家計を制限し、生活費を出し渋るモラ夫の経済的モラ行為が妻を追い詰める<モラ夫バスターな日々38>

家計を制限し、生活費を出し渋るモラ夫の経済的モラ行為が妻を追い詰める<モラ夫バスターな日々38>

<漫画/榎本まみ>

◆弁護士・大貫憲介の「モラ夫バスターな日々<38>

 離婚調停にて夫は、

「生活費は十分に渡していた。妻の借金なんて知らない」

と述べた。

 妻によると、同居生活中、渡された生活費は1日あたり1000円だった。家賃、水光熱費は、夫の口座からの引き落としだったが、それ以外の生活費は全て込み込みだ。

 他方、夫の年収は、1000万円を超えている。

◆妻に生活費を渡さず、家計を制限するモラ夫

 モラ夫は、妻に渡すカネを厳しく制限する。1日当たりの生活費×日数で月額を計算し、その金額を渡す事例が多い。私の実務経験上、日額は1000円が一番多く、1500円がそれに次ぐ。子どもができても、容易に増額を認めない。

 妻が足りないと訴えると、「できないはずはない」、「浪費している」と妻を非難する。お金の話をするとあからさまに不機嫌になったり、ガン無視したりして、妻をけん制する夫や、買ってきたものを点検し、「本当に必要なのか」「価格を比較検討したのか」と妻を責め立てる夫もいる。

 そのうちに、妻に家計を任せられないなどと言い出し、領収書やレシートと引き換えに現金を渡す方法に変えるモラ夫もいる。

 これが繰り返されると、妻は、夫が不機嫌にならないように、自ら生活費を補填するようになる。独身時代の預金の取り崩しや、実家からの援助などに頼る例が多い。

 子どもが保育園・幼稚園に通い出すと、近所のパートに出る妻もいる。しかし、モラ夫は手を緩めない。パート収入の分、渡す家計費を減額したりする。多くのモラ夫は、減額して浮いたお金を自分の趣味や遊びにつぎ込む。結局、働いても家計は楽にならない。

◆「お前が欲しくて産んだんだろ」と子どもへの出費も渋る

 そしてモラ夫は、屁理屈をこねて、妻の負担を増やしていく。例えば、「子どもはお前が欲しくて産んだんだから、子どもに関する出費はお前の負担だ」などと、まるで妻が一人で子を作ったかのようなことを言う。その結果、パートに出ることによって、却って家計が苦しくなったりする。

 ここまで来ていると、夫のモラは相当進んでいるはずだ。モラによる、妻のダメージも、心身を蝕む程、累積していることも多い。

 冒頭の妻は、夫からディスられ続け、うつ症状が進行し、働けなくなった。しかし、夫は、家計費を元には戻さない。妻はやむを得ず、消費者金融からお金を借り、家計の不足を補ってきた。うつ症状が進み、心も荒み、部屋が散らかり出した。

 その結果、夫のモラは更にひどくなり、とうとう「お前は役に立たない女だ」「出て行け」と怒鳴るようになった。

 妻は、死んでしまいたいと考えるようになり、心療内科を受診した。そして、医師から、別居、離婚を勧められた。

 離婚調停にて、消費者金融からの借金について、夫にも負担を求めたところ、夫は冒頭のとおり、「妻の借金は知らない」と述べ、「(妻の)浪費だ」と決めつけた。

◆モラ被害を受ければ受けるほど生じる、パラドックス

 夫が、家計費を厳しく制限し、日常的に妻を「指導」したり、不満や非難を繰り返していれば、彼は、押しも押されぬモラ夫である。しかし、少なくない数の被害妻は、夫がモラ夫であること、自らが被害妻であることを認めない。私は、モラ被害妻の相談の実務経験から、モラ被害にはパラドックスがあると思っている。

 すなわち、モラ被害を受け続けると却って、その被害を認めない傾向が生じるのである。

 整理すると、以下のようになる。

1、モラ被害が深刻なほど被害者は自責の念を強め、モラに気付き難い。

2、モラ被害が長いほど被害者の洗脳が進み、自らの心身の異常を軽視する。

3、モラによる精神破壊が進むほど被害者は、まだ頑張れると考える。

4、モラ度が高いほどモラ夫は、妻にはよくしてやってると主張する。

 もしも、あなたが、

@私にも悪いところがあるから夫が怒る

Aいつ夫に怒られるかビクビクしているが、心療内科へ行くほどではない

B子どものためにもまだまだこの結婚を維持し頑張れる

 などと考えているとしたら、モラ被害はすでに深刻で、あなたの心身にたまったダメージは相当なものである可能性が高い。

◆被害妻にありがちな「揺り戻し」

 モラ被害を放置すると、心身が壊れていき、さまざまな疾患にかかる。若年性更年期障害になったり、うつ症状がひどくなったりすることもある。

 そして、洗脳から一歩抜け出しても多くの場合、揺り戻しがある。次のような疑問が妻の心に浮かぶのである。

@おかしいのは私?

A(夫のモラについて)これくらい、普通のこと?

B私の我慢が足りない?

C(別居、離婚は)子どもを不幸にする?

D(夫の言動は)本当は、モラハラなんかではない?

E(夫の言うように)モラハラはむしろ私?

 以上のような「揺り戻し」は、むしろ被害妻の証拠である。被害妻はモラ夫によって自責の傾向を強められているので、洗脳から抜け出し始めても、油断すると、自責の念に囚われてしまうのである。

 長期間、自責の念を持ち続けると、心身を壊す危険がある。

 心身が壊れる前に、被害妻側に立つ専門家に相談したほうがよい。

<文/大貫憲介 漫画/榎本まみ>

【大貫憲介】

弁護士、東京第二弁護士会所属。92年、さつき法律事務所を設立。離婚、相続、ハーグ条約、入管/ビザ、外国人案件等などを主に扱う。著書に『入管実務マニュアル』(現代人文社)、『国際結婚マニュアルQ&A』(海風書房)、『アフガニスタンから来たモハメッド君のおはなし〜モハメッド君を助けよう〜』(つげ書房)。ツイッター(@SatsukiLaw)にてモラ夫の実態を公開中

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