「男が家事・育児、いいじゃないか!」主夫として生きる男性が見つけた人生の豊かさ

「男が家事・育児、いいじゃないか!」主夫として生きる男性が見つけた人生の豊かさ

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 男性は仕事第一の生き方を求められがちだが、中には家庭の優先度を上げ、家事と育児をメインで担う「主夫」を選ぶ男性がいる。

 専業、兼業を問わず家庭に重きを置いた暮らしを経験した3人の30代男性に、主夫になったきっかけやメリットについて聞いた。

◆妻は「働きたい」、私は「主夫になりたい」お互いの希望が一致

「専業主夫になることに抵抗はまったくありませんでした」と語るのは、河内瞬さん(@syufu_desu)。現在は主夫業に加え、ブログや漫画で発信している。

 以前は会社員をしていたが、職場環境に不満を抱え、退職を考え始めていた。そんなとき、専業主婦をしながら資格取得をしていた妻が「働きに出たい」と言うようになったため、夫婦で役割を変えることにした。

「私たちの場合、夫婦の希望が一致していたので展開がスムーズでした。私はもともと家事も育児もしていたので、なんとかなると思っていました。勤務先には詳しい退職理由を告げていないので、主夫になることに反対する人は誰もいなかったです」

 こうして専業主夫としての生活が始まったが、河内さんはあまりの忙しさに驚く。

「起床後は朝食を準備して、子どもたちを起こしてごはんを食べさせ、洗濯や買い物、掃除をします。ひと息つく暇もなく、夜は献立づくりですよ。それらを、子どもを見ながらするので大変です。

 家事と育児が交互または同時に発生する生活が、延々と続くわけです。出口のないトンネルをずっと歩いている感覚でした。はっきり言って、これを一生続けるのは無理だなと心の底から感じましたね……。そのときの驚きは、いまでも鮮明に覚えています」

◆子どもとの時間が増え、「自分が家族の中心にいる感じがする」

 自分で選択して専業主夫になったものの、生活や家庭内での役割の変化のほか、多忙な日々で疲れた気持ちの整理がうまくできず、葛藤したことがある。

 悪戦苦闘する河内さんを見た妻が発した「SNSで発信したらどう?」との提案に、河内さんは希望を見出す。

「ブログを開設して、そこに日々の生活で感じたイライラや悩みを吐き出すようになりました。同じような悩みを抱える人とオンラインで共有するうち、気持ちが楽になっていきました。

 それまでは頭の中を家事と育児が占めていたのですが、ブログ発信を通じてストレスが和らぎました。一日中家のことをしていると、息が詰まってきますからね。家事と育児以外に打ち込めることを見つけたから、主夫生活をここまで続けられたと思います」

 悩んだ時期はあったが、河内さんは「家族の中心にいる感覚があります」とメリットを語る。自宅中心の生活を送ることで子どもと接する時間が圧倒的に増え、成長を目の当たりにすることで、「自分は家族の一員である」との気持ちが強まったことも大きい。

◆1日があっという間。だからこそ妻には自分の時間を大切にしてほしいと思うようになった

 続いて、自宅を主な職場として働きながら家庭に比重を置き、「兼業主夫」として生活する男性に話を聞いた。自営業をする大谷さん(仮名)に話をうかがった。

 大谷さんの妻は出産後、1年間の育児休業を取得。そのころ大谷さんは仕事で外出することが多く、日中はもちろん夜にも家を空ける日があった。家事と育児の主な担い手は妻で、大谷さんは「このままではいけない」と感じるようになる。在宅メインで働ける仕事を優先し、兼業主夫をすることを決意。

「当初妻は『あなたがやりたいことを邪魔したくないから、いままで通り私が家のことをするよ』と言ってくれました。でもそれだといつか妻が疲れてしまいます。私にとって妻が元気でいてくれることが何よりも大切なので、気持ちだけを受け取り、家事と育児を私が多く担当することにしました」

 河内さんと同じように、大谷さんも日中の家事の多さに驚いたという。

「子どもを保育園に送って洗濯物を干し、掃除をし、ランチを食べ、家の片づけをし、買い物に出かけるなどしているとあっという間に時間が経ってしまいます。家事を終えて仕事をすると、自分のことをする時間的な余裕がほぼありません。率直に言って、毎日このような生活を送っていた妻はすごいと思いました」

 ホッとする時間もないことに気がつけたからこそ、大谷さんは「妻にも自分の時間を持ってほしい」という気持ちが強まった。

「妻が自室で漫画や音楽を楽しんでいるとき、子どもが入っていかないように別室で私が遊び相手をします。いまの生活はまだ始めたばかりですが、妻は以前より負担が減って笑顔が増えました」

◆地域のつながりを感じ、「この街に住んでいる」気持ちに

 続いては、1年半の育児休業中に期間限定で専業主夫を経験した吉田さん(仮名)のケース。

 もともと妻はキャリア志向で仕事が大好きだったため、吉田さんは「自分の方が家事や育児に向いているのでは」と考えていた。

「育休取得と主夫になることを提案したとき、妻からは『本当にそれでいいの?』と確認されたました。でも私は『2人にとって一番自然な形』だと思っていました。

 男性の育休については職場の理解が得られないケースがありますが、幸いにして私の勤務先は快い対応をしてくれました。とはいえ、『売り上げをあげる人材がいなくなり残念』という圧は感じましたね。それでも、長い人生の中で子育てにコミットできる機会の方が貴重だと信じていました」

 吉田さんも家事と育児の大変さを感じたが、それによって自分の行動パターンが変わるというメリットがあった。

「育児では、想定外のことの連続です。子どもと一緒だと思い通りにいかないのでストレスが溜まります。

 以前は計画を立てて淡々と実行するロボットみたいなタイプだったのですが、主夫生活で感じたストレスを妻に少しずつ打ち明けるようになりました。黙って我慢するタイプから、感情を表現するタイプに変わったわけです。妻が仕事から帰ると、待ってましたとばかりに今日の子どもの様子を伝えたこともありましたね」

 子どもを持つと、普段の買い物や散歩などで、外出する機会が増える。その中で吉田さんは、地域のつながりを意識するようになった。

「近所で知り合いができると、『この街で暮らしているんだな』と思えます。地域の方との交流を通じて、あらためて地元の良さを実感できました。これは、職場と家を往復する生活では感じられないことです」

◆仕事だけが、男性の役割ではない

 子どもの成長を隣で見て感動したり、地域のつながりの素晴らしさに気づいたりと、主夫経験を持つ3人は人生に豊かさを感じている。これらは仕事だけの日々では気づきにくいことだ。

 とはいえ、主夫は家庭と仕事の両立策のひとつでしかない。家庭によって事情は様々なので、すぐに家庭優先の生活を送れないこともある。

 しかし、「いまの役割から絶対に抜け出せない」と思い込み、身動きがとれずに悩んでいる人にとっては、「こんなやり方があるのか」と、生き方の選択肢を感じてもらえたのではないかと思う。

 河内さんのように離職して専業主夫を選択するのは難しくても、吉田さんのように期間限定でトライするやり方もある。家事と育児の大変さ、その中で感じるさまざまな気づきは、その後の夫婦関係や人生に良い影響をもたらすはずだ。

 最後に、いま育休を取りたいけれど迷っている、家庭に比重を置くことにためらいがあると思う男性に向けて3人がメッセージを寄せてくれたので紹介したい。

「仕事は会社のためにするのではなく、自分(家族)のためにするものだと私は思います。仕事は大切ですが、それって、プライベートが充実して初めてできることではないでしょうか。仕事と育児を両立させたいのであれば、まずは家族優先思考にする。これに尽きるかと思います」(河内さん)

「仕事をしたい妻、家庭を支えたい夫がいてもいいと思います。役割を変えることで一時的に収入が下がったり、家事が非効率になったりしたとしても、夫婦が納得して選んだことであれば、家族の関係は良くなると信じています」(大谷さん)

「男性=仕事という価値観はもう常識ではなくなりつつあリます。仕事だけが男性にとってのメインの役割ではないはず。家事と育児も立派な『仕事』です」(吉田さん)

<取材・文/薗部雄一>

【薗部雄一】

1歳の男の子を持つパパライター。妻の産後うつをきっかけに働き方を見直し、子育てや働き方をテーマにした記事を多数書いている。

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