ダメ上司が使いがちなビジネススキル。対立や反発を生み出す話し方とは?

ダメ上司が使いがちなビジネススキル。対立や反発を生み出す話し方とは?

photo via Pexels

 相手の考え方を、自分の考え方に誘導する方法として、「Yes But話法」がもてはやされた時代がある。相手の見解に対して、「確かにそうですね。しかし、私はこう思います」というように、相手の意見を肯定してから、それを否定する話法だ。

◆対立を生んでしまうYes But話法

 相手の考え方をいきなり否定してしまっては、相手を誘導するどころか、対立を激化させてしまう。そこで、この話法はまず肯定することから始めることで、対立を緩和することを目的としている。

 しかし、この方法、Yesの場面ではよいのだが、Butのフレーズに入った途端に、対立が生じてしまう。

 そこで、「Yes Yes But話法」なるものが考案された。相手の見解に対して深く同意すればするほど、その後、Butを繰り出したとしても、相手への共感が深い分、誘導しやすいという方法だ。

 しかし、この「Yes Yes But話法」、よかれと思ってYesを繰り返せば繰り返すほど、相手に対してバカ丁寧だという印象を与えがちで、かなり使い方の加減が難しい。

 やり過ぎると、まるで胡麻をするように手をすり合わせながら、「おっしゃるとおりでございます」「仰せに従います」と繰り返して言っているような状況になり、そこからButへの切り替えしがしづらくもなる。

 対立をできるだけ生じないようにして、相手の考え方を誘導する話法がないだろうか。20年来ビジネススキルを向上させる演習をしてきて、私の演習参加者が最も繰り出しやすく効果がある方法が、「同意+示唆」のリアクション誘導話法だ。

◆「同意+示唆」で対立を回避する

「同意+示唆」とは、相手の考え方に理解を示した後(同意)、相手の考え方を否定する表現につなげないで、「○○という方法も考えられるかもしれませんね」「○○という意見もあるかもしれませんね」と別の考え方を示唆する方法だ。

 そもそも、前段で同意していようといまいが、「AではなくBだ」と別の考え方を断言するから対立が生じるわけで、断言しなければ対立は生じない。「同意+示唆」は、断言しないで柔らかに相手を誘導する方法だ。

「同意+示唆」を繰り出したあと、相手が「まあ、そうだな」「そういう意見もあるな」というように、少なくとも反対しない見解を示してきたら、その分、誘導できたということになる。

 相手が「いや、そうではない」「そういう意見は当てはまらない」と反論で返してきたら、誘導できなかったことになるが、対立は生じていない。

 この対立が生じていないことこそに意味がある。その後の誘導の余地を残すからだ。しかし、対立してしまったら、その修復に時間がかかり、誘導できたとしても相当程度先のことになってしまったり、相当の労力を費やさなければならないことになる。

◆ボトムアップとトップダウンを使い分ける

 このように申し上げたり、演習していると、そもそも論として、「ビジネスにおいては、相手が反対しようが対立しようが、やり遂げなければならないことがある。従って、同意+示唆のような生ぬるい、まどろっこしいやり方ではダメで、強く断言して、あれこれ言わせず、やり通さなければならない」という見解に接することがある。いわば、トップダウンの指示・命令だ。

 私はトップダウンの指示・命令の必要性を否定しない。トップダウンでやらなければならない場面はたくさんある。法律を守る、コンプライアンスを遵守する、品質管理する……。誰が何と言おうとやり遂げなければならない。

 そういう場面では、トップダウンの話法を用いればよい。トップダウンには強制力が働き、必ずしも腹落ち度合が十分でなくなる、いわば見せ掛けの合意に留まってしまうというリスクがある。それを織り込んでもトップダウンでやらせきらない場面はある。

 しかし、トップダウンでやらなくてもよい場面や、トップダウンでやらない方がよい場面にまで、トップダウンの話法を繰り出していないかと問いたい。相手を巻き込みたいときは、トップダウンとは真逆のボトムアップ手法で巻き込めばよい。

 そのような場面では、やわらかに相手を誘導して、合意形成していけばよいのだ。それにより、見せ掛けの合意を回避することができる。「同意+示唆」の話法は、そのための有効なリアクション誘導話法なのだ。

◆相手の考え方に沿って誘導する

質問:「同意+示唆」はどのように行えばよいか

 相手の考え方に対して、「同意+示唆」によって誘導する話法は、具体的にはどのように行えばよいのでしょうか?

回答:相手の考え方に関連付けて、自分の考えを示唆してみる

 相手の考え方に対して同意したうえで、自分の考え方を示唆する方法です。自分の考え方を主張することと異なり、示唆するだけですので、相手の考え方に沿いながら誘導することができます。

 示唆する内容が相手の考え方に近ければ誘導の幅は小さくなり、抵抗感を持たせるリスクは小さくなります。示唆する内容が、自分の考え方に近ければ、誘導の幅は大きくなり、抵抗感を持たせるリスクは大きくなります。

【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第161回】

【山口博】

(やまぐち・ひろし)

グローバルトレーニングトレーナー。モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)、『クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい、2017年8月)がある

関連記事(外部サイト)