真実はただ一つ。モラハラ夫と10年後、20年後も一緒にいたいか否かである<モラ夫バスターな日々39>

真実はただ一つ。モラハラ夫と10年後、20年後も一緒にいたいか否かである<モラ夫バスターな日々39>

マンガ・榎本まみ

◆弁護士・大貫憲介の「モラ夫バスターな日々」<39>

 「結婚前から違和感がありました」

 私の事務所に相談に来た50代の女性が言った。しかし、夫は基本的に優しい人だったので、違和感を無視して、結婚したという。ところが結婚後、夫は横暴になった。

 夫の食事は、出す順番が決まっていた。

 まず、みそ汁、次に副菜、そして主菜、最後にご飯。順番が違ったり、次に出すものが遅かったり、冷えていたりすると、夫は激怒した。

 女性は、夫が食べている間、テーブルの近くに待機し、夫の食事を見ながら、次の行動に待機するようになった。女性は約30年間、彼専属のウェイトレスだった。

◆「お父さんはモラ夫だよ」と、娘が言った

 そんなある日、大学生の娘が突然「お父さん、モラ夫だよね」と言った。女性は、初めて聞く言葉に意味がわからなかったが、娘の言うままに、いろいろと読んだ。そのどれにも「夫のこと」が書いてあり、驚きの連続だった。世の中には「モラ夫」と呼ばれる男性が多数おり、夫もその一人であるとわかった。

 「私の心の中の違和感に言葉が与えられ、まるで霧が晴れたかのようでした」と女性は言った。

◆まるで未就学男児=「俺をモラ夫と言うお前がモラ妻」

 一般に、モラ夫は、妻を従者として扱いながら、俺は「妻によくしてやっている」と自己評価する。

 妻が不満を述べ、夫のモラを指摘すると、「俺をモラ言うお前がモラ妻」がモラ夫定番の反論だ。すなわち、多くのモラ夫は、「バカって言うお前がバカ」と言い返す未就学男児のレベルなのだ。

 そして、少なくないモラ夫が、「よくしてやっているのに、妻が反抗するのは、男ができたに違いない」と本気で思い込んだりする。ある中年のモラ夫は、妻が別居を希望したことに不審を抱き、パート先の社長との不貞を疑い、職場に怒鳴り込んだ。

 妻が家を出て行っても、モラ夫たちは、自分を省みることはない。残されたモラ夫たちは、不貞を疑い、或いは、「実家や弁護士に唆された」「精神が不安定で自分のしていることがわかっていない」などと言い出す。

◆調停委員もモラ文化応援団だったりする

 そして、妻の代理人として連絡してきた弁護士に対して、

・妻が出て行く理由として思い当たることはない

・(自分が)妻と直接話せば、(円満に)解決する

・妻が離婚を希望していると思えない

・離婚言ってるなら頭がおかしいに違いない

 などと真顔で言ったりする。

 このように言い立てるモラ夫は、離婚に反対する。離婚に反対したと聞いて、多くの妻は、「えッ!!、『離婚するぞ! 出て行け!』って何度も怒鳴ったんですよ」と驚く。

 私が、「モラ夫の『離婚するぞ!』は単なる脅しで、本気ではありません」と言っても、妻の驚きは収まらない。ある妻は、「『お前には一円もやらない』も脅しですか?」と訊いた。私が「いや、それは本気ですね」と言うと、さらに納得できない顔をした。

◆モラ夫と同じ墓に入りたくなければ行動すべし

 冒頭の女性のケースは、その後、離婚調停になった。

 調停でモラ夫は、「離婚の理由は、全く思い当たらない」と言い張った。妻は、「(離婚理由は、夫の)モラハラです」と説明したが、調停委員は全く納得しない。委員は原則、年配者であり、また、ある程度社会的な地位にあった者が多いので、保守的であり、モラ文化側にいる(つまり、モラ委員)ことが多いのだ。

 そして委員は、妻に対して「離婚理由を書面にまとめてくるように」と指示した。

 因みにこのパターンでは、書面を作成、提出しても、モラ夫の嘘満載の反論書面を引き出すだけで、労力に見合った進展は望めない。

 多くの事例では、婚姻費用の話合いを先行させ、月々払わせるのが一番効果的だ。モラ夫の殆どはとてもケチなので、婚姻費用を支払わせると早期にギブアップして、離婚に応じる可能性が高まる。

 万一、離婚調停が不成立でも、離婚裁判に進めば、いずれ離婚が成立する。つまり、離婚の成立は時間の問題である。

 それでも、モラ夫との離婚に踏み出すか迷っている方も少なくない。そんなとき、私がよくする質問がある。

・10年後、20年後も彼と一緒で幸せですか。

・同じお墓に入って、永遠に彼の妻でい続けたいと思いますか。

 もしも、いずれかの問いへの答えに戸惑いがあれば、一度、離婚を真剣に検討したほうが良い。

<文/大貫憲介 漫画/榎本まみ>

【大貫憲介】

弁護士、東京第二弁護士会所属。92年、さつき法律事務所を設立。離婚、相続、ハーグ条約、入管/ビザ、外国人案件等などを主に扱う。著書に『入管実務マニュアル』(現代人文社)、『国際結婚マニュアルQ&A』(海風書房)、『アフガニスタンから来たモハメッド君のおはなし〜モハメッド君を助けよう〜』(つげ書房)。ツイッター(@SatsukiLaw)にてモラ夫の実態を公開中

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