すぐに部下に辞められる上司に足りない3つの心理戦略

すぐに部下に辞められる上司に足りない3つの心理戦略

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 最近になって、メディアでよく見るようになった「退職代行業者」。彼らは退職を言い出せない会社員の代わりに、勤めている会社に連絡をして退職をする手続きを行ってくれる。インターネットで「退職代行」と検索すると、「退職成功率100%」「円満退社」などの広告が目に止まる。

◆問題は辞める「手段」ではなく「原因」

 彼らの存在は、さまざまなメディアで賛否両論が出ている。「退職代行業者は、退職を言い出せない社員が精神が追い詰められるのを救っている」や、「退職業者を使うと仕事への責任感を持たなくなる」といったようにだ。

 このような議論も見ていると、そもそも視野のフォーカスが狭すぎるのではないかと感じる。

 仮に退職代行業者を頼るという「手段」を封じたところで、また新しい手段を講じる業者が現れるだろうし、何も言わずに会社を辞めてしまう人もいるだろう。

 例えるなら、老朽化したバケツに一箇所空いた穴を塞いだところで、また新しい穴が空いてしまうようなものだ。そもそも、バケツを交換しなければ意味がない。

 なので、退職業者の善悪を議論するのはフォーカスが狭すぎており、本来議論すべきことは、退職代行業者を頼るという「手段」をとるに至った、「原因」についてだ。

◆業務的なコミュニケーションは逆効果

 その「原因」として考えられのは、職場での「非業務的コミュニケーションの不足」だ。「非業務的コミュニケーション」とは、その名のとおり仕事とは関係のない話をすることだ。

 実は仕事を辞める話というのは、業務的な話ではなく、非業務的な話だ。なぜなら、仕事を辞める理由というのは業務的なものではなく、基本的にプライベートな理由であり、非業務的な会話だからこそ、日頃から非業務的なコミュニケーションができる環境を作っておく必要があるのだ。

「職場でのコミュニケーション活性化を!」を掲げた企業でよく実施されるのが、面談として月一回時間を取って一対一で会話をする時間を取る定例的なコミュニケーションだ。

 しかし、これは業務的なコミュニケーションなので、実は職場環境の改善に一定以上の効果を発揮しないし、むしろ逆効果になる可能性がある。

 業務的なコミュニケーション時間を増やしたところで、上司は「よし、日頃からちゃんとコミュニケーションが取れている」と勘違いするようになるし、それで部下が辞めたら「あれだけ信頼してたのに!」と逆上するだろう。また、部下が自ら話をしようという主体的な意欲も失われていくだろう。

◆細かな仕草で印象は様変わり

 しかし、「では、部下と雑談をすればよい」というほどシンプルなものでもない。むしろ、部下から話をしに来たくなる状況を作る必要があるのだ。その方法として、以下の3つをご紹介する。

@ギフトによる「返報性の原理」を起こす

 人間は、「返報性の原理」という「人から何かをもらうと返さないといけない」心理作用を持っている。これを活用して、相手が返しやすい「恩」を売っておくのだ。例えば、安いお菓子をあげたり、コーヒーを一缶あげたりだ。

 そうすると、今度は相手から「恩」を返すために近づいてくるので、このときに話す機会を作ることができる。部下のなかでは、自ら上司と非業務的な接点を持つという小さな成功体験を積むことになるのだ。何事も最初の一歩が踏み出しにくいなかで、「返報性の原理」によって相手を意図的に踏み出させるのだ。

A雑談のときには手を止める

 上記のときに、PCやスマホ画面を見たまま話を聞いてしまう人がいるが、これは部下にとっては自己重要感を下げられる行為なので、絶対にやるべきではない。「上司に相談しても無駄だ……」と無力感を味わう部下の上司には、このような人が多いはずだ。忙しいのはわかるが、ほんの5分だけ手を止めて部下を見てあげてほしい。

◆他人を介して意思を伝える

B口コミ戦略

 部下との話の最後のほうに、「同僚の◯◯君は、仕事順調?」という言葉をかけるのだ。そうすると、話に来た部下が「上司の◯◯さんが、心配してたよ」と、別な部下に話してくれるかもしれない。

 直接的に自分に心配の言葉を投げかけられるよりも、第三者から誰かが自分のことを気にしてくれているのを聞くほうがポジティブな感情が働きやすいという「ウィンザー効果」というものがある。この効果と、「親近効果」という最後に話した情報のほうが脳に残りやすいという戦略を組み合わせて、部下にこちらの意図した行動を起こさせるのだ。

 上記の戦略をPDCA的に繰り返すことで、部下とのコミュニケーションは活性化していくだろう。

 しかし、すべてのテクニックの前提条件として、上司が人間的に信頼できるという前提がある。このテクニックを「部下を心配しての行動(For you)」か「部下を思い通りに動かすための行動(For me)」なのかによって、効果は異なる。あらゆる心理テクニックは人間性を前提とした信頼関係のうえに成り立つからだ。For me的、自己中な意図があるとテクニックは成功しない。目的を果たすにはFor you精神が必要だ。

 あなたが、部下のことを心配して、何か行動を起こしたいのであれば、これらの方法をオススメする。

<取材・文/山本マサヤ>

【山本マサヤ】

心理戦略コンサルタント。MENSA会員。心理学を使って「人・企業の可能性を広げる」ためのコンサルティングやセミナーを各所で開催。これまで数百人に対して仕事やプライベートで使える心理学のテクニックについてレクチャーしてきた。また、メンタリズムという心理学とマジックを融合した心理誘導や読心術のエンターテインメントショーも行う。クラウドワークスの「トップランナー100人」、Amebaが認定する芸能人・著名インフルエンサー100人に選出。●公式ホームページ ●Twitter:@3m_masaya ●Instagram:@masaya_mentalist

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