佐野SAで再度ストライキに突入。緊迫する現場で女性組合員が涙を流した理由

佐野SAで再度ストライキに突入。緊迫する現場で女性組合員が涙を流した理由

アピールをするケイセイ・フーズ労組の組合員ら

 佐野サービスエリア(SA)で今年8〜9月にストライキを実施したケイセイ・フーズ労働組合が11月8日の午前7時から再び時限ストに踏み切った。組合は会社に対し、総務部長の加藤正樹さん(45)を復職させることや今夏のストライキが適法だと認めるよう求めている。

 また、サービスエリアの事業を展開するNEXCO(東日本高速道路株式会社)や同社の子会社であるネクセリア東日本株式会社の責任を問い始めたところに、今回の争議の特徴がある。

◆スト破りで緊迫する現場

 「スト破りだ!」

 午前6時半過ぎに佐野SAに到着した筆者の耳に、「スト破りだ!」という叫び声が届いた。ケイセイ・フーズ労組の組合員や支援者たちが慌ただしく建物の裏手へと掛けていく。

 そこには、レストランの開店準備に向かう何人かの姿があった。労組がストライキを打っても営業できるように、会社側が人を集めたようだ。そのうちの一人は、福田紳一社長の経営する建設会社の社員であると名乗った。彼らは時限ストの間中、レストランの入り口に立って組合員と対峙し続けた。

 一方、組合員たちはレストラン前でプラカードを掲げてアピールを続ける。「加藤さんを戻してください」「交渉に誠実に応じてください」と声を上げる組合員らの表情は痛切そのものだ。

◆加藤総務部長の復帰が組合員の願い

 今回のストライキの目的の一つは、加藤さんがきちんと職場に戻れるよう会社に認めさせることだ。

 今年の7月、佐野SAを運営するケイセイ・フーズは、銀行からの融資を凍結され、取引先への支払いが遅延。次第に商品が納入されなくなっていた。加藤さんは、取引先に掛け合い、代金を前倒しで支払う代わりに、きちんと納品してくれるよう求める覚え書きを作成した。ところが会社側は突然覚え書きを反故にするとともに加藤さんに解雇を通告。これが前回のストライキの発端だ。

 その後、9月には経営陣が退き、ストライキが一度は終息した。しかし新しく就任した福田社長の下でも、加藤さんへの退職の強要がやむことはなかった。それどころか11月6日には、加藤さんに自宅待機を命じたのだ。これが今回、ストライキに踏み切ったきっかけとなった。

◆ストライキをしたら損害賠償を請求される?

 もう一つ労組が求めているのは、今夏のストライキが正当なストライキであると会社側が認めることだ。

 ケイセイ・フーズは、ストが違法なものであったと主張し、1日当たり800万円を下らない損害を被ったとしている。しかし言うまでもなく、ストライキは労働者の権利として憲法で保障されている。あるストが正当なものとされるためには、事前に団体交渉を尽くしたかどうかといった条件を満たす必要はあるが、佐野SAのストが違法である可能性は極めて低い。

 また、これらの要求を会社側に認めさせるため、労組はNEXCOとネクセリア東日本にも責任を問うている。ケイセイ・フーズを選んでサービスエリアの運営を委託しているネクセリアにも責任の一端があるはずだからだ。

◆「会社側が話し合いに応じる気配はない」

 加藤さんは、労使の対立が続く状況に対し、「会社側には対話に応じる姿勢がない」と嘆く。

「正直、ストライキなんてやりたくありません。でも会社側が話し合いに応じる気配はなく、ストをやらざるを得ない状況に追い込まれています。

 サービスエリアは、運転手の人たちが休憩をする場所。きちんと運営しなければ、高速道路の安全性さえ損なわれかねません。NEXCOやネクセリアにも事態の解決のため、協力してほしいと思います」

 ストライキを継続するかどうかは未定だが、加藤さん自身の復職や損害賠償の取り下げは引き続き要求していくという。

 特に加藤さんの職場復帰は、SAで働く組合員らの悲願だ。およそ5年間パートで働いてきたという女性は、「加藤さんが来てくれたことで、ヒドい経営体制から解放されたんです。加藤さんは以前の上司とは全く異なり、私たちスタッフを気遣ってくれます。個人の意見を聞いてくれるんです」と話す。

 加藤さんは、壊れたまま放置されていたエアコンの修理を会社に要求するなど、職場環境の改善に取り組んできた。だからこそ組合員からの信頼が厚いのだ。

 別の女性も「加藤さんを私たちから取り上げないでください」と涙ぐんだ。全員で職場に戻り、加藤さんの下でSAを盛り上げていきたいという。

 スタッフにこれだけ慕われている加藤総務部長の解雇になぜ会社は拘泥するのか。労使関係の対立を超えて個人攻撃にもなっているケイセイ・フーズ側の姿勢。決して許されるものではない。

<取材・文・撮影/HBO編集部>

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