一昔前よりトラック運転手は低所得に!? 通り一遍な規制が、逆に労働環境悪化や低所得を招くという現実

一昔前よりトラック運転手は低所得に!? 通り一遍な規制が、逆に労働環境悪化や低所得を招くという現実

トラックドライバーの労働環境改善には抜本的な対策が必要

「トラックドライバーが一般ドライバーに知っておいてほしい“トラックの裏事情”」をテーマに紹介している本シリーズ。

 前回から「運送業界の働き方改革とドライバーの給与形態」について、前編と後編に分けて紹介しているが、前編の「トラックドライバーの働き方」に引き続き、今回は後編として「トラックドライバーの給与事情」について述べていきたい。

◆少し前より給与が下がったのに労働環境が悪化している

 厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、トラックドライバーの年間所得額は、全産業平均491万円と比較して、大型トラック運転者は454万円と約1割低く、中小型トラック運転者は415万円と約2割低い。

 無論、条件によるため一概には言えないが、基本的には車体が大きく長く、そして1運行の走行距離が長くなるほど、給与は高くなる傾向にある。

「そこそこもらっているじゃないか」と思われるかもしれないが、前回紹介した通り、トラックドライバーの拘束時間は大変長い。

 また、1990年の規制緩和前、走れば走るだけ稼げた時代には、1,000万円を超える年収があったドライバーも多く、「トラックドライバー=ブルーカラーの高収入職」と位置付けられていたこともあった。それが現在においては、「給与は下がったのに労働環境は過酷化する」という現象が起きているのだ。

◆「ドライバーのため」の規制や法律が逆に足枷に

 収入に反比例して増えたのが、交通ルールや労働環境を重視する法律や規定だ。

 道路交通法の改正による駐停車禁止の厳罰化や、トラックの高速道路90km/h制限、そして運転業のみに適用される「改善基準」といった規定(前編参照)などがそれにあたる。

 中でも、「4時間走ったら30分休まねばならない」や、「その日の勤務と翌日の勤務までは8時間以上の休息を取らねばならない」といった改善基準のルールは、トラックドライバーのためを思って作られたものではある。が、休みたくてもトラックを停める場所がないこと、無駄な待機時間が増えて効率的に働けないこと、さらには、仕事(運転)の調子が上がってきたころに強制的に休まねばならないことなどを鑑みると、こうしたルールは、ドライバーをむしろ走りにくくさせる「足かせ」となることもあり、労働環境の悪化や低所得に繋がる原因にもなっている。

◆「連休」が増えたことで収入が減る長距離ドライバー

 さらに彼らの給与を不安定にさせるものに、昨今の「連休ブーム」がある。

 ハッピーマンデー制度(祝日を月曜日にずらす制度)による3連休、「過去最長」と話題となった今年の10連休のゴールデンウィーク、「山の日」なる謎の新祝日を設置してまで長期休暇化させる盆休みに、秋には「シルバーウィーク」なるものまで登場。

 このように、昨今の日本人の「休日」や「連休」に対する情熱を並べると枚挙にいとまがない。

「働きすぎ」のイメージがあるが、実は日本の祝祭日の多さは世界的に見ても大変多く、海外には、有給を取ってバカンスに行く人はいても、日本のように、祝祭日で国全体が4日以上連休になること、または連休にしようとするところは、ほとんどない。(参照:「祝祭日数世界1位!日本人は休みすぎ!?」|PRESIDENT ON LINE)

 こうした休日や連休に対して、地場でコンビニ配送などに従事するルート配送車は、普段以上の需要に対応すべく、休み返上で仕事をすることになる。

 が、その一方、物流センターなどへの輸送を担う中・長距離ドライバーの多くは連休中、必然的に休まざるを得なくなる現実がある。休みの間、センター自体が閉まるからだ。

「休まざるを得なくなる」としたのには、トラックドライバーの給与形態にある。

 長距離ドライバーの給与形態は、

@「月固定給+歩合給+諸手当」

A「日給+歩合給+諸手当」

のいずれかであることが多く、2つのうちでもAの「日給月給制(+歩合制)」で働く人が多い。

 歩合は、「走れば走るだけ稼げる」と聞こえはいいが、それは逆に言えば、「走らなければ稼げない」と同義。仕事がない日は、給与は原則支払われない。しかし先述通り、連休は荷主が休業するため、彼らは「走りたくても走れない」状態となるのだ。

 つまり、休日や連休を増やそうとする昨今の「“休み方”改革」は、皮肉にも彼ら日給+歩合で走るトラックドライバーの収入を不安定にさせる大きな要因になっていることになる。

◆通り一遍な「働き方改革」は逆にドライバーを窮地に追い込む

 ゆえに、彼らにとって「連休」は、体を休ませながらも、気持ちの面では心から休みを満喫できない日々。無論、会社規模や契約内容によって全てのドライバーがこれらに当てはまるわけではないが、中には、「大型連休なんていらない」「連休中はアルバイトをしていた」と嘆くドライバーも少なくないのだ。

 ちなみに、長距離ドライバーの他にも、ダンプカーやミキサー車、建設機械運搬車もAの給与形態である割合が高い。彼らは「現場」への搬入出がメインで、会社によっては、現場が天候不良で作業中止になると、その日の稼ぎは得られないこともある。

 拘束時間は長いのに、トラックドライバーが見合った収入を得られない、連休を心から喜べないのには、こうした運送業界の給与形態にも原因がある。彼らが本当の「働き方改革」を目指すためには、もっと抜本的なところから見直さねばと思えてならない。

<取材・文/橋本愛喜>

【橋本愛喜】

フリーライター。大学卒業間際に父親の経営する零細町工場へ入社。大型自動車免許を取得し、トラックで200社以上のモノづくりの現場へ足を運ぶ。日本語教育やセミナーを通じて得た60か国4,000人以上の外国人駐在員や留学生と交流をもつ。滞在していたニューヨークや韓国との文化的差異を元に執筆中。

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