「太陽光発電を付けたらエコ」ではない!?住宅にかけるコストの優先順位とは

「太陽光発電を付けたらエコ」ではない!?住宅にかけるコストの優先順位とは

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◆大規模化する災害に対応するには、まず住まいの断熱性能向上を

 気候変動の影響で、災害が大規模化しています。これからは、住まい選びの際にも気候変動対策や災害対応などをセットで考えることが当たり前になってくることでしょう。

 そこで太陽光発電や省エネ性能の高いエアコン、あるいは蓄電池の導入を検討している人がいるかもしれません。でもちょっと待ってください。気候変動や災害対策、そして省エネ性能の向上を重視するのなら、まず先にやるべきことがあります。

 それが、住まいの断熱性能の向上です。

◆日本の既存住宅の断熱性能は格段に低い

 一般的には、「エコな家」というと屋根に太陽光パネルが載っているイメージで描かれることが多いようです。もちろん、太陽光発電があれば晴れている日の昼間の電力を自給できたり、停電などの非常時にも役立ったりすることが証明されています。

 でもエコロジー(環境)とエコノミー(経済)の両面から考えると、太陽光パネルは「必須ではなく、ないよりはあったほうがいい」というレベルのものです。なぜでしょうか?

 日本の既存住宅の断熱性能(躯体性能)は、他の先進諸国に比べて格段に低いとされています。せっかく海外から高いコストをかけて運んできた燃料で冷房や暖房のエネルギーをつくっても、その多くが家から抜けてしまっている状態です。

 そのため、日本の既存住宅は「穴の空いたバケツ」とも喩えられます。断熱気密性能を上げることは、その穴をふさいでこぼれ落ちる水(エネルギー)をなくすことを意味しています。

◆毎年の光熱費がかさみ、体調を崩すといった悪循環

 バケツ(家)が穴だらけの状態であれば、いくら省エネ家電で冷房や暖房のエネルギーをそそいでも、穴から抜けてしまうだけです。また、太陽光発電でエネルギーをつくる量を増やす場合は、注ぐ水の量を増やすのと同じなので、穴から抜けてしまうことには変わりありません。

 最近では蓄電池も流行っていますが、これはバケツに水を注ぐための予備のコップを増やすことになります。いずれの場合も、まずは穴をふさがないと効果的ではないことがわかります。

 しかしこれまで住宅とエネルギーをめぐる話では、エアコンなどの設備や太陽光発電のことばかりが注目され、建物そのものの性能がおろそかにされてきました。そのため、既存住宅のおよそ4割は無断熱のままで、多くの人が夏の暑さや冬の寒さを我慢する暮らしをしています。

 さらに毎月の光熱費がかさみ、体調を崩すといった悪循環を招いてきました。建物そのものを見直し、家にお金をかける際の優先順位を変えることで、その流れを断ち切ることができるようになります。

◆住宅の設備の耐用年数は10年前後

 優先順位を考える際には、それぞれの耐用年数を知っておくことも大切です。家電にしても太陽光発電にしても、設備の寿命は長くはありません。

 エコキュートなどの給湯器は10年前後、エアコンも10年から15年、太陽光発電のパネルそのものは一般的には20年以上使用できますが、パワーコンディショナーの寿命は10年程度です。

 そして、リチウムイオン蓄電池は6年から10年程度です。ほとんどの家電や設備は、10年から15年ほどで交換する必要があることを覚えておきましょう。

 一方で、建物はしっかりつくれば60年〜70年は使用できます。壁や床、天井に入れた断熱材は、きちんと施工されていれば同じ期間使うことが可能です。

 注意点としては、断熱材を厚くするといった工事は、新しく家を建てたり大規模リフォームを行ったりする際に限られることです。そのため、新築時やリフォーム時では、後からいくらでも替えられる設備機器ではなく、断熱を重視することが大切です。

◆断熱されていれば、省エネ家電や太陽光発電の導入も効果的に

 すでに建ててしまって、しばらくリフォームの予定もないという人はどうすればよいでしょうか? もっとも手軽で効果のある断熱リフォームは、内窓の設置です。

 夏でも冬でも家のエネルギーは窓から抜ける割合が最も大きくなるため、窓対策をするだけで、バケツの穴はそれなりに埋めることができます。

 断熱材の強化や内窓の設置はすぐにでも対策すべきですが、設備は違います。技術開発は日進月歩で、どんどん性能の良い新製品が安い価格で購入できるようになっていきます。

 太陽光発電も、5〜6年前と今とではパネルの価格がおよそ半分になっています。こういったものは、後で必要になったりお金に余裕が出たりしたときに設置すればよいのです。

 家がきちんと断熱されていれば、省エネ家電や太陽光発電を導入した際の性能も十分に発揮され、相乗効果を得ることができます。一軒家のエアコンが1台や2台で済み、出力が低い機種でも性能を十分に発揮することができます。

◆災害などの非常時にも強い環境をつくる

 さらに家で必要とするエネルギーが少なくなることで、太陽光発電を付ければ太陽が照っている日の昼間の電力は自給できるようになります。

 逆に断熱性能が低いままだと、エアコンが各部屋に必要となり、交換の際にもコストが何倍もかかってしまいます。家の寿命の60年や70年といった期間で考えると、光熱費や設備更新費用の総額は、大きく変わってきます。

 そして、断熱しておくことは災害などの非常時にも強い環境をつくります。冷暖房機器の多くには電気が使われていますが、停電した場合は暑さや寒さで体調を崩す人が増加します。深刻な場合は、熱中症や低体温症で倒れたり亡くなったりするケースもあります。

 しかし、家の断熱や直射日光を防ぐ遮熱などの対策をきちんとしておけば、電気が止まったからといって家の中で倒れるような温度にはなりにくくなります。蓄電池を検討する前に、真夏や真冬に電気が止まったら命の危険があるような家の環境そのものを見直すことは非常に重要なのです。

◆お金をかける優先順位は?

 最後に、家とエネルギーの関係でお金をかける優先順位を整理して並べてみます。

@躯体(断熱、気密、換気、遮熱など)

A設備(エコキュート、エアコンなど)

B太陽光発電

C蓄電池(電気自動車)

 優先順位のトップになるのは、間違いなく建物本体の性能です。特に断熱気密性能は重視してください。それが十分できていたら、快適性や省エネにつながる家電などの設備を検討します。

 日々の暮らしには直接関わらない太陽光発電は、余裕があったら付けるという位置づけで構いません。もしさらにお金があり、非常時の電力自給をめざしたい場合は、蓄電池という選択肢もあります。

 蓄電池については、家一軒分をまかなうレベルのものはまだ150万〜200万円程度と高額なので、一般的な家庭であれば購入する必要はありません。特に、「いま買えばお得です」などと甘い言葉で営業してくる蓄電池の訪問販売などは悪質な場合も多いので気をつけましょう。

 大型の蓄電池は普段は使用せず、大規模な停電時のみに使用することが多く、コストパフォーマンスが良くないということに加えて、メンテナンスが滞りがちになり、発火などのリスクも起こる可能性もあります。

 筆者としては、いざというときの対策としては、3万〜5万円程度の小さな蓄電池があれば十分だと考えています。なお、車の買い替えに合わせて電気自動車という選択肢を検討するのは、非常時の蓄電池代わりにもなるのでお勧めです。

 いずれにせよ、くれぐれも家を建てたりリフォームをしたりする時に、太陽光発電やその他の設備を優先して、断熱にあまりお金をかけられなくなった、という事のないように気をつけてください。

◆ガマンしない省エネ 第17回

<文/高橋真樹>

【高橋真樹】

ノンフィクションライター、放送大学非常勤講師。環境・エネルギー問題など持続可能性をテーマに、国内外を精力的に取材。2017年より取材の過程で出会ったエコハウスに暮らし始める。自然エネルギーによるまちづくりを描いたドキュメンタリー映画『おだやかな革命』(渡辺智史監督・2018年公開)ではアドバイザーを務める。著書に『ご当地電力はじめました!』(岩波ジュニア新書)『ぼくの村は壁で囲まれた−パレスチナに生きる子どもたち』(現代書館)ほか多数。

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