚も許さないだろう。そのため、女性は、夫だけでなく実家の親からも身を隠し、別居後、離婚調停を申し立てた。

 以上、親がモラハラ応援団の場合、離婚のハードルは高くなる。しかし、それでも、決断と実行があれば、離婚は可能である。

<文/大貫憲介 漫画/榎本まみ>

【大貫憲介】

弁護士、東京第二弁護士会所属。92年、さつき法律事務所を設立。離婚、相続、ハーグ条約、入管/ビザ、外国人案件等などを主に扱う。著書に『入管実務マニュアル』(現代人文社)、『国際結婚マニュアルQ&A』(海風書房)、『アフガニスタンから来たモハメッド君のおはなし〜モハメッド君を助けよう〜』(つげ書房)。ツイッター(@SatsukiLaw)にてモラ夫の実態を公開中

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