「もっと安くならない?」 値切ろうとする取引先をかわす話術とは?

「もっと安くならない?」 値切ろうとする取引先をかわす話術とは?

KY / PIXTA(ピクスタ)

 筆者が営業話法の演習プログラムを実施していて、最も多く寄せられる質問に、「商談が値引き交渉になってしまう」というものがある。

◆価格競争で負のスパイラルに

 顧客から「よい製品だということはわかっているが、価格が高い」というような反応を受けて、「では、いくらなら買ってくれるか」という話になるものだ。いくらならいい、悪いという話が続き、値引き交渉になってしまうというわけだ。A社はいくらだ、B社はいくらだという話になり、競合他社を巻き込んだ価格競争に陥ってしまうこともある。

 では、値引き交渉に陥らない方法はないだろうか。筆者が20年来演習してきて、最も効果が高い方法がある。それが、「結語転換話法」だ。

 結語転換話法とは、「製品はよいが、価格が高い」という顧客からの反応に接したときに結語転換し、「価格が高いと思っているが、製品はよいと思っているのですね」とリアクションする話法だ。それに対して、顧客から「まあそういうことだ」という反応が返ってきたら、しめたものだ。話題を価格から、製品の良し悪しに変えることができる。

◆結論の内容を入れ替える

 顧客から「製品はよいが、価格が高い」と言われて、「価格は高くないんです」と顧客の見解を否定すると、応酬になって収拾がつかなくなる。また、「では、いくらなら買ってくれますか」「安くします」と返してしまえば、価格交渉に陥ってしまう。

 日本語は文末に結論がくる。文末の「価格が高い」に対して、高い、高くないという応酬をしたり、いくらならいいのかという交渉をしてしまうのは、顧客の言ったことに振り回されているだけで、営業担当者としては顧客をハンドルできていない状況だ。

 それをたった一言、「価格が高いと思っているが、製品はよいと思っているのですね」と結語転換すれば、話題を製品の良し悪しに変えることができる。さらに、あらためて製品のよさを訴求できる。

 そもそも「製品はよいが、価格は高い」と言っている人は、一定程度、製品のよさを評価しているが、価格ほどには評価していないと言える。製品のよさに話題を変えて、価格以上に製品の価値があることを伝える機会をつくれるのだ。

◆ポジティブな反応を引き出して構文に

 このように演習していくと、そもそも顧客の反応が「製品はよいが、価格が高い」という構文ではなく、「価格が高い」とだけ言われた場合は、結語転換話法は使えないのかという意見に接することがある。

 「価格が高い」とだけ言われた場合は、「○○はよいが、価格が高い」と顧客に言わせさえすれば、結語転換話法へ導くことができる。そのためには、顧客から「価格が高い」と言われたら、「そうお考えなのですね。何か気に入っている点が、もしあれば教えていただけますか」と聞いてみればよい。

 「製品はよいと思っている」という答えが返ってきたら、「価格が高いと思っているが、製品はよいと思っているのですね」と返せばよい。そうすれば、製品の良し悪しの話題に誘導することができる。

 間違っても「製品はよいと思っているが、価格が高いと思っているのですね」と返してはいけない。結語の価格の話になって、価格交渉に陥ってしまうからだ。

 この結語転換話法に持ち込むことができると、営業の成約率が上がる。顧客が反応を示さなかった場合には、「何か気になることはありませんか」と聞けばよい。「価格が高い」という返答があれば、「ほかに何か気になっている点はありませんか」と聞いてみればよい。「製品はよいと思っている」という返答があれば、これで「価格が高いと思っているが、製品はよいと思っているのですね」という構文が成立するのだ。

◆前段と後段を入れ替える

 質問:「同意+転換」は どのように行えばよいか

 相手の考え方に対して、「同意+転換」によって誘導する話法は、具体的にはどのように行えばよいのでしょうか?

 回答:前段と後段を転換する

 相手の考え方が、「Aだけれども、B」というように、「Aについて一定の評価はしているものの、だから反対だ」という構造だった場合、前段と後段を転換し、「Bだけれども、A」というようにして、「Bのように考えているけれども、Aについては認めている」と言い換える方法です。

 日本語は、結論が後段に位置されがちですから、前段と後段を入れ替えて、後段にAを持ってくることによって、相手の考え方をBではなくてAに誘導しやすくなります。同意+転換を行ったあとは、Aについて議論がしやすくなります。

【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第162回】

【山口博】

(やまぐち・ひろし)

グローバルトレーニングトレーナー。モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)、『クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい、2017年8月)がある

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