日本カジノの利権を握るであろう運営会社はどこが濃厚なのか?

日本カジノの利権を握るであろう運営会社はどこが濃厚なのか?

シンガポールのマリーナ・ベイ・サンズ Jason Goh via Pixabay

 前回は、日本の政治家が取らぬ狸の皮算用をしている「カジノ利権」について、本当に甘い汁を吸えるのは誰なのかを考察したが、今回はカジノ候補地とその運営会社としてどこが濃厚なのかを考えたい。

◆世界における2大カジノの収益性

 2大カジノといえば、ラスベガスとマカオである。

 ラスベガスを含むネバダ州では、カジノの売上高に課税して税収を確保するために1931年にカジノが合法化された。ネバダ州に限らないが、先住民族(インディアン)に対する恩恵としてカジノの営業を認めているケースもある。

 ラスベガスを含むネバダ州には2017年時点で272のカジノ施設があり、総売り上げは2.9兆円となっている。その総売り上げの42%がカジノそのものの売上である。

 一方で1999年に中国に返還されたマカオではポルトガル統治下の1847年にカジノが合法化されていたが、戦後のカジノ利権はスタンレー・ホー率いる澳門旅游娯楽有限公司が独占していた。

 スタンレー・ホーは香港の裕福な家庭に生まれたが後に没落し、若い頃は苦労したようである。苦学して香港大学に入り、広東語のほか英語、日本語、ポルトガル語を流暢にしゃべるようになる。第二次世界大戦中は単独で中立地だった(カトリックの借用地だったから)マカオに渡り、日本人が経営する貿易会社に勤務する。その会社の危機を救って得たボーナスで香港に建設会社を設立し、戦後の建設ブームで会社は大盛況となる。

 スタンレー・ホーはその利益でマカオのカジノの権利を取得し、リスボアなど主要ホテルや香港との間の高速船なども独占して巨万の富を得る。ただ、その富を決して独り占めせず、多額の納税を続けた。その結果、30万人のマカオ市民は今も教育費や医療費の大半が免除されている。

 1999年にマカオが中国に返還されたあとには、中国政府がカジノの収益性に目をつけライセンスを6つだけ発行して直接管理に乗り出す。現在98歳のスタンレー・ホーはさすがに第一線を退いているがライセンスの1つを今も確保してカジノビジネスを続けている。中国政府との関係は良好のようである。中国政府が発行した6つのライセンスとは、米国のサンズ、Wynn、MGM、香港のギャラクシーとメルコリゾーツ、それにスタンレー・ホーのSJM(現社名)である。

 マカオのカジノは2017年時点で40施設あり、総売上高はラスベガスを上回る3.7兆円である。またラスベガスとは大きく違い、総売り上げの92%がカジノそのものの売上である。マカオが発展した大きな理由は、中国共産党幹部への賄賂の支払いや中国人のマネーロンダリングに利用されていたからであるが、最近の綱紀粛正と米中貿易戦争による中国経済の減速に伴い、その成長は鈍化するものと思われる。

 現在、全世界では130か国以上でカジノが合法化され、4000以上のカジノ施設があり、その総売上高は10兆円を超える。しかし、日本におけるパチンコ産業の売り上げは、合法化されているとは言えない中で1892社(2018年時点)。総売り上げは減少し続けているが、いまだ15.8兆円もある。

 つまり、日本1国のパチンコ産業の総売り上げが、世界中のカジノの総売り上げの1.5倍以上もある。カジノカジノと騒ぐ前に、この問題を直視しなければならない。

◆日本におけるカジノ運営会社はどこに?

 そんな世界のカジノ情勢であるが、主要なカジノ運営会社のなかから日本のカジノ運営会社に名前が挙がっている会社だけご紹介しておきたい。

 まずはラスベガス・サンズ。シェルドン・アゼルソン(85歳)のカジノ運営会社である。アゼルソンはウクライナ出身のユダヤ人であり、トランプというより米政界の(共和党も民主党も)大スポンサーである。その目的はカジノではなく、シオニストとして世界のユダヤ人を支援しているため、当然、ユダヤ人が影響力を持つ米国経済にも大きな発言力を持つ。

 アゼルソンがカジノ業界に進出した時期は意外に遅く、1995年に保有するコンピューター関連展示場のコムデックスを8.6億ドルという法外な値段でソフトバンクに売却してからである。アゼルソンはその資金で、ラスベガスで老朽化していたサンズ・ホテルを会社ごと格安で入手し、爆破解体して1999年にベネティアン・ホテルとして開業している。

 サンズはラスベガスでは後発だったため海外進出に注力し、2004年にはサンズ・マカオ、2007年にはベネティアン・マカオ、2010年にはシンガポールでマリーナ・ベイ・サンズを開業し、世界の最大手カジノ運営会社となる。

 つまり、アゼルソンはコムデックスを売りカジノホテルと入れ替えて成功したわけであるが、その理由は同じラスベガスにあるコムデックスの巨大展示場に来るコンピューター関係者はカジノなどに興味がなく、ホテルが儲からないため宿泊を断られるケースが多発していた。そこで、コンピューターではなくカジノに興味を持つ人々を対象にしたホテルの建設を思いついたそうである。片やソフトバンクが高値で買ったコムデックスはその後間もなく倒産している。アゼルソンはその恩返しとでも思ったのか、(たぶん)孫社長を通じて安倍首相をトランプに引き合わせたはずである。こうして、アゼルソンは安倍首相に恩を売り、日本におけるカジノ運営の1つ(しかも最大のもの)を確保したと考えられる。

 アデルソンはつい最近まで大阪でのカジノ運営に興味を示していたが、ここにきて横浜あるいは東京(ともに港湾局が関係していることを忘れないでほしい)のカジノが具体化しそうになると、さっさと乗り換えてしまった。乗り換えるということは、アゼルソンの日本における政治力からして横浜港か東京湾のどちらかにカジノが設置されることが「確定」となる。

 それでは横浜港と東京湾のどちらなのか?であるが、双方の港湾利権をどう振り分けるのかという話である。現時点ではどちらとも言えないが、どちらかがカジノ利権を取り、どちらかが双方の港湾利権を取ることになるはずである。あえて予想すると、空港(羽田)が近い東京湾がカジノ、港湾設備を拡充して場所も広い(米陸軍の借用地まである)横浜港が港湾利権だと思う。

 横浜港のカジノについては、これまで何の発言もしなかった林文子市長が、横浜を地盤とする菅義偉官房長官の意向を忖度して突然に公表してしまったため、横浜港のドンである藤木幸夫会長が激怒している。スジを通せばよかっただけである。

 このサンズと並んで、日本のカジノ利権に食い込んでいるのがMGMリゾーツ・インターナショナルである。サンズに去られた大阪も、次の候補だったMGMリゾーツに乗り換えたようである。GMの大株主としても知られ、世界の自動車業界の再編にも大きな影響力のあったカーク・カーコリアンを総師に、ミラージュやベラッジオなど経営不振となったカジノホテル(どちらもスティーブ・ウィンのコーディネート)を傘下に収めて大きくなったカジノ運営会社である。

 このMGMとサンズは日本のカジノ運営に「当確」していると考えていいだろう。問題は残りの有象無象である。

◆官邸(菅官房長官)に近いハードロック・インターナショナル

 官邸(菅官房長官)主導である北海道(苫小牧)のカジノ運営会社として名前が挙がっているは、ハードロック・インターナショナル。名前の通りあのハードロックカフェを運営している会社だ。カジノホテルも運営しているが、規模は小さく実力は未知数である。つまり北海道(苫小牧)もハードロックもまだまだ「当確」ではない。

 

 ちなみにその苫小牧のカジノ予定地の隣には、森トラストが広大な土地を保有している。その政治力が、いまだカジノ誘致を検討しているにすぎない北海道・苫小牧を有力候補に押し上げたと考えられる。

 一部の週刊誌が、東京オリンピックのマラソンと競歩が突然に北海道に移されたのは、このIR誘致と関係があるように書いているが、カジノは米国資本、オリンピックは欧州貴族の利権で何の関係もない。

<文/闇株新聞>

【闇株新聞】

‘10年創刊。大手証券でトレーディングや私募ファイナンスの斡旋、企業再生などに携わった後、独立。証券時代の経験を生かして記事を執筆し、金融関係者・経済記者などから注目を集めることに。2018年7月に休刊するが、今年7月に突如復刊(「闇株新聞」)。有料メルマガ配信のほか、日々、新たな視点で記事を配信し続けている。現在、オリンパス事件や東芝の不正会計事件、日産ゴーン・ショックなどの経済事件の裏側を描いた新著を執筆中

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