真っ赤なロードスターで「日本一旨い」焼き芋を売る男がいた!

横浜みなとみらいに"日本一旨い"焼き芋屋 真っ赤なマツダ・ロードスターで焼き芋販売

記事まとめ

  • 横浜みなとみらい21を中心に焼き芋を販売する「えるろこロド芋!『鬼いちゃん』」
  • 真っ赤なスポーツカー「マツダ・ロードスター」の荷台に焼き芋窯を乗せている
  • 車関係のイベントに呼ばれることもあり、筑波のスピードウェイにも呼ばれているとか

真っ赤なロードスターで「日本一旨い」焼き芋を売る男がいた!

真っ赤なロードスターで「日本一旨い」焼き芋を売る男がいた!

青い空に映える煙突。これからは焼き芋の美味しい季節だ

 横浜・みなとみらい21(MM21)エリアを中心として”日本一旨い”焼き芋を移動販売しているお芋屋さんがいる。「えるろこロド芋!『鬼いちゃん』」。驚くなかれ、真っ赤なスポーツカー「マツダロードスター」の荷台には、焼き芋窯が乗っている。

◆2年前から始めた「ロド芋!」

「マツダ・ロードスター」で焼き芋販売をやっているのは、横浜市在住の井上昌さん(28)。2年くらい前、「ロド芋!」というブランド名を引っ下げて営業を始めると、その物珍しさも手伝って、SNSや口コミで一気に広がった。今では、リピーターもいる。井上さんは、定休日を除いて、販売をする場所をツイートしている。最近は、みなとみらい駅前や横浜駅ロータリー、横浜赤レンガ倉庫で販売することが多い。最初は、1台でやっていたが、今年6月に2台体制になった。そして、つい最近3台目も加わった。今回、取材した日本大学芸術学部江古田キャンパス(東京都練馬区)で行われた芸術祭には、3台の「マツダ・ロードスター」が並んだ。あまりにも壮観だ。

「今、通常営業で2台使っています。自分を含めた3人が交代で販売しています。自分が乗っている車は、マツダ・ロードスターの3代目でNCというタイプになります。ドリフト用のクルマなので、乗ってて楽しいクルマです。3台目は、カーマニアの方々の車になります。こちらは、イベント専用車両になります。クルマのオーナーの方々にも(焼き芋ロードスターを)体験してもらおうと思って始めました。ロードスターのNA、NB、NCというタイプならオッケーです」(井上昌さん)

◆「遊び」だからこそどんどんアイデアが出る

 筆者は、幾度となく通って焼き芋を食べてきた。横浜まで電車に乗って行くのだ。片道1時間以上かかる。でも、それでいい。お世辞なしに言うが、「本当に旨い。はっきり言って旨い」。普通、焼き芋というのは、「ホクホクで甘い」のが売り物だ。ところがそんなレベルのものではない。「トロトロで甘い。甘い。旨すぎる!!」のだ。炭を使ってじっくりと焼き上げたお芋からは、『蜜』が染み出している。この『蜜』が口の中に入ると「ジワァ〜〜」っと広がる。スプーンで『蜜』をすくって食べている人もいる。

 使っているお芋は、千葉県産の「べにはるか」だ。1本300円〜800円で販売しているが、時々、1500〜2500円のビッグサイズを販売することもある。2500円のものは、1.5キロもある。芸術祭では、500円と800円のものが飛ぶように売れていた。

「自分の場合、『遊び』なんです。(クルマは、)おもちゃなんですよ。『遊び』としてやっていけばいくほど、どんどんアイデアが出るんです。自分の最低の収入を決めておいて、それを確保できるようになったら、どんどん攻めていくことが大切です。おもちゃを使って、お金を生み出すことは楽しいです。でも、成功したいと思ったら、遊びだけを求めてもダメですよね。商売だけを求めていてもダメです。そのバランスが大切だと思います。8万キロくらい乗ったときに『このクルマで何かを始めてみよう』と思ったんです。それが焼き芋屋でした。マツダ・ロードスターでやり始めたのがインパクトになったと思います。今は、お手伝いをしてくれる人が入ったので、みなさんの要望に応えることができるようになりました」(井上昌さん)

◆奇を衒うだけでなく芋の研究も

 電気式自動焼き芋機の復旧によって、数年前から”焼き芋ブーム”が続いているのは周知の通りだ。ところが「ロド芋!」を食べたら最後、他のものは受けつけなくなる。筆者もコトあるごとにコンビニやスーパなどで色々買ってみたが、どれも「ん〜〜?」となるものばかりだった。『蜜』が、『蜜』がないのだ…

 「この商売を始める前のことになりますが、芋を美味しく食べてもらうために研究をしました。独学ですが、色々な種類の芋を仕入れて何度も何度も焼きました。その辺で売っているものと同じようなものを出していたら誰も来てくれませんよね。新聞紙にくるんで焼いてみたり、色々な温度で焼いてみたり。自分が甘党で焼き芋好きですから、すごく甘いものを作りたかったんです。そうしたら『蜜トロ』の焼き芋ができたんです。自分の技にプライドを持つことはいいことだと思います。また、自分以外の世界からの情報を取り入れることも必要だと思います。そうでないとプロではないと思います。絶対に他には負けなくないというのがありましたね!!」(井上昌さん)

 スポーツカーを3台に増やしたことによって、”待ち時間”もほぼ解消された。1台でやっていた頃は、お芋を買うのに4〜5時間待ちということも多かった。あるイベントでは、6時間待ちという”珍事”も起きた。筆者は、2時間以上待って買ったこともある。「焼き上がり」には、とことんこだわっているので、客が行列を作っていても中途半端なものを出すことはない。もちろん、3台体制になったことによって、売り上げが3倍になるほど商売というものは単純ではない。それでもビジネスとしては成功していると言えるだろう。この井上さんの営業センスは、人が真似できるようなものではない。お手伝いをやっているロド芋3号さんに話を聞いた。

「自分も最初は「ロド芋!」ファンのひとりでしたが、今では鬼いちゃん(井上さん)のお手伝いをやっています。それまでは、何度も横浜に通っていました。元々、お芋が好きなんです(笑)。で、あまりにも旨かったので、自分でも研究をしてみようと思って、最初に電気窯を買いました。1ヶ月で電気代1万円使いましたよ。その後に炭釜を買いました。お芋も箱買いして焼いていましたね。2台体制にするときには、かなりいい味を出せるようになっていた自負があります。認めてもらうことができましたので、時間のあるときにお手伝いをしています。もうひとりお手伝いさんがいますが、その女のコも常連さんでした。今は、色々なところに行くのが楽しいですし、お客さんと話をするのも大好きです」

 いつも井上さんを見ていて思うのは、「もくもくと働く人だなぁ」ということだ。暑くても寒くても、お芋を焼いている。雨が降っていても関係ない。真夏だって関係ない。どんなに忙しくても、お客さんが声をかけると笑顔で答えている。気さくな人柄も人気のひとつとなっている。リピーターは、このような姿を知っている。

◆根っからの車好き

 井上さんは、根っからのクルマ好きだ。最初は、ロードスターを使って飲み屋か焼きそば屋をやることを考えていたそうだが、許可の問題があってできなかった。でも、焼き芋屋なら「雑貨店」になることに気がついた。「飲食業」にはならないので、保健所の届出も車両の構造変更も必要なかった。「えるろこ」は、井上さんのあだ名で、スペイン語で「彼のアタマはいかれている」という意味だという。「スペイン語の響きが好きなんです。観光旅行で行っていたことがありました」(井上昌さん)と話す。

 最近は、出張販売も多くなった。クルマ関係のイベントに呼ばれて販売することもある。富士山の近くで行われるみんから(みんなのカーライフ)のオープンミーティングや筑波のスピードウェイにも呼ばれている。今回の江古田キャンパスも芸術祭の主催者側から声がかかった。

 真っ赤なスポーツカーは、どこに行っても目立つ。そして、焼き芋のいい匂いが風に乗って流れてくる。販売が始まると、「一目見てみよう。買ってみよう」という人たちが集まって来る。そして、オープンカーマニアなどのリピーターが続々とやって来る。小学生が親御さんとともに来ることもある。あるリピーターの男性は、「窯に入っている時間が長くなればなるほど、蜜が染み出してきます。これが美味しいんです。そのタイミングを狙って買います!」と話す。男性が指をさしたところを見ると、窯から黒い蜜の塊が染み出していた。糖度が高いことは、この部分を見れば明らかだ。

 みんなに幸せな気持ちを届けてくれる「えるろこロド芋!『鬼いちゃん』」の移動販売は、これからも続く。毎日、ツイッターアカウント「えるろこロド芋!『鬼いちゃん』」(@EL_Loco2018)で販売場所や時間などを告知している。「お、ロド芋!食べたいな」となったときは、チェックしてみよう。

(写真・文:酒井透)

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