アクセンチュア、ソニー、ユニリーバが推進するダイバーシティ。「多様な人材がいる方がイノベーティブなものが生まれやすい」

アクセンチュア、ソニー、ユニリーバが推進するダイバーシティ。「多様な人材がいる方がイノベーティブなものが生まれやすい」

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◆日本初のダイバーシティに関するキャリアフォーラム

 就活に際し、学生向けに毎年大規模なキャリアフォーラムが開催されていることは広く知られているが、「ダイバーシティ」をテーマに掲げたキャリアフォーラムも開催されていることをご存知だろうか。

 10月19日、渋谷区にて日本初のダイバーシティに関するキャリアフォーラム「RAINBOW CROSSING TOKYO 2019」が開催された。認定NPO法人ReBitが主催し、2016年にLGBTをテーマに始まったこのフォーラムは、今年で4回目。

 今回は「LGBT」「ジェンダー」「障がい」「エスニシティ」の4つをテーマに掲げ、属性・特性にかかわらず「誰もが自分らしく働く」ことを考える企画を多数開催。Google、IBM、資生堂などの有名企業を含む36 社が出展し、学生・就活生・社会人なと?約1000人か?来場した。

 出展企業のブースの他にも、「就活のときセクシュアリティをカミングアウトするか迷っている人集合!」といったリアルなテーマで話し合う「キャリアカフェブース」や、「ADHDの公認会計士が選んだシゴトの話」などをテーマに経験者が語る「経験談ブース」など、キャリアに悩む様々な人に寄り添ったコンテンツが目白押しだ。

◆多様な人材が集まっている方がイノベーティブなものは生まれやすい

 

 そんな中、講演会場では企業によるセッションも実施。「ダイバーシティ&インクルージョン推進と経営・組織〜2020年の先を考える〜」と題して、アクセンチュアのマネージングディレクターなどを務める篠原淳氏、ソニー人事センター・センター長の望月賢一氏、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングスのヒューマンリソース人事マネジャービジネスパートナーの岡田美紀子氏の3人が登壇。企業としての視点で、ダイバーシティを語った。

 アクセンチュア、ソニー、ユニリーバという、業種の異なる3社であるが、企業におけるダイバーシティの重要性に対する認識は同じようだ。「グローバルにコンサルサービスを提供している企業としては、イノベーティブでいなければならない。多様な人材が集まっている方がイノベーティブなものが生まれやすいのは明らか」と話すのは、アクセンチュアの篠原氏。ソニーでは、創業者である井深大氏が込めた「企業もお城と同じもの。強い石垣はいろいろな形の石をうまくかみ合わせることによってできる」という想いが、今も受け継がれているという。

 消費財を扱っているユニリーバでは、その事業の特性ゆえにダイバーシティにも積極的に取り組んでいるという。「ユニリーバの商品は、世界各国で1日に25億人もの人々に使われている。消費者の価値観が多様になればなるほど、多様な価値観に合う商品を提供しなければならない。会社としてだけではなく、事業としても、必然性があってダイバーシティに取り組んでいる」(ユニリーバ・岡田氏)。

◆働き方は、自分で「選べる」ということが重要

 社内での推進の動きも活発なようだ。ユニリーバでは、「WAA(Work form Anywhere & Anytime)」という「いつでもどこでも働ける」制度を導入している。これは、上司に申請すれば、理由を問わず、どこででも勤務でき、勤務時間も自由に決められるというものだ。期間・日数の制限もない。

 ユニリーバの岡田氏は「在宅勤務制度云々、という話ではない」と語る。「どこでいつ働くのかを、自分で決められるというのがポイント。従業員が自分らしく働けるように、『選べる』ということが大事」と話す。

◆テクノロジーを駆使した「ダイバーシティ」の叶え方

 また、テクノロジーを駆使して「働きやすい環境」を作っている事例もある。アクセンチュアでは、聴覚障害を持つ人でも会議に参加できるよう、他者の発言をリアルタイムで文字に起こすAIを活用しているという。また、社内のチャットボットを使って、簡単かつ機密性を担保した形で社内の手続きができるようにもなっている。

 「社内手続きは全て中国・大連で行なっている。例えばLGBTの人が、関連する社内手続きを行ったとしても、普段一緒に働いている社内の人間には誰にも知られずに済ますことができる」と篠原氏。カミングアウトを望まない人にとっては、過ごしやすい環境であると言える。

◆女性のみを集めたキャリア研修「こういう研修があること自体が嫌」

 「異なる見方・視点を大切にする、というのは、ソニーのメンバー誰もが信じて疑わないこと。会社、社会、社員、社員の家族、全てが持続可能であることが大事」だと話すソニーの望月氏。ソニーでは、社員の男女比はほぼ1対1だという(技術職を除く)。女性管理職も増えてきている中、女性だけを集めたキャリア研修を実施した際、ある20代の女性社員から「こういう研修があること自体が嫌いです」と言われたという。

 「こういう研修があるからこそ、差別的な考え方が無くならないのでは。こうしたキャリア研修をやるのであれば、男性も含めて一緒くたにやってほしい。そうでなければ、周囲の目線やマネジメントの考え方も変わっていかない」という意見に、望月氏は唸る。「若い世代は、男女の差を感じずに生きてきた。ちょっと世代が離れると、そうした価値観も変わっていく。社内でそういった発言をする人が出てきたことは、一つ壁を超えられたのかもしれない」。

◆「チームの一員として何が出来るのか、の方がずっと重要」

 当フォーラムを主催する認定NPO法人ReBitの代表理事である藥師実芳さんも、トランスジェンダーかつADHDであり、就活時に苦労を経験した一人だ。「社会人になってやっと、セクシュアリティやADHDであるということよりも、チームの一員として何が出来るのか、何で貢献できるのかということの方がずっと重要であると実感した」と話す。

 「ダイバーシティ&インクルージョンを推進する企業は増えてきている。自分なんか、と選択肢を狭めたり諦めたりせずに、こうした場を利用して情報を掴んでほしい。あなたがどんな生き方をしようとも次世代のロールモデルになっていくし、あなた自身にパワーがあるんだよ、ということを伝えたい」と熱く話してくれた藥師さん。マイノリティという言葉にとらわれず、誰しもが自分らしく働くける社会へ一歩前進したことを実感することのできるフォーラムだった。

<取材・文/汐凪ひかり>

【汐凪ひかり】

早稲田大学卒業後、金融機関にて勤務。多様な働き方、現代社会の生きづらさ等のトピックを得意分野とし、執筆活動を行っている。

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